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SS09.美しい髪の行方と魔道士の男

お久しぶりデス!!

最近眠くて眠くて執筆できずです!

ヴィクトリウス侯爵邸から離れ市井に近いその場所で少女は髪の毛を切り落とした。


美しい金色のウェーブがかかった妖精の尻尾(フェアリーテイル)のような髪の毛は艶があり性属性を秘めている。


この髪を売るだけで市井で数年は暮らせる。

ただし、市井で聖属性の髪の毛が売られていることを知られてはならない。知られずに、でも生活のために高値で売らなければならない。王侯貴族に気づかれぬように。


切り落とした髪の毛を涙を溢しながらセシルが拾う。『姉様、ごめん』と消えてしまいそうな程の小さな声で悔しさからの謝罪を。


切り落とした髪の毛をセシルから受け取ったレティシアは微笑み、セシルの手を取り姿勢のとある魔道具屋へと足を運ぶ。


普段は午前しか営業していないが、今宵は新月。この新月の日にひっそりと店は開かれている。


夜遅くに人目を偲んで訪れる流れの魔術師や神官達のために普段は別の仕事をしている男が店を開き客の相手をしている。





ーーーーーカランカランカラン




店に入ると独特の香り、甘い花の香りが鼻腔をくすぐる。



「おや、お嬢ちゃんと坊ちゃんかい?」



十代後半の男は黒いローブを被ったレティシアとセシルを見て物珍しそうに様子を伺う。

見られていることに気づいたセシルはローブから男の顔を記憶するように凝視する。その、様子に気づいた男は鼻で笑いレティシアへと視線を移す。


「用があるのは嬢ちゃんのようだね。貴族のお嬢さんがウチに何のようだ?」


姿勢へ溶け込むために簡素なワンピースに身を包み黒いローブを被っていても少女であることに違いなく、貴族としての振る舞いが抜けきらないことでレティシアは貴族の娘であることが男に知られる。


だがレティシアにとっては、この店で気づかれることは些細なことで、後の生活に支障が出ないと確信している。


この男も人に知られたくない裏の顔があるからだ。


「お嬢さんは今日で終わりなんだ。この髪の毛を買って欲しい。絶対に損はしないから可能な限り高値で買い取ってくれ」


拙い男口調で、それでいて貴族の娘とは違う強気な態度で男に高値で買い取るよう依頼する。

金に困ってはいるが悟られぬよう、可能な限り自分が優位になれるようにと意識して。


「ほぅ、、、」


レティシアから受け取った髪の毛を眺めた男の口の端が上がる。

魔力のある男は髪の毛の価値を正しく理解している。


「切り落としてすぐに現状維持の魔術がかけられているな」


その髪の毛は切り落としてすぐに魔術を施したことで聖属性の魔力を多く纏っている。


「いいだろう。これでどうだ」


差し出されたのは市井で数年暮らすには十分の金額だ。


「それでいい。銅貨と銀貨で用意して欲しい」


子供二人の暮らしであるにも関わらず金貨を持ち歩いていることが知れれば噂になる。その噂がヴィクトリウス侯爵家の手の者や王家の人間に知られると見つかってしまう可能性が高くなる。


男からは袋に沢山入った銅貨と銀貨を受け取る。


「嬢ちゃん達は訳ありだろ?」


「詳しくは話せないが想像通りだ」


「聖属性の魔力なんて高位貴族でしかあり得ない。あんたら二人を探している人間がいるんじゃないか?」


「………」


「話せない、か。まぁ、この髪の毛は価値がある。それを直ぐに手放すつもりはねぇからよ、安心してくれ」


聖属性の魔力を纏った髪の毛があれば浄化魔術の発動や光属性以上の治癒魔術を行使できる。


利用する魔術師の魔力量に左右されるが、王城務めをしている魔術師や神官達は喉から手が出るほど欲するであろう。


その髪の毛が売られていると知られれば、直ぐに買い手が見つかる。


レティシア・ヴィクトリウス侯爵令嬢とセシル・ヴィクトリウス侯爵令息、この二人が行方不明なって直ぐ、聖属性の髪の毛が売られると二人の居場所が見つかるかもしれない。


それでもレティシアは手持ちの資金を得るために髪の毛を売るしかなかった。この新月の日に売らなければ、次の新月まで生活を維持できるのか不安しかなかったからだ。


「新月の魔道士は秘密を護ってくれる、と、噂で聞いています。幼い私たちは貴方を信じるしかありませんから」


そう言い残し代金を受け取ったレティシアは店を後にした。


秘密裏に用意した市井の家へとセシルの手を引きレティシアは足早に向かう。大金を持って長居していては奪われてしまうかもしれない。


男は店の外へ出て二人が姿を消すまで見送った。


「訳ありも訳ありじゃねぇか。あの嬢ちゃん、、、王子様の婚約者だろ」


男は一度だけ王城でレティシアに声をかけられたことがある。

光属性の婚約者と聞いていたが、どうにも強い魔力を感じていた。上手く隠しているようではあったが、男は気づいていた。


婚約者の少女は間違いなく聖属性である、と。


「直ぐに売りに出したら目をつけられるな」


この時期に新しく市井に姿を現した二人の子供の存在に気づかれてはならない。そう感じた男は買い取った髪の毛を鍵のかかった扉に保管する。


レティシアとセシルを護りたい、そんな想いは男にはない。


これから面白くなるかもしれない。

貴族達がどう動くのか、ただ、それを楽しみたい、自身が愉しむために直ぐに髪の毛を売らずに保管することを決めた。


「さて、王子様は何年で愛しのお姫様を見つけ出すことができるかな」


貴族からの依頼で自身の仕事も増えるだろう、と考え、『面倒ごとを増やしたな』と自嘲し店の中へと戻る。


この男が髪の毛を売り出すのは数年後。

売り出された翌日、あまりにも美しい髪の毛がジェイドの目に留まり記憶に残った。


神官が見つけ値段の交渉をしている間に、王太子の命を受けた側近が言い値で買い取った。


売りに出した男は貴族達の駆け引きに飽きて『二人も成長した頃合いだから、そろそろ楽しめるだろう』と次の愉しみを求めて手放した。



レティシアが成長するのを待って売り出されたのは誰も知らない。男だけの秘密だ。

明日も更新予定です!

★評価お願いします(´∀`*)

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― 新着の感想 ―
[一言] ウワッ これは凄い!! こんな裏話が隠れていたのですね。 聖なる人では無いようですが、ここ人のお陰で…… ありがたい。
[良い点] 切られた髪が、なぜすぐに市場に流れなかったのか、ちょっと不思議に思っていましたが、ふに落ちました。 [気になる点] ss09 3行め。 「性属性」→「聖属性」 途中  姿勢に溶け込む…
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