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惹けぬ弱者の世迷言  作者: 殴始末
諸日編
1/31

プロローグ

深く深く、落ち沈み染まりゆくその感情。

人はそれを、"絶望"と呼ぶ。


期待を煽り、進歩を促す一筋の光。

人はこれを、"希望"と呼ぶ。


まだ見ぬ世界との邂逅。

人はこれを、"救済"、また"執着"と呼ぶ。


解を求め彷徨う時間。

人はこれを、"生"と呼ぶ。


記憶と身体の喪失。

全生命からの忘却。

人の"生"はその二つを以て、完全な"死"と成る。


よってここを、"死"した彼の、終着点とする。


そしてここが、"救済"されず"執着"し続ける彼の、出立点である。


しかし。


これから刻まれる彼の時間だけでは、何かが変わることは決してない。


______________



(私は目覚めた、次はお前の番だ。)


頭上から声がひびく。

聞きおぼえのない声だ。

少し鼻につくような、ふゆかいな感じ。


「目覚めるって?」


おそろしく端的な発言。

その真意をさぐるべく問いかける。


(そのままさ。眠れる自分を呼び起こすんだ。)


よくわからない。あ、そうか。


(……………………………いや………うん。そうだな。言い方が悪かった。すまない。)


倒れたからだをムクリと起こす僕をみて、彼はあわれむような、悲しむような声を送ってくる。


「じゃあもうわからないよ。」


彼のいいたいことがわからず足をなげ出す。

しかしなぜだろう。変に体がかるい。

投げ出したあしがそのまま飛んでいってしまいそうなくらいに。

それに頭がぽやぽやする。

まさに、夢のなかのように。


(…そうか。まぁ近いうちにわかるだろう。)


「近いうちっていつ?」


(近いうちは近いうちだよ。明日か、明後日か、はたまた一ヶ月後か一年後か。未来は見えないからないが、それくらいだろうさ。)


口ぶりから見るに、彼にとっての一年とはみじかいものなのだろう。

それなりに歳をとっているのだろうか?

ふと気づく。

まだ彼のかおを、見ていないことに。

顔を上げ、むかいにたつ彼に目線を向ける。

脚からじゅんに、腰、胴、首、口、鼻、目、髪と視野にはいっていく。

真っさおな顔に、くろいかみ。

それは、どこか懐かしさを、かんじさせる姿で。

そこで、彼の顔に、おどろいた表情がうかぶ。


(お前まさか、覚えていないのか…?)


おそるおそるといった様子できく、彼の青白いかおは、どんどん朱く、そまっていく。

あたまの中が、どんどんぬけてゆくような、浮遊感を、こらえて、ことばを、ひねりだす。


「なにを?」


まさに、望んでいた、かいとうそのもの、だったのだろう。

僕のことばを、きいた彼のかおには、光が、さす。

あぁ、でも、もう、だめだ。

しこうが、


(いいかよく聞け。)


まとまらなく


(お前は__________________

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