表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

見ているだけの私

作者: 小鳥遊

私はずっと高杉君のことを見てきました。


初めて高杉君を見たのは、高校の合格発表のときでした。

凍えるように寒く、空気が澄み切った日だったことを覚えています。


高杉君は、貼り出された受験番号を見て、友人と喜び合っていました。

そのときに見たとびきりの笑顔で、私は恋に落ちてしまいました。

周りには沢山の人がいたはずです。

でも、私の目には高杉君しか映ってはいませんでした。

正門から出ていって姿が見えなくなるまで、私はずっと高杉君を見ていたのです。

高杉君のことを考え続け、その日は興奮して寝付くことができませんでした。



それから3年が過ぎました。

私は高校での3年間、高杉君に話しかけることができませんでした。

高杉君を前にすると極度に緊張してしまって、話しかけるどころではありません。

バレンタインでチョコを渡すことも、当然ラブレターを渡すこともありませんでした。

3年間、ずっと見ていたのです。


高校で高杉君はサッカー部に入部しました。

中学の頃からサッカーをしていて、全国大会にも出場したことがあるのです。

チームメイトからの信頼も厚く、2年生ではキャプテンを任されるようになっていました。

サッカーをしているときの高杉君は本当にカッコイイのです。


部活を行いながら、ハンバーガーチェーン店でバイトも行っていました。

勤務態度はお店での模範となるくらいで、爽やかな笑顔を振りまき、他のバイト仲間からもお客さんからも高評価を得ていました。

バイトを辞めるときには、泣いてしまう人もいたくらいでした。

私も涙せずにはいられませんでした。


見ているだけの私でしたが、影ながらは応援していたんです。

サッカー部の練習は毎日見に行っていましたし、大会の応援にも欠かさず行きました。

バイトのシフトが入っている日には必ずお店に行きました。

休日で出かけるときには、必ず後を付いていきました。


サッカーの大会で高杉君に怪我をさせた相手選手のことを調べ、メールとLineと手紙で「高杉君に怪我させたこと、絶対に許さない」と100通程送っておきました。

バイト中の高杉君に意味のわからないクレームを付けた男のことを調べ、その男の妻、近所、会社にその男の不倫について詳細に報告しました。

嫌がっている高杉君にしつこく言い寄るクラスメートの女には、下駄箱、机、鞄、自宅へと「高杉君から離れなさい」という赤い文字で書いた手紙を約1か月間毎日送り続けました。



高杉家は、高杉君を含めて五人と1匹という家族構成です。

小さな会社を経営している父親、専業主婦の母親、大学生の兄、小学生の妹、アメリカンショートヘアの猫がいます。


高杉君は父を尊敬していましたが、無口な父に対してどう接して良いか悩んでいるようでした。

母のことは口うるさくて、ちょっと面倒に思っているようでした。

兄とは仲が良く、特にサッカーの話題で盛り上がることが多かったです。

妹を溺愛していますが、最近あまりに構いすぎてちょっと引かれてしまい、寂しそうにしていました。

ソファーでうたた寝をする際には、猫を自身のお腹に乗せるというのを習慣としていました。


高杉君は高校卒業後、上京して大学に通うために都内で一人暮らしをする予定です。

父の仕事を手伝うためだそうで、経営学部のある大学を選択していました。

一人暮らし用のアパートは3階建てで、高杉君の部屋は2階にあります。


私の部屋の真下です。


また同じ教室で授業を受け、こんなにも近くで高杉君を見続けることができるかと思うと、私は興奮して寝付くことができませんでした。


――私はこれからもずっと見ています、高杉君。

お読みいただき、ありがとうございました。

「つまらなければ★1つ」「楽しければ★5つ」など、下記での採点をクリックして頂けると幸いです。

感想もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ