SS02.お酒の失敗は何度でも
「35.誘惑と理性の狭間で」の、レオンが目を覚ました後のお話です。
「んっ……」
瞼を開けると見慣れた部屋。
柔らかい、心地よい寝心地でグッスリと眠れた。
それにしても頭が痛い。ズキン、ズキンとする。
レオンは喉の渇きに気付き身体を起こそうとして、また、あの失態を思い出した。
そう、ジルクハルトの腕を枕にしている。
この男は人を抱き枕と勘違いしているのでは、と思うほど、後ろから抱きついてくる。
片手のある場所がお腹で、脚を絡められているわけではないから、まだマシだろうけど、流石に同じ失態を繰り返したことをジルクハルトに指摘されたくないし朝から言い合うのが面倒だ。
そう考えたレオンは、ここは何事もなかったように起こしに来ようと思い立ち、ソロリ、ソロリと、ジルクハルトに気づかれぬよう腕から逃れる。
身体を離したことでジルクハルトが身動いだ。
慌てて大きな枕をジルクハルトの腕の中に収めると、枕に顔を収めて満足したのか動きが止まった。
その時、ふっ…と、笑ったように見えたのは気のせいだろう。きっと、良い夢を見ているに違いない。
ジルクハルトがどんな夢を見ているのか気になるが、長居すると部屋を出るタイミングを失いそうなので忍足で寝室を後にする。
リビングにはソファーに乱雑に置かれたシーツ、と、自分の上着があった。
上着を羽織りながら部屋を見渡すと、テーブルには酒の空き瓶と食事の後が残っている。
自分が眠りについた後に一人で飲んでいたのだろうか。それはそれで、最後まで付き合えなくて申し訳ないという気持ちになる。
「お酒、強いんだな」
最後まで付き合えたらジルクハルトの酔った姿を見れるのだろうか。少し、興味がある。
(もう少しお酒に強くなれるよう練習しようかな)
アルコールの打ち消しを干渉されるのなら自分が強くなるしかない。ジルクハルトとではなくセシルかジェイドと共に酒を飲めば楽しく練習できる。
「おやすみなさい」
あと数時間で起きる時間だ。
レオンとしてジルクハルトに就寝の挨拶が出来るのも護衛でいる間だけだ。
あと数年、それまで何度、挨拶できるだろうか。些細なことも大切にしていこう。
寝室にいるジルクハルトに微笑み、部屋を後にする。
ジルクハルトの部屋から出ると護衛としてジェイドが控えていた。
もう一人の護衛はチラリとレオンを見た後は頬を赤くして目を逸らす。
(私、何かした、かな?)
自分の身なりを確認するとサラシが取れているわけでもなく、キチンとしている。シャツのヨレは上着で見えていないはずだ。
コテンと首を傾げて同僚たちをみるとジェイドが苦笑いしている。
「ジルクハルト殿下の男色疑惑が強まりつつある、ってだけだよ」
「はぁっ!?なっ……!」
レオンは顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせる。自分がその相手をしていた、と、もう一人の護衛は勘違いしていることに気付いたからだ。
「わ、わたしは、その相手ではないっ!!」
「わーってるって。酒飲みすぎて酔い潰れているところを確認したから。部屋に運ばなくていいって指示されたから放置してたけど大丈夫か?」
「そ、ソファーは寝心地が良かった」
「まー、俺らが普段、自宅で使うような寝台よりは良い物を使ってるもんな」
「う、うん」
「部屋へ戻るんだろ?」
「あぁ、戻るわ。お疲れ」
「お疲れさん。殿下の相手ってのは大変そうだな」
「うん……大変」
自分の失態を同僚に見られたことでレオンは方を落としトボトボと与えられた部屋へと戻る。
お酒の失敗って何度までなら許されるのだろう……
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番外編が準備できるまでは、番外編になりきれないのを小話として更新しるかもです!
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