01.媚薬混入事件
お久しぶりです!
書きだめはできてないので不定期更新ですが完成した分だけアップします!
昼を過ぎた早い時間にクロード・アマルフィ公爵令息を筆頭にラウル・マインラート伯爵令息、リベルト・ヒネーテ侯爵令息が慌ただしく騎士を連れ立って王城へと訪れた。
薬を盛られた王太子であるジルクハルト・ヴォルヘルムを連れて。
王城内に怒号が飛び交う中、一人の男が苦虫を噛み潰した表情を一瞬だけ見せ、その場から姿を消した。
ヴォルヘルム王国の第一王子であり王太子のジルクハルトは婚約者が行方不明のまま、次の婚約者を指名せずにいる。
学園生活を送ることで婚約者で行方不明のレティシア・ヴィクトリウス侯爵令嬢以外の令嬢と交流して婚約者への指名を期待している貴族が多くいた。
だが入学してから一年半が経過しているにも関わらず態度を変えないジルクハルトにヤキモキしている令嬢や、その家の当主が多くいた。
また、数年前より貴族達の間では媚薬の売買が行われていた。
夫婦間で少しの刺激として使われるのが主だ。ある一定数は悪意を持って使われているのは王城の貴族会で一部の者だけが把握している。
あえて野放しにしていたことが災いしてジルクハルトは媚薬が混入された紅茶を口にすることとなった。
「明らかにジルクハルトを狙った犯行だな」
寝室では魔術師が結界を張り、ジルクハルトに睡眠の魔術を施して眠りにつかせ一段落したタイミングでクロードは部屋の壁に寄りかかり溜め息を吐く。
宰相の息子で公爵令息のクロード・アマルフィ、魔術師団長の息子で伯爵令息のラウル・マインラート、騎士団長の息子で侯爵令息のリベルト・ヒネーテの三人は、給仕された紅茶を口にしている。
目の前で給仕された紅茶を口に含んだにも関わらずジルクハルトだけ媚薬が混入していたのだ。
爽やかな渋みで柔らかさを感じた紅茶だった。学園で出される紅茶としては珍しい種類が使われている、そう感じた瞬間、ジルクハルトは水を口に含み側にあったナプキンで口を覆い吐き出す素振りを見せた。
クロードはジルクハルトの異変から同様に口に含んでいた紅茶をナプキンに吐き出し、リベルトは皆に静止するよう指示を出したのだ。
騎士と魔術師が食堂に来たのと入れ替わるようにクロードはジルクハルトを連れて馬車に乗り込み王城へと向かい今に至る。
クロードは遅れてきたリベルトとラウルから現場の様子を確認し、ラウルと魔術師の調べからジルクハルトは媚薬が混入された紅茶を口にしたと断定した。
「同じ紅茶でジルクハルトだけを狙う方法の調べはついているのか?」
リベルトの視界に入った際のジルクハルトのティーカップには何もなかった。
空の状態に紅茶が注がれたのを確認している。
紅茶を注いだ人間は媚薬入りだとは知らされていない可能性がある。
指示を受けた通りに行動していた可能性はある。だが、恐らく誰かに『この特別なティーカップをジルクハルト殿下に使っていただくように』そう指示されていれば『特別』とされるティーカップを王太子であるジルクハルトに使うだろう。
「媚薬を透明な膜になるよう魔術を施して予めティーカップに入れておいた、貼り付けておくような方法をとったのだろう」
それ以外では考えられない。
紅茶を注いだ人間に魔力はなかった。水魔術を使えば媚薬の混入は可能かもしれないが、魔術の発動も確認されていない。
「ジルクハルトの陣の展開があったのは確認できているよ、ただし、途中まで。陣を展開する途中で間に合わないと考えて、物理的に口から吐き出そうとしたんだろうね」
クロードがジルクハルトを連れて食堂を出た後に現場に残っていたラウルは魔術師が到着するまでに、先に魔術の発動、陣の展開が行われたかを確認した。
確認できたのはジルクハルトの光魔術の陣のみで発動までには至っていなかった。
それは後に到着した魔術師も確認しているので間違いない。
「給仕の担当者と食堂の人間全ての聴取は騎士団が行っているが、数人は特定ができている。まぁ、黒幕には辿り着かないだろうけどな」
恐らくだが側妃の兄であるオースティン侯爵が裏で手を引いているのであろう。直接な指示をしていなくても、オースティン侯爵に取り入るために自ら行動した者の仕業と考えてよいだろう。
ジルクハルトが側にいた令嬢と部屋を共にすれば良い、近くにいたのはオースティン寄りの令嬢と、駆けつけたのはヴィクトリウス侯爵令嬢だ。
どの令嬢でもよく、既成事実さえあればオースティン侯爵家としては他のことは上手く処理できると考えての犯行だろう。
学園へ通う生徒達に詳細は説明されず貴族会にのみ報告された。貴族会に出席している当主に緘口令は引かなかったが表現は抑えて家族に伝えられるだろう。
学園は本日より二週間の休暇となる。
ジルクハルトが苦しんでいた様子を目にしており、騎士や魔術師が食堂に現れクロードと共に帰宅したのだ。何もないわけがない。貴族の子息なのだから恐らく勘づいている。
「今後はどうするんだ?」
ジルクハルトの希望があり学園生活では侍従や護衛をつけずに他の貴族子息同様に過ごしていた。
今回のことがあり飲食を口に含む場所で護衛または毒見役が必要になる。何もせずに学園復帰はありえない。
腕を組み指を顎に当てて考え込んでいるクロード。クロードとて、学園を卒業するまでは貴族子息と共にジルクハルトが学ぶことは国王へ即位した際の良い経験になると考えていたから護衛や侍従をつけないことに賛成した。
見える景色が変わるから、その景色を変えずに学園生活を送らせてあげたい。自分達も卒業すれば常に護衛や侍従と共にいることになる。
それはラウルやリベルトも同じ考えだ。
ほんの少しだけの自由、卒業するまでにしか出来ない経験を積み重ねたい。
ラウルとリベルトはクロードの言葉を待つ。
「護衛をつける」
クロードの言葉にラウルとリベルトは残念であることを顔に出す。高位の貴族子息である二人は感情を顔に出さないように教育されている。それでも、ジルクハルトの気持ちを優先させたかった想いが顔に出てしまったのだ。
「ただし普通の護衛ではない」
クロードには何やら考えがあるようで、詳細は話さず国王と宰相に承認をもらう必要があるから、と、席を外した。
ジルクハルトの部屋をでたクロードは父親であるアマルフィ公爵で宰相の執務室へと向かう。
ジルクハルトの部屋に残されたラウルとリベルトは顔を見合わせ首を傾げる。
「普通じゃない護衛って何だろうな」
「リベルトが想像できない護衛を俺がわかるはずないじゃん。普通じゃない護衛に知り合いはいないのか?」
「普通の護衛しかしらねぇよ」
今回ばかりはクロードの言う『普通の護衛ではない』が何を意図しているのか理解に繋がらない。
結界を保つためにいる魔術師以外いない部屋で二人は腰を下ろしジルクハルトの回復を待つ。
眠らせているが、暫くすれば目を覚ます。
その際に必要なら女性の手配が必要だからだ。
久しぶりだと感覚が難しいです。
読み返して少しづつアップしていきますね。
よろしくお願いします(❀ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾ᵖᵉᵏᵒ




