ライオンのたてがみ
キャプテンが次の惑星に降下しようと提案して、クルーは久しぶりの休暇を楽しもうとはしゃいでいた。
私はその惑星に花の香りの香水が売ってあったらいいなと考えながら計器類を見守った。
無事に宇宙船が着陸して、みんなのびのびと楽しんだ。
「湖がある!釣りができるぞ!」
自然が豊富で、ヒューマン型生物は残念ながらいなかった。
私は帽子をまぶかにかぶって、男たちが子どものようにはしゃぐ姿を眺めていた。
もしこの星にヒューマン型生物がいたなら、女性を何人かスカウトして、クルーに加えてもらったのに。私だけ女だなんて寂しすぎる。
「キャプテン!ライオンのたてがみが出た!」
なんのことだろう?慌てているクルーの方を見る。
「いかん。みんな、水から上がれ」
キャプテンが指示した。
「ライオンのたてがみが出た、って、なんのことですか?」
「お前はシャーロックホームズを読んだことがないのか?」
「全部は知らないけれど、読んだことはあります」
「あれに出てくるんだよ」
「ライオンのたてがみ?」
「そう。サイアネア・カピラータとされるクラゲ」
被害が出てないか確認すると、キャプテンはステッキで湖を掻き回した。
すると、なるほど、ライオンのたてがみにそっくりな藻がひっかかった。
「殺人事件が起きて、ホームズが被害者の知人を疑うんだが、実はライオンのたてがみにそっくりな生物によって殺されたというオチでな」
「毒があるんですか?」
「うーん、わからんが、触らぬ神に祟りなしというし、湖に入らない方がいいな」
「つまんねー」
クルーがぶうぶう言った。
私だって花の香水買えなくてつまんない。
風がいたずらに頬を撫でた。