2:キャラクターメイク
買ってしまった……
あんなに悩んでたというのになんで買ったのか。というのも、その話をした次の日――
「調べてみたけどよく分からなかった? あー、最近出来たところだからね。でも技術は大丈夫だよ! 自衛隊の軍用シミュレーション技術と衛星写真とAIを合わせて作られたらしいから!」と言われて乗せられてしまった。
どうにも彼女、秋川莉桜さんには甘くなってしまう。他の人は当たり障りの無い程度しか話しかけないのに、彼女は割とグイグイ来る。だけど不快にはならない。
人付き合いが上手い人というのは、彼女のような人のことを言うんじゃないかな。
ひとまずせっかく買ったんだし、今日からサービス開始なんだから、VRセットの確認でもしてみましょうか。
……これだけ? 全部で1kgも無いけど。
どうやらセットは、頭に巻くバンドのようなものと、大きめのアイマスクに、イヤーマフ。後はブレスレットとアンクレット2つずつ。これだけらしい。
毎回全身に器具を身に付けて……とか、面倒なことをする必要はなさそうで良かったけど。
初期設定は出来たから、後は電源を入れればいいらしいけど……何と言うかすごい熱心にやっていた気がする。いつもならとっくに興味が薄れていた頃だと思うのに。だいぶ楽しみなのかな?
とりあえず始めてみよう――
一面真っ黒な中に、緑のオーロラの様なものが浮かぶ異空間らしき所にいた。体は違和感なく動かせるけど移動が出来ない。
「『FreedomImaginaryWorld』『FIW』へようこそ。まずは利用規約と注意事項をご確認ください」
ウィンドウらしきものに『利用規約』『注意事項』と書かれたボタンが表示された。
この2つは公式サイトで既に読んだから、適当に読み飛ばしてしまおう。
脳波を認識して心を読むだとか、現実の身体に悪影響を及ぼさないように、継続ログインに制限があるだとか。確かそんなことが色々書いてあった。
「まずはキャラクターメイクとなります。タッチ操作またはボイス操作で行えます」
まずは名前ね、これは決めてある。苗字と誕生日星座から取った……
「ライブラで」
次に進むと、私の前に50cm程の人型の立体映像が現れた。こちらに後頭部側が向いていたので、顔の正面を確認した所で気がついた。
これ私だよね。突然人の3Dモデルを出せるって、一体いつの間にスキャンされてたの?
そこは気にしないでおこう。それよりもキャラメイクなんだから、何を変えられるか位は確認しよう。
変えられるのは、髪型、髪色に瞳の色で、顔の形は変えられないのね。体型は、身長と体重に……あ、胸の大きさも変えられる。
体型は変えずにそのままでいいかな。変えたら現実に影響出るかもしれないし。161cmなら戦う時も大丈夫でしょう。胸も……まあ、あるし。
髪の長さは肩辺りにして、色は銀。目の色は赤、オッドアイには……出来ないのね。ともかくこれで良し、と。
「続いてはステータス設定となります。各項目についてチュートリアルを確認出来ます」
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ライブラ Lv.1
HP:1000/1000 MP:200/200
耐性
火:0 水:0 氷:0 雷:0 風:0 地:0 光:0 闇:0 物理:0
スキル
《鑑定》《インベントリ》《チュートリアル》
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おお、RPGっぽい。やったことはないけどライトノベルは読むから分かる。そもそも『FreedomImaginaryWorld』略して『FIW』はMMORPGだそうだからRPGっぽいのは当然だけど。
一通り見たけど一応復習のために確認しよう。
・HP
攻撃を受ける、または状態異常で減少。攻撃を受けた部位によって増幅あり(首、心臓等)。0になると死亡、リスポーンする。自然回復有り。
・MP
スキル、魔術等の行使によって減少。0になると状態異常発生。自然回復有り。
・耐性
8属性+物理の9種類。プレイヤー、魔物共に設定。最大100~下限無し。プラスでは%分ダメージ減少、マイナス値では増加。
・スキル 《スキル名》
念じる、又は口にすることで各種スキルを発動。
大体こんな所かな。結構シンプルで分かりやすいけど、スキルが最初からあるのは何なんだろう?
「《チュートリアル》等の3つのスキルは最初から必ず獲得するものになります」
「うわっ!?」
驚き過ぎて声が出た。心の声に返事が帰って来るとは微塵も思っていなかった。
「脳波から思考の認識をしております。質問を確認したため返答しました」
そういうこと……利用規約にも思考を認識するってあった気がする。だとしても驚くからやめてほしい。
「ステータスはOK……それで次は」
「初期スキル、初期アイテムの選択となります。リストから選択して下さい。《鑑定》で詳細を確認できます」
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・スキル(あと3つ)
《小火弾》《小水弾》《小氷弾》……《小光弾》《小闇弾》、《弱火壁》《弱水壁》……《弱闇壁》《弱物壁》、……《鼓舞・弱》《堅固・弱》《追風・弱》……《毒針・弱》《鈍足・弱》《跳躍・弱》……《洗浄・弱》《治癒・弱》《遠視・弱》…………
・アイテム(あと1つ)
始まりの短剣、始まりの長剣、始まりの弓と矢、始まりの双剣、始まりの槍……
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なるほど、うん…………多い。スキル幾つあるのよこれ、全部一々確認したら半日はかかるんじゃないの。ひとまず一通り見てみようか。
よし、これでいいかな。1時間はかかったけど、まあいいか。
――スキル《追風・弱》《跳躍・弱》《治癒・弱》を獲得しました――
――始まりの双剣を獲得しました――
考えた結果、スキルは全部サポートスキルになってしまった。武器の攻撃は物理という判定らしいから、物理が無効化された時は……それはしょうがないことにしよう。
武術経験の中でも双剣は私が一番気に入っている戦い方。相手を殺せる方法も分かってるから、スキルは補助に回すのは悪くないんじゃないかな。
「それで、後は何すればいいの?」
「最後は各種設定となります。引き続きタッチ操作またはボイス操作で行えます」
えっと、まずセクシャルガード……はONで、リアリティ設定……五感、痛覚辺りの再現度ね。これはリアル通りの100%で。注意事項? 『過度な身体的及び精神的痛みを感知した場合、セーフティが発動し強制ログアウトが発生することがある』ね。それなら寧ろ受けてみたい、そんな痛み現実で受けることなんて無いんだから。
別にマゾヒストではない。決してない。
あとは初期拠点の位置か……ってそういえば日本が舞台なんだから場所の名前は都道府県のままだよね。
北海道から沖縄県までと、ランダムなんてあるのね、まあスルーしよう。
そうだ、秋川さんにどこで始めるのか聞いてない、どこにするんだろう。高校のある京都かな、それとも都市の東京、大阪、福岡辺り?
「これ長距離移動ってどうするの?」
「自動運行による電車が存在します。但しゲーム内通貨『ネイ』を必要とします」
なるほどね……
「あと人が増えるとPKもいると思うけど、そこは何かある?」
「Lv20以下のプレイヤーへのPK、またそれに類する行為は全面禁止となっております。それに対するペナルティも存在します。反撃には制限やペナルティは存在しません」
ふむ……序盤はされる心配は無いと。こっちからも出来ないのはちょっと嫌だな。プレイヤー人口減らさないためだろうし、そこはしょうがないね。
「よし、東京都で」
「かしこまりました。これにて初期ログイン時の設定は全て終了しました。これより初期拠点への転移を開始します」
いよいよね、大分時間かかった。
「この『FreedomImaginaryWorld』の世界には多くの魔法、魔物、人々が存在し、それと共にあなたの選択肢、可能性も無数に存在します。どうかあなたの行く先に幸あらんことを……」
第2話まで読み進めて頂きありがとうございます。
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