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42:不可侵領域の正体

「えっ、これは本体じゃない!?」

「はい、恐らく本体は下にいて、建物の一部の中にも居ます。これはその一部が外に飛び出したという所でしょう」

「下ってことは……地下にいるの?」

「確実とは言えませんが、可能性はあると思います」


 2つ分かることがある。1つ、下にいるこの本体は間違いなく今の私達では倒せない。一部だけでもどうしようもないのに、本体なんてもっとどうしようもないだろう。2つ、そして本体がそこまで巨大な存在であれば、こいつもまた倒せないだろう。


「恐らく、こいつも本体もどうしようもない相手ですね。コスモスはどちらがいいと思います?本体を探しに行くか、ここでこれからは手を引くか」

「私は…………ライブラに着いてくよ。どうするかはライブラが決めて?」

「良いんですか? 正直見てみたいですけど、確実に無駄足ですし、逃げられずにやられる可能性も……」

「大丈夫! 一緒に行くよ!」

「そうですか、分かりました」

「それにね……」

「それに?」




「ライブラ1人だとまた道に迷いそうで……」


 あっ…………それは、否定出来ない…………


 苦笑いされながら言われてしまった。




「そうですね、お願いします……」

「うん! それじゃ、行こっか!」

「はい。無駄死にはしないように、いつでも逃げられるようにはしましょう」




 ――秋川さんの案内で地下への入口まで辿り着いた。


「ここから地下だけど、どう? 何か見えた?」

「そうですね……壁と床にちらほら生命反応が見えるので、何かいるのは間違いなさそうです」


 《心の目》については、簡単に効果を話しておいた。因みに壁や床の生命反応を《鑑定》しても、何も反応がなかった。何かしらは出てもいいと思うんだけど。


「行きましょうか」

「うん、行こう……」


 私達は恐る恐る地下に入り、通路を進んでいく。


「ところで、既に地下に行った人くらいはいるのでは?」

「いたけど、何も無かったし、すぐ行き止まりだったって」


 見たところただの通路だ。ずっと全く変化が無い。入った時に《心の目》で見たけれど、外と同様チラホラと見えただけだった。


「何もないですね……」

「何もないね……」


 そう、何も無い。ただの通路が続いている。扉の類も何も無い。


「おかしくないですか?」

「おかしいね、扉も無いなんて。それに妙に長い……」


 何度か曲がってはいたが、今まで完全に一本道で扉も何も無かった。


 え? この長さの何も無い通路なんて明らかに……


「コスモス! 後ろどうなってる?!」

「えっ、後ろ?」


 確認しようと1つ手前の曲がり角まで戻ってみたところ…………


「道が塞がってる……」


 どうしよう、完全にやらかした。《心の目》は……あぁ、一面に生命反応がある……


「ごめんなさい……私の責任です。もう少し早く確認すべきでした。完全に閉じ込められました」

「っ……! 大丈夫、ライブラのせいじゃないから!私も早くおかしいと思っていれば……」


 こうなった以上、先に進むしかない。


「私の後ろの方にいて下さい。少しはその方が安全です」

「う、うん。分かった」


 明らかに誘い込まれている。奥で一体何をしようって言うんだ……



 暫く進むと一辺100m程の立方体で全面が白色の広い空間に出た。通路は立方体の最上部のすぐ近くの高さに穴を開けていた。

 中は通路と比べてかなり明るくなっており、中が見通すことが出来る。


 真ん中に何か……あれは、ベージュ色の球体?


「あれ何かな……浮いてるけど」

「多分あれがあの通路を作った張本人で、あのマネキンの本体なのでしょうね。ちょっと何か見てみます」


 そう言って、球体に向かって《鑑定》を使う。



□□□□□

六天-jowjpmbcmf bsfbt wborvjtifs Lv.????

HP:????/???? MP:????/????

□□□□□


 そして、この結果を認識したと同時に、私はとてつもない恐怖感に襲われた。

 立っていることすら難しくなり、床にへたりこむ。


「ひぃぁあああああああああああ!!!!」

「ライブラ!? どうしたの!」



 あれに呑まれた人々の怨嗟が頭の中で鳴り響く。


 あれに喰われた時の人々の感覚が体中に広がる。


 あれに殺される死の恐怖が心を蝕む。


「あ……あ、れは……見てはだ、駄目…………」

「えっ? だ、大丈夫? しっかり!」

「い、いや…………たす、けて……死にたく…………」


 私たちは突然何かに引っ張られた。

「大丈夫だから! しっか……きゃぁっ!」

「ぁっ…………!」


 秋川さんは通路側、私は立方体側に引っ張られた。壁にあった穴は塞がり、姿は見えなくなった。



 このまま死ぬのだろうか……死んだらこの恐怖からは逃れられるのだから、死んでしまえば…………






 そんなことするくらいなら……《狂化》!





 死ぬ? 冗談じゃない。普段恐怖を使っておいて、自分が恐怖させられる時になったら諦める? そんなの癪だ。戦いようがない? それなら少しでも長く抗えばいい。



「あははっ……! あはははははははははっ!」


 今私は壁に向かって落ちている。それなら少しでも落下の衝撃を和らげればいい。壁に少しでもナイフを引っ掛けて速度を落とす、《跳躍・強》で落下の衝撃の耐性を上げる、空気抵抗を受けやすい体勢になり、さらに速度を落とす。




 ――バキンッ!!


 着地時、骨が折れたが《治癒・弱》で対処出来る。無事着地出来たらしい。


 ライオンの時に手に入れた不要なナイフは捨て、無彩の双刃剣を両手に持つ。



「さぁ、六天。どうするの?」

「――――――!!」


 何を言っているのかは全く聞き取れない。


 戦闘開始かな? まぁ、抗ってみようか。

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