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120:肉人形

過激、不快な描写が多く含まれます。苦手な方は飛ばす影響が少ないので、読まずに次の話を読むことをおすすめ致します。


そうでない方はこのままお楽しみください。

 リンカの腕に釘を打つ片手間に、情報を書かせた紙を流し読みしていた。


 えーっと、『群馬の製糸場ダンジョンで武器用の糸が手に入る』……一切システムの補助が入らないこのゲームで糸? 実際に使ったことがある訳でも無いし、わざわざ使うメリットが見えないからこれは無しね。

 次は……『京都の博物館ダンジョンに闇属性に関する特別な場所に行けるヒントが――』これ深淵のことでしょ。別にもう自力で行けるし、これもいらない。次。

 『未討伐ボス一覧』……? 岩手の時計型ボス、千葉の水仙型ボス、徳島の果樹型ボス……。そんなもの挙げられても、因縁も無いし興味も湧かない。


「はぁ……」


 書いてあったことを一通り見てみたが、大した意味を見いだせず興味も湧かず、思わずため息をつく。

 残ったメガネの男の方を見ると、足を1歩引いて身構えていたので、その足元に紙を丸めて投げつける。


「全く役に立ちそうにないのでこれはお返しします。次はもう少し考えて書いてくださいね?」


「んな物分かる訳……」


「それならせめて、掲示版などでは分からない情報にしてはいかがですか?」


 ……特に匿名で掲示板を使ってる人の正体とかね。

 この人が知らない可能性だって全然あるけど、その場合でも別にデメリットは無いし問題なし。


 紙を受け取らせて釘打ちの続きに入ろうとした所、男は元いた所に戻らず、突然通路に向かって駆け出した。


「なっ、ちょっと。逃げないでくださいよ――」


 逃げるのにはすぐに気付き、焦ること無くリンカの上に跨ったままクロスボウを構え、矢を放つ。

 リンカがそれを伝えようとして叫ぼうとするもむなしく、「んー!」という音しか出せずに終わった。


「全く、困るじゃないですか。彼女の末期をちゃんと見届けて頂かないと」


「なっ! ふざけるのも大概――あ゛ぁっ?!」


「回復されるのは困るので、両手の指だけ落とさせて頂きますね」


 今度はクロスボウから(なた)に持ち替え、男の手を床に押さえつける。そして、指の付け根を目掛けて数回振り下ろして指を切り落とす。


「っと、後は……」


 仕上げのために《インベントリ》から、孔雀の時に手に入れたレイピアを4本取り出す。


 数十回やってたから同じのが幾つか手に入ったけど、やっぱり効果を見れないのはちょっと不便だね。見た感じは、持ち手に金色の金属でできた曲線の護拳(ナックルガード)が付いてる普通のレイピアだけど……。


□□□□□

癒細剣 Lv.22

※詳細鑑定不能※

□□□□□


 名前からして癒しに関係するものだと推測したが、今の目的は剣そのものなので、効果に関しては気にしないことにする。


「ま、まだ何かするつもりですか。さっき『だけ』って言って――」


「はい? ……あぁ、ただ切り落とす部位を指だけにするって話ですよ。手首とか足も切り落とさないだけ有情ですよ?」


 そう告げてすぐに、男をうつ伏せに押し倒して左腕を背中側に回す。腕を引いて体を起こさせると腕と脚の位置が重なるので、そこを狙って上からレイピアを貫通させる。


「づぁあ゛あ゛あっ――?!」


 1本刺した時点でうめき声を上げるが、それをスルーして右腕と右脚も同じ様に串刺しにする。


「さて、後はここから……」


 背が横になるように倒し、今度は腕同士と脚同士が上下に重なる状態にさせる。残りの2本を先に刺したレイピアに沿わせるように刺し、体の後ろ側に四肢を拘束させたところで、顔をリンカが見える位置に起こす。


「ここまで散々横槍を入れてきたんですから、敗者は大人しく観客にでもなっていて下さい」


 メガネの男を認識の外に捨て、虚ろな目をしてうつ伏せになっているリンカの方を見る。少し目を離している間に、口から流れ出る血で顔と首の一部に赤い痕が出来ている。その上、呼吸も荒くなり顔に汗が滲んでいる。


「あぁ……今死なれるのは困りますしこれでもかけておきますか」


 《インベントリ》から白い液体の入った試験管を取り出す。これも孔雀の際に手に入ったもので、《鑑定》の結果には「HP継続回復薬(中)」とあった。

 蓋を開けて顔の上でひっくり返すと、トロっとした液体が顔と首周りに飛び散った。


「なるほど、継続回復だから前の即時回復のとは違って粘度が高いのかな……」


「な、なんでわざわざこんな――!」


「……? 何か?」


 はぁ……本当に五月蝿い。何でこの人たちは一々口を挟んでくるんだろう。というか「わざわざ」って一体どういう……?


 男の方を睨んでいる間に、回復薬が肌から吸収されていく。だが、一部は血液と混ざったように赤みがかって肌の上に残ったままだった。

 リンカの方は回復したことで失血が和らいだのか、目の色に光が戻っていた。


「それでは、本番と参りましょうか?」



□ □ □ □ □ □



「それにしても……貴女って人望無いんですね。もしくは、貴女の人を見る目が無いかでしょうか」


「っ、んんっ……!」


「何です? 異議でもありますか? だって1人は不意打ちでみすみすやられて未だに戻ってこない、1人は喋ったら殺すと言ったのに喋って殺される、1人は見捨てて逃げようとした上今も何も出来ず。そしてかく言うあなたも――」


 リンカの体を見ると、腕や脚に留まらず、肩や胸にも釘が突き刺さっている。


「為す術なく藁人形のようにされている、と。いや、正確には肉人形でしょうかね?」


 どの角度から見ても釘が刺さっているのが分かる程、体のあちこちに釘が打たれていた。釘が抜かれることは無いので血が吹き出ることはなかったが、それでも唇のような柔らかい所のものや滲み出てくるもので見るに堪えない有様となっている。


「そうでした、さっきの方が貴女は『笑顔でいてほしい』とかって言ってましたね。ちょっと笑わせてみましょうか」


「ん、んんーっ?!」


 左手で口の左端を押さえて、無理やり口角を押し上げる。すると頬の皮が寄って重なる部分が出来たので、そこに釘を沿わせ――



「んん゛ぐぅっ……!」


 金槌で頬を縫うように貫いた。

 だが1本だけでは緩かったためか、手を離すと段々とずり落ちてきた。そのため、すぐさま2本目の釘を刺して口角が上がった状態を保つ刺し方を探り始める。



「……んうぅっ」


 えーっと、ここに刺しても意味無いか。じゃあ抜こうか。


「んぐぅっ……、ふぅ……ん゛っっ?!」


 おっと、この硬いのは骨かな。じゃあ向きを変えて、と……。木とかじゃなくて肉だから刺したまま方向転換出来るし楽だね。



 それから合計で釘を6本頬に刺したところで、片側の頬を固定することに成功した。

 その後すぐ反対側の頬も同様に口角を上げたまま釘で固定する。


「ふぅ、思ったより難航しましたね。まさか15回も刺すことになるとは……」


 独り言を呟いていると、メガネの男が恨めしげな声でブツブツと話し始めた。


「何が……何が楽しくてここまで出来る」


「ん? 別にあなたを楽しませるためにやってる訳では無いのに、理由なんて知る必要ありますか? ありませんよね。……それにしても、いい笑顔ですよね」


 続けて笑みを浮かべながらメガネの男に話しかける。


「これがあなた達の守りたかった彼女の笑顔ですか?」


 その尋ねたが、返事が返ってくることは無く、ただ舌打ちと歯ぎしりをするのみだった。

 ここで改めてリンカの有様を見て、ふと思ったことがつい口に出る。


「……ちょっと物足りませんね。笑顔ということですしピースでもさせますか」


 腕は既に脱臼させていてダラりと垂れていて、釘で形作るには丁度と思い、早速取り掛かる。


 まずは手をピースの形にしてと。次は人差し指と中指、親指と薬指と小指をそれぞれ釘で刺して…………1本じゃずれるから駄目か。それなら2本ずつX字状にして……よし。って、このままだと人差し指と中指が自由なままなのね。それならここから――



「ん゛んっ!? んぅぅっ…………」


 中指の先端から骨に沿うように、手の中へと釘を埋め込む。

 一度手の平を突き破って釘が顕になったが、それはすぐに再び刺し直すことで事なきを得た。


「結構しっかり浮き出て見えるものですね……。さて、後は仕上げですね……」


「んんっ……、んんぅ……」


 リンカはここまでのことで、痛みは無いはずなのに目からは涙が滲み出していた。だが、そのことに気にもとめずに仕上げに取り掛かり始める。

 肘を曲げさせて両腕を肩の横に置き、再び《インベントリ》から先程と同じレイピアを取り出す。左手首と左肘の間、左肘と左肩の間と順々に刃を貫通させていく。


「んお゛ぉっ、んあ゛……っ」


 左脇に差し掛かり刃が中へ入っていくと、その拍子で体が痙攣してビクンと2回跳ねる。


「動かないで下さいよ、心臓に刺さるかもじゃないですか」


 心臓やろっ骨を避けるように刃は胸元を突き進んでいき、左腕と同様に右腕を突き刺したところで、レイピアが根元まで刺さる。


「ふぅ、中々様になってるんじゃないでしょうか。……様は様と言っても無様ですが」


「っ……、んぉ…………」


 涙と血液と白濁液の回復薬でグチャグチャになった顔からは、完全に生気が失せて目から光が消えていた。


「どうです? 何をされても大丈夫だといきがっていたのに、自分の体をここまで好き勝手される気分は?」


「おぁっ…………」


「ふふっ……。それじゃあ、私はそろそろ離れましょうか。中々楽しかったですよ?」


 最後にリンカを髪を掴んで起こし、背中を壁に寄りかからせる。


「これは置き土産です、死ぬまでそれなりにかかるでしょうけど、それまで誰にも見られないといいですね」


 先程のと同じHP継続回復薬を2本取り出し、頭から全体に満遍なく垂らす。

 メガネの男の方は現実逃避のための思考停止でもしているのか、一切反応が無かった。


「あなたは……この感じなら普通に殺しても良いかな」


 双剣の『極悪非道』で頸動脈を切り裂いて即死させ、拘束のために使っていたレイピア4本を回収する。


「それじゃあ、戻るかな」


 リンカをその場に残してダンジョンの外に出る。既に時間も迫っていたため、拠点に戻ってその後すぐにログアウトした。

次回掲示板回の後、第2回イベントの前置き編となります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いや、最初はぶっ飛んでなぁ、けど強くて面白いなぁと思ってたんだよ? でも、なんだか怖くなってきた。一般常識や倫理観を理解しているくせに、芯のある欲求が一般的ではない方に向いてて、妙にリアル…
[一言] うーん、昆虫標本って残酷だったんだなぁ……(しみじみ
[一言] 色々酷すぎて草生える(褒め言葉)
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