60:第1回公式イベント-10
30分経ったからスタート…………と思ったけど、その前に30分間の鬼無しの時間があるんだった。
それなら開始の前に、もう一度情報とルールを確認しておこう。
私が行くのは第2エリアと名前のついた場所。シグレさんが第1エリアかな?
鬼が15体、私含めて16。プレイヤーが4911人でほぼ1エリアの最大人数の5000人。制限時間は3時間、頑張って動き続けるようにしないと。
エリアに関して、地図を見て気が付いた。ここ、某夢の国だ、行ったことは無いけどテレビとかで見た事ある。因みにアトラクションは動いてないらしい。それで、私の開始場所は中央の城の前ね。
――遂に時間だ。さて、殺して殺して殺しまくりましょう。
――特殊イベントが発生しました。新たな種類の鬼が出現しました。タブレットから詳細を確認出来ます――
よし、来たね。
見たところ人はいない。鬼の開始場所になってたけど待機してたわけじゃなかったし、鬼の姿が見えなかったからか、警戒されていたらしい。
まずはステータスを再確認……
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※イベントのためステータスが一部変更されています。
ライブラ Lv.80
HP:300000/300000 MP:∞/∞
耐性
火:99 水:99 氷:99 雷:99 風:99 地:99 光:99 闇:99 物理:99
スキル
《インベントリ(※武器のみ使用可)》
《狂風》《自由飛翔》《治癒・弱》《見切り》《狂化》《恐怖の瞳》《二刀流》《心の目》《冥界の掟》《無形の瘴霧》《死の波紋》《沸騰する狂気》
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うわぁ、チート…………
うん、色々変わってる。ステータスと耐性は説明の通り。名前バレは……今の私鑑定してもLv95以上じゃないと見られないから大丈夫か。
スキルは《鑑定》が使えなくなって《インベントリ》が条件付きになってる…………まあそこは問題無いかな。
とりあえず、《無形の瘴霧》のテストからしよう。
霧状態に変化する。体感では私が私の形をした別の物になっているような感覚がする。
まずは形の変化から。
丸まってみたり、板状に薄くなったり、不定形になったり、様々な形で試してみる。
体積はそのままなら自由に動かせてデメリットは無い。大きくしようとすると、感覚が薄くなるとともにHPが減ったのが確認できた。人の時より小さくはなれないらしい。圧縮されたらどうなるのかな?
それと、薄く広がることは出来ても切り離すことは出来ないらしい。
視界は形を人型から遠ざけるほど認識が曖昧になるのね。モノクロのサーモグラフィーを見ているような感じになる。
次に移動ね。
霧状態のまま移動してみる。《自由飛翔》は使っていないはずだけれど浮いている感覚がある。最高地点が私の身長の高さなら必要ないらしい。
速度は私が普通に出せる最高速度と同じくらいだった。試しに《狂風》を使うと移動速度を上げられた。ここも通常の私準拠なのね。
とりあえずこのまま移動する。人を見つけないとどうにもならないし、移動あるのみ。
見つけた。
周りには警戒してるようだけど、こんな広いところにいたら目立ってすぐバレるでしょうに。
攻撃は霧状態では出来ないらしい。相手から攻撃はされないのに自分だけ攻撃出来るのは流石に卑怯が過ぎるし当然と言えば当然だけど。
元に戻ろう……
不定形になった感覚が一瞬で元の形に戻る感覚が来る。そして、姿が現われ……
「うわっ!」
首を狙って切る。血を流して倒れた後、すぐに死体は消えた。
うん、問題ない。
それじゃあ、ここからが本番だ。プレイヤー達全員殺すくらいのつもりで行こう。
「はぁっ!? 」
「ちょっ、何だそれ!」
「見えなくなんの反則だろ!」
私は今とあるアトラクションの建物内部にいる。扉が閉まっていたので閉鎖エリアかと思ったけど、《心の目》を使ったら人がいることに気付いた。それも全体で10人や20人では無く3桁に届くほどに。
というか、アトラクション本編じゃなくて待機スペースまでなら入れたんだね。
中に入る時、1mmくらいの隙間が扉にあった。そこで霧状態で入れないか試したら、普通に入れてしまったのは驚いた。まさか霧状態の軟体性がこれほどだったとは。
今は入口付近の人たちを殺している最中、スキルは《狂風》だけで全員余裕で相手出来ている。
そうだ、新しいスキルも試しておこう。《死の波紋》!
私は人の密度が高そうな方に駆け、双剣を適当な1人の首に振り切った。
――ザシュン!!!!
すると、赤黒い何かがその人から発生し……
――パァン!!
――パァン!!
――パァン!!
周囲の人達から血が吹き出し始めた。そして、波紋のように出血は1人に複数回命中するため出血多量で死亡して行く。
「何これ…………」
「え、地獄…………?」
私は一息つかせる間もなく人が逃げている奥の方に向かう。出入口の方は私が向かう人を積極的に殺したから、諦めて奥の方に逃げていた。
「あはっ、逃げられると思って?」
逃げ惑い怯える人達を殺すのは本当に愉しい。これだけでこの役目を引き受けて良かったと思える。
奥の通路を進み、少し広い空間に出る。途中に分岐があったので、《心の目》を使って人の多い方に来た。残りは今はしょうがない、ここが終わった後に殺しに行ってやりましょう。
「どうする?」
「やべぇな……」
どうやらここで行き止まりになっているらしい。扉の先がアトラクション本編のエリアなんでしょうね。
それならここで《沸騰する狂気》、1回試させて貰いましょうか。
《沸騰する狂気》を発動すると、私の中で何かが現れた感覚があった。
これで範囲を広げると…………って、え?
範囲を決めようと意識をすると、外が透明な中が薄く黒い霧に覆われたドームのようなものが広がっていく。恐らくこれがスキルの効果を及ぼす範囲なのだろう。
「な…………何?」
「え、何も」
「今のうちに逃げるぞ!」
そんなことを話していたが、その間にドームを部屋全体にまで広げる。そして、スキルの効果を発動させると…………
「…………ぇ」
「がっ………………」
発動と共に霧が消えると、中にいる全員の動きが止まる。そして一瞬の静寂の後…………
「「「「あ゛あ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁ!!!!」」」」
絶叫が轟き、部屋の中は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
ある者は頭を抱えのたうち回り、ある者は効きもしない魔法を私に放ち、ある者は部屋内をあちらこちらへと走り出す。
「あははははっ!!」
ああ…………なんて滑稽で面白い光景なんだろうか。見ていて笑いが止まらなくなる。
この愉悦に浸っていたい所ではあるけど、私がすべきなのは殺すこと。さあ、もう一度《死の波紋》を……
私は再び1人の首を切り、部屋にいた半数近くを死亡させる。そして、《狂風》と《自由飛翔》を使い、狂気に呑まれたままのプレイヤー達の殺戮を進める。
――――ザシュン!!
――――ビシャッ!
首を切り裂き、血が飛び散る。殺し続けるほど、私の精神は昂っていく。
「うふふっ……あははっ、あははははははっ!! あぁ、楽しいぃ…………」
こんな楽しい時間がずっと続けば良いのに…………でももうここはこれで最後だ。
「ああぁぁぁぁあっ!」
――ザシュン!!
錯乱したのか私に剣を持って突っ走って来たので、受けることもなく切り伏せる。
「ふぅっ」
まだ他の所に居ないかな? 分岐の行かなかった方に残ってくれてるといいんだけど。




