47:交流と戦闘訓練
交流マップに来た私は一度辺りを見回した。
遊園地っぽいね。見たところアトラクションは動かなさそうだけど。観覧車とジェットコースターは少なくとも動いてない。
それに人が多い。あちこちで話をしたり、集まったりする人がいる。因みにこのマップは基本セーフティエリアになっている。
それにしても、皆格好が普通だ。初期装備らしい洋服の人が多く、革や金属の防具をつけている人も1部には居るが、基本は所謂普段着だ。魔道具では無くともドレスらしい服を着る人はいると思ったんだけど。
まぁ目立つのは眼帯のせいなのもあるよね。
周りの人達は……大分私を見てるけど、話しかけては来ないんだね。私を見ながら、グループ内で話してる感じだ。まぁこんなのに話しかけたら自分も目立つっていうのもあるか。
一度タブレットで地図を確認する。観戦用エリア、戦闘用エリア、交流用エリア、この3つのエリアで構成されている。
交流するつもりは無いし、観戦用エリアを見た後は戦闘用エリアにでも行こうかな。
観戦用エリアに来てみた。
人は疎らだね。イベント前だから観戦するものも無いし。見た感じ椅子とモニターになるウィンドウが大量にある。
観客席は、競馬場のものをそのまま持って来たような感じの、横に非常に長くなっているものだった。これなら複数の映像を前に映しても大丈夫という訳か。
まぁ、これ以上は用も無いし次に行こう。
今度は戦闘用エリアに来た。
スタジアムって感じだ。周りに観客席が幾らかあって、真ん中にフィールドが12分割されている。透明な壁で仕切られているらしい。
手の内を晒すメリットは無いし、少々観察だけさせてもらおう。
しばらく見ていたが、結構色んなことをしているらしい。
普通に1対1のタイマンの勝負をする人もいれば、鬼の動きを予想しているのか1対多での戦闘訓練をする人達もいる。
って、あれはザラとリル!
集団の戦闘訓練をしている中にザラとリルを見つけた。こんな所で見かけるとは。
そうだ、リルさんがいるんだから、スカーフでも返しに行こう。
話しかけようと近くに行ってみたが……
「どうやって入るのこれ」
観客席から降りたはいいが、透明な壁に阻まれて入れない。そういえば音もほとんど聞こえてない。
どうしたものか……
「ってあれ? ライブラさん! お久しぶりです」
出てきてくれた。
「お久しぶりですリルさん。たまたま見かけましたので」
「そうだったんですか。ところで、大分印象変わりましたね……」
「そうですね、色々ありまして。それで、このスカーフお返しします。助かりました、ありがとうございました 」
「あ、そうでしたね。助かったのなら良かったです」
よし、これで目的は達成出来た。
「ところで、皆さんは何を?」
「えっとですね、ここで知り合った数グループでイベントの対策ですね。鬼の動きを想定してどう逃げるかとか考えてます」
「そうでしたか。進捗は順調なんですか?」
「それがそうでも無くてですね……」
まぁ情報が見た目とスキル4つとステータスだけだとね。
「おーいリルー、何やって……ってライブラさん?!」
「ザラさん、お久しぶりです」
「おう、久しぶり。リル、やっぱタイマン戦闘訓練することになったわ」
「そう、知ってる。予想通りだし。あ、ライブラさん良ければ入りませんか?」
「そうだな、ライブラさんが良ければだけどどうだ?」
手の内を晒すつもりはなかったけど、この2人の戦闘風景も見れるならやってみようか。
「そうですね、お願いします」
「それじゃあ、追加登録に行きましょう」
「追加登録ですか?」
「はい、ここのエリアのシステムは少し特殊でして……」
リルさんによると、ここのエリアは登録した人しか入れず、死亡時はHP全回復、MP消費無しで復活するという。訓練にうってつけの設定だ。
――登録出来たのでエリアの中に入る。
「うわっ、凄い格好……」
「羨ましい……」
「中二?」
どうやらザラさんが私が加わることを話したようだが、それでも言われることは言われる。
「初めまして、ライブラといいます。中二病ではありませんので、決して誤解なさらないようお願い致します」
「いや説得力……」
「眼帯とかどう見ても……」
酷い言いようだ。
「とりあえず、誰からやりましょうか」
「俺いい?」
「じゃあ僕も」
「私は見てたい」
「同じく」
「ライブラさんは私とどうです?」
「はい、ではお願いします。リルさん」
初戦はリルさんが相手してくれるらしい。このエリアは1対1を2組出来るくらいの広さがあるので、隣にも人がいる。
「開始の合図で始めろよー! それじゃあ……開始!」
私は開始の合図と共に双剣を構え、リルさんに向かって駆け出す。
「へっ!?」
火の槍を放って来るが問題なく見切り、足を払い、体と腕を抑え、剣を首に添える。
「私の勝ちですね?」
「は、はい……」
降参宣言がされたので私の勝ちとなった。それじゃあ次は…………
「マジか……」
「一瞬か。強いな」
「見た目に反してバリバリの物理派かよ……」
「ありがとうございました。次はどうしましょうか?」
他の人達に聞いてみたが……
「俺はあのスピードで来られたらどうしようもないんで。お前どうだ?」
「いや、僕も勝てないかもしれないですね」
えぇ…………そこまで?
「えっと、そうですかね?」
「ライブラさん! 物理で戦うなんて知らなかったよ。てっきり魔法主体なのかと」
「それにしてもあっという間でしたよね。一体どんなスキルを使ってればあんな……」
「え? スキルは何も使ってませんよ?」
「「は?」」
「……マジか、あれ素の技術か」
「なら尚更無理だわ」
「あの、Lv幾つか見てもいいですか……?」
「見てみるのは構いませんが……」
「では失礼して……ってえ?」
「えっなにこれ」
「そうなりますよね、因みに22なので」
「え、ライブラさんそんな高かったのか……」
「βプレイヤーじゃないって前、話してましたよね……?」
「いやそもそもLv見れないって何ですか」
「「え?」」
やばい、多分私のせいで皆混乱し始めた。
「とりあえず、私のことに関してはこれ以上話すつもりはありませんので」
「あ、あぁ、だよな」
「何も分からないことは分かった」
何か空気がグダグダになってきた。もう帰ってもいいかな?
「えっと、他になければ行ってもいいでしょうか……」
「あ、そうですね。ライブラさんも用事ありますよね」
「そうか、またなライブラさん!」
「はい、リルさんザラさん。また会いましょう」
「はい! イベント頑張りましょうね!」
――ふぅ。ザラさんリルさんはさておき、中々騒がしい人達だった。とりあえず交流エリアに行ったらそのままログアウトしようか。




