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54:第1回公式イベント-7

 うん、静かだ。

 考えれば当たり前だ、別に営業してる訳ではないんだから。スロットマシンらしきものが大量にあるけど動いてないし。

 そもそも実際カジノは騒がしいのか静かなのか知らないんだけどね。騒がしいのはパチンコ屋からのイメージなだけで。


 入ってみると右側には動いていないスロットマシンが大量に並べられており、左側にはカードを使う何かしらのための台がある。

 天井は約3m、戦うのに狭いという程ではない。



 ところで人は…………うん、いる。チラッとスロット台に隠れたのは見えた。

 確かにスロット台は数台毎に列を成していて、敵を撒くのに使えそうだ。ここで隠れて、鬼が来たらその都度動いていたんだろう。


 一旦状況をタブレットで確認する。


残り時間:52分

客室フロア:残り82人、鬼4体、ボタン残り9個

その他エリア:残り796人、鬼4体


 うん、特に異常無し。

 それにしても客室フロア、ボタン1個しか見つかってないのね。ボタンの倍率9倍だし、中々殺伐とした雰囲気になっていそうだ。




「お、おいあいつって」


「屋外プールの……」



 何か言われてる。ここ静かだし聞こえてるよ?まぁスルーでいいか。



 私は入った扉からみて右奥のスロット台の列の間にいた。

 どうやらこのカジノ、出入口が2つあるようで私が入った扉から真っ直ぐ進んだところにもう1つ扉があった。


 さっきの人達の動向も見させて貰いながら待っていようか――――






「右から来たぞ」

「おう」


 残り時間30分になった頃、見ていた2人に突然動きがあった。どうやら入ってきたのが鬼だったらしい。


 鬼に気付かれないように移動する。このカジノ内には絨毯が敷き詰められていて、足音はそれほど気にする必要が無い。対して鬼の方は鎧の動く音が聞こえるので、位置が把握しやすい。


 これは《密殺術》を使うまでもないかな……




「「うぉっ!」」

「ちょっ!?」


 逃げている間、角を曲がろうとした所でさっきの2人と鉢合わせた。


 というか、2人につられて私も声出してしまった。こんな静かな上鬼の傍で声なんて出したら……



 ――ガシャン!



 だよね! やっぱりこっち来た!


「やっべ!」

「逃げるぞ!」


 私は《密殺術》を使って、2人より鬼から離れる。距離が近い方を先に狙うでしょうし。


 姿は消えているけど扉を開けたら位置がバレるので、カジノの外には出られないでいる。

 2人もどうやら上手く撒いたらしいけど、鬼が扉を気にしているようで同じく出られないようだ。


 視界に入らないように離れた位置にいるけど、すぐ《密殺術》の効果は切れる。

 さて、どうしようか。残り30分弱をこの空間で逃げ切るのは現実的では無いし、何かして状況を…………



 …………どうだろう。これ、殺れるかな。相手の視線を切りやすい入り組んだ場所だし、失敗したらすぐ隠れられる。囮に出来る人もいる。

 一考の余地ありじゃない? スキル全開放して即死を狙えれば殺すこと自体は不可能では無いでしょうし。


 よし、《密殺術》のCTが終わったら仕掛けてみようか。



 ふぅ…………


 私は一度呼吸を整えて、相手の位置を確認する。

 スロット台のエリアから一度出た後、もう一度戻って私達を探している。


 眼帯を外して……よし、行こう。《狂風》《静音・強》《密殺術》《命刈り》!


 スキルを使い、鎧武者に向かって即座に駆け出す。双剣を構え、後ろから首に狙いを定める。

 鎧があるから、狙うのは兜と鎧の隙間。そこを切れば中身にダメージを与えられる可能性はある。


 首に向けて《閃撃》を使い一閃を放ち…………



 ――ヒュン!


 空振った。

 避けられた、それは予想通り。こっちのことは認識出来てるかな?


 鎧武者は刀を構えると、刀身に黒いオーラを纏う。そして、私に向けて黒い刃を飛ばして来た。


 これ私の位置分かってるね。この動きは…………って! 《見切り》《自由飛翔》!



 明らかに攻撃が見切れない上普通には避けられないと感じ、スキルを使って飛びながら回避する。そして、一度引いて視線を切る。

 姿が見えない状態は見れても、物理的に遮られていれば見られはしないでしょう。


 撒けたようなので、この隙にCTの消化とMPの回復をする。回復薬自体には余裕があるけど、戦闘中には使う余裕なんて無いし、何度も見逃してくれる相手でも無い。



 待ち時間の間に一度考える。

 姿を消しても認識されていたから、《密殺術》は意味が無い。攻撃自体は《見切り》で回避して通させていない。だけどこちらの攻撃も通せていない。今の状態では倒せないか。

 《狂化》の使用を考えてもいいかもしれない。


 狂化したら逃げるという選択をしなくなるという心配はあるが、一度手を出した相手に背を向けて逃げるのはやはり気に食わない。

 それに、あいつは攻撃力と攻撃速度は高いけど、機動力や攻撃範囲などは並だ。状況も相性も私の有利状況に傾いている。


 なら、《狂化》使ってでも倒しに行ってやろうじゃない。


 《狂風》《命刈り》を使った後、《狂化》を使う――





 ――意識が希薄になり、高揚感が異常に増す。それでも体の主導権を失うことも無い。《狂化》の扱いにも慣れてきたのかもしれない。



「ふふっ……」

 私は鎧武者に向けて《自由飛翔》で一直線に飛んで切りかかる。


 ――ヒュン!


 また空振り、でも今回は引かないで相手をする。


 鎧武者は黒い刃を飛ばしながら刀で切りかかってくるが、《見切り》を使い全て回避する。

 そうして、私と鎧武者の一騎打ちが始まった――





「あははははははっ!」


 ……愉しい、ここまで興奮する戦いは初めてだ。一瞬でも気を抜くと殺される、一瞬の隙を見つけて殺しにかかる。この緊張感のお陰でこれまでに無く気が昂る。


 あまりの愉しさについ笑みが滲み出てしまう。


「うふふふふ、愉しい……」




 そして、互いに一度も攻撃を受けていないという均衡状態が破られる時が来た。



 ――《命刈り》!




 ――ザシュン!!!


 鎧武者の攻撃を掻い潜り続け、ようやく首に深い一太刀を入れた。



 ――――ガシャン!


 鎧武者が床に倒れ伏し、消失した。どうやら勝てたようだ。


「あはっ」


 消失を確認したと同時に《狂化》を解除した。


 ――バキッ、ボキッ…………



「っあ゛あ゛あ゛ぁっ…………!」


 頭を捻っているような痛みが私を襲った。どうやら少々《狂化》を使い過ぎてしまったらしい。



――特殊勝利条件を達成しました。特殊エリアに転移します――


――断魂の鎧武者を倒しました――

――Lv23に…………



 何、頭痛のせいで…………アナウンス聞きとれ……ない…………



 そうして頭痛の中、見知らぬ空間に転移した。

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