05.試験の合否
お久しぶりです!投稿忘れてました。
執務を片付け護衛服の準備が整った報告を受けてから護衛達の待つ部屋へと向かう。レオンの反応を見るのが楽しみだ。
ゆっくりと扉を開けると先に到着していたクロードとジェイド、レオンの話し声が聞こえる。何やら試験の内容について話しているようだ。
自分が現れたことを驚かしたい気持ちもあり音を立てずに近づく。
「あの試験内容は難易度が高いですよね。弟に試験までに難易度の高い勉強に切り替えるように伝えてしまいました」
「弟はお前と比べてどうなんだ?」
「私より優秀ですよ。私が三年かかったことを一年でこなしてしまうんです。自慢の弟ですよ。高位の文官になって私の世話をしてもらうのが夢ですね」
「騎士を辞めるのか?」
「そのつもりです。弟の勤め先が決まったら騎士をやめて市井で職を探して働きます」
「結婚は?」
「しません。女性が苦手なんです」
「ふぅん」
(弟がいるのか、ますます・・・------だな)
何故か安堵しつつもレオンの未来に王太子へ侍ることで得られる将来はなく自分とは違う世界へ進む夢を持つレオンに苛立つ。
驚かせたい、自分の存在を意識させたい。そう思うと自分でも驚くような行動をしてしまう。
「そうか、レオンは私付きの護衛を辞めるつもりなのだな」
「ひぃぃぃぃ!!」
後ろから近づき耳元で囁き驚かす。不思議と低い声が出てしまう。するとレオンが視界から消えしゃがんでいた。口をぱくぱくさせながら訴えているような姿は小動物のように愛らしい。
「ジルクハルト、昨日から変だぞ。どうしたんだ?」
「私が変?だとしたら、優秀な奴が現れて嬉しいのかもしれないな」
「確かにレオンは優秀だろうけど、そこまでする程、興味を持った相手は少ないだろ」
数時間前と同様に深い溜息を吐くクロードとは対照的に笑顔のジルクハルトは口の端を上げて笑みを見せる。
「レオンの試験結果を受け取った。おめでとう、合格だ」
ほっと胸を撫で下ろし安心しているレオンを見るジルクハルトは口の端が上がりニヤリとしている。
「四百九十六点だ。私も同じ時間に試験を受けていたが四百九十八点だったからな。ただし、レオンは三時間経たずに試験を終わらせたのに私は三時間半かかった。それなのに二点差とは、お前は私の側に付くのに相応しい」
レオンの試験結果を受け取り確認したクロードがジルクハルトに耳打ちしている。話を聞いたジルクハルトはクツクツと笑い肯定していた。反対側でジェイドは問題を見て目を見開き驚いている。
「あの、これ……学園の入学試験ではないですよね?」
(…………え?)
ジェイドが見て学園への入学試験ではないと判断したのは学園で学ぶ内容が含まれていないからだ。
「基本は学園で学んだ内容だけど応用問題が主だ。それにこの問題は王国の情勢の他に他国の情勢、過去のことまで含めて理解していないと解けないだろ?私では回答できない」
レオンは驚き首を傾げ様子を伺っている。
「他国の情勢は書物を読み込んでいれば解けるかもしれないな。王国のことは回覧や情勢に目や耳を向けていれば情報を入手できる。士官学校なら国に関する情報は充分なくらい閲覧できたはずだが」
「うーーん、確かにレオンは書物を読んでいる時間が長かったので情報を得る機会は充分にあったかもしれません。私の学ぶ姿勢の不足でした。失礼しました」
「これから学ぶことだな」
「はい」
ジルクハルトはレオンと目が合うとニヤリと笑いかけることしかしない。本人が何も言わないのであれば問い質せず成り行きを見守っている。机に寄り掛かり目を細めてレオンを見つめていた。
「そう言えば学園で護衛する理由を伝えていなかったな。クロード、説明を」
昨日は学園での護衛という話だけで、護衛が必要になった理由は伝えていなかった。そもそも、王立学園は王族や高位貴族が通うことから警備は万全で提供される食事も安心できるとされている。
それなのに、ジルクハルトの側に付かなければいけない程の護衛が必要ということは、貞操か命に関わる危険が起きたということだ。
例えジルクハルトに婚約者がいたとしても既成事実を作れば王太子妃になれるかもしれないし、若しくは、側妃になれる可能性がある。
姿を現さない婚約者に遠慮する必要はない。娘を王太子妃や側妃にしたい親や、王太子の隣に立ちたい、王妃になりたい令嬢がジルクハルトの隣に侍るために水面下で壮絶で醜い女の争いを繰り広げていても可笑しくない。
「先週、王立学園で事件があり二週間の休暇に入った。ジルクハルトが狙われた」
護衛として選ばれた二人は驚き顔を見合わせている。安全であるはずの場所で王族が狙われたのだ。
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レオンを専属の護衛と決定してから学園へ入学できる最低レベルのマナーにダンス、貴族としての嗜みレベルで教えて、さらに王国の貴族の家名や地位、関係性などを教え込んだ。
貴族に侮られてはいけない、そのために、各貴族の領地に関することや特産品など、茶会や夜会で話題になるだろうことをレオンに覚えさせる。
レオンは覚えるのは得意なようで難なくクリアしたが、マナーやダンスは覚えるのに苦労しているようだ。
苦労している様子が本当の姿ならば。
お茶を飲む仕草、お茶の給仕の所作に問題がなく美しい。
ジルクハルトはレオンの結果に満足し、クロードへは楽しそうに進捗を共有していた。
「そんなに嬉しいのか?」
嫌がっていた専属の護衛がつく、それを伝えた当初は怪訝な表情を見せたジルクハルトの変わりようにクロードは呆れている。
この男が、こんなにも表情豊かにしている姿が珍しいからだ。
「あぁ、飲み込みが早くて助かっている。今まで他の貴族達に知られずにいたのが不思議なくらいだ。平民であること、男であることで気にもされていなかったのだろう」
「これが女であれば養女にと考える者もいただろうし、それこそ、ジルクハルトへ当てがうために王城で働かせていたかもしれないな」
レオンが女であれば、恐らく下女として王城で勤めて、仕事の覚えが早ければ末端の侍女くらいにはなっていただろう。
「飲み込みの早い仕事のできる侍女だと潰されていたかもしれない。それこそ修道院で働いて貴族の目に留まるかどうかだろう」
ジルクハルトの言う通り、平民で仕事ができすぎると王城で働く他の下働きの女達に目だ立たないように潰されていたかもしれない。
どちらにせよ、レオンでなければジルクハルトに近づくことはできなかっただろうという結論に辿り着く。そんなたられば話もジルクハルトは笑顔を見せて楽しそうに話している。
反応いただけると嬉しいです。
今年は夏に多く休暇を取ったので涼しい場所で創作活動ができるといいなと思っています(*´ω`*)