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34.ジルクハルトの婚約者選定②

重々しい雰囲気の中、議長の宣誓により会議が始まった。


「ジルクハルト、お前がレティシアを想っている事は理解している。私としても、お前の希望を優先したいと考えているが、行方不明である令嬢との婚約はいつまで続けるのか、議会の混乱を招き兼ねないからハッキリさせよ」


国王陛下がジルクハルトに問うた『いつまで』は誰しもが思うこと。一生、レティシアが見つかるまで待つのなら王太子の変更も考えねばならない。


王族には世継ぎが求められる。

王族であることの義務だからだ。


愛している女性でなくてもいい。

世継ぎを生ませても尚、レティシアを待つことだって出来る。

戻ってきたレティシアを側妃や愛妾として迎え入れてもいいだろう。

そんなことは本人でなければ何とでも言える。


貴族達は早く妃の座を決めておきたいのだ。妃によって自身の身の振り方が変わる。ヴィクトリウス侯爵家を生かすのか、オースティン侯爵家を潰すのか。


幼い娘を持つ当主なら、五年以上待つのなら、子を産める可能性の高い若い娘が必要になった時に自分の娘を妃に出来るかもしれないと、考える。


「私の婚約者はレティシアただ一人です。学園を卒業する迄に見つけ出します」


ハッキリと言い放った。

学園を卒業するまでに見つけ出す、と。

それはジルクハルトの決意の表れでもある。


「では見つからなかった場合に備えて婚約者候補を決めましょう」


オースティン侯爵の遠縁にあたる伯爵が、見つからないことを前提にした態度にジルクハルトは苛立つが王族である彼は、その苛立ちを顔に出さない。


「婚約者候補は決めません。学園を卒業してレティシアが見つからなかった場合に、また、この会議を開き貴方達の勧める令嬢と婚約、いえ、婚姻しましょう」


ジルクハルトは、学園を卒業するまで黙っていろ、それが出来たら、お前達の希望する女と結婚してやると言い放ったのだ。


婚約者候補など決められたら実質、婚約者として扱われる。数人いたとしても、有能な令嬢が婚約者としての地位を確立するために動くだろう。


さらに妃教育が行われたら反対する貴族達からも婚約者と内定したも当然として扱われてレティシアが蔑ろにされる恐れがある。


それこそ、レティシアの行方が見つかった後に争いの火種に成りかねない。


辛い思いをしているであろうレティシアが、戻ってきて早々に婚約者候補や貴族達と対峙するのは心労が重なる要因なる。


そこで、黙らせる餌が貴族会の勧める令嬢との結婚だ。貴族会は、半年黙っているだけで自分達が希望する令嬢と婚姻させる事ができる。この数年、見つからないレティシアが半年で見つかるはずもない、ならば勝算は貴族会にある。


「それでいいのだな?」


「はい」


「議長、ジルクハルトはこう言っておるが、この申し出は受け入れるか」


国王から議長へ投げかけられたが、貴族達はヒソヒソと話し合っている。


「ジルクハルト殿下に確認したい事がございます」


「ヴィクトリウスの発言を許可する」


「それが私の娘、マリアンヌでも受け入れてくださると?」


ヴィクトリウス侯爵は娘をジルクハルトに嫁がせたい、マリアンヌ自身もジルクハルトに嫁ぎ王太子妃となることを望んでいる。

だが、ジルクハルトが頑なに婚約者の変更に応じず、マリアンヌも邸で癇癪を起こしており頭を抱えていた。


娘が王太子妃になれば、今よりもお金が手に入り優雅な生活ができると信じている夫人にも婚約者の変更を決定させろと急かされていた。


どうせ見つからないと考えているヴィクトリウス侯爵は、この機会に言質を取りジルクハルトへ嫁がせる足掛かりにしたい。


「あぁ、貴族会が決めた令嬢と婚姻しよう」


この発言で、ジルクハルトは魔力を持たぬ娘でも王太子妃に据えることを承諾したも当然。ならば、魔力のない自分の娘を婚約者候補にできると他の貴族は考える。


適任と考えるなら婚約者はいないが魔力を持っているシルヴィア・ラファエル侯爵令嬢が筆頭候補に挙がる。その次は婚約しているがルル・バジーリオ侯爵令嬢だ。


この二人以外で誰でもいいならマリアンヌ・ヴィクトリウスも一応は侯爵家の令嬢であることから充分に候補者となりえる。


オースティン侯爵家にとってはエミリカ・ナタリエル伯爵令嬢が妃になることが望ましいだろう。


既にライト・オースティンと深い関係にある彼女なら、その全てが彼女の弱みとなり、ジルクハルトに関わる、いや、王族の情報をオースティン侯爵家へと流出させ秘密を握ることができたなら、王家になり変わることさえ夢ではない。


「レティシア・ヴィクトリウス侯爵令嬢の行方はわかっているのですか?」


ジルクハルトがハッキリと言い切ったことで、既に見つけているのではと疑念を抱かれる。


「レティシア嬢が既に慰み者であった場合はどうされるのですか?」


数年も行方不明なら誰しも思うことだろう。


「レティシアの行方は、ここよりも離れた場所と推定され捜査中だ。慰み者かどうかは見つけてから私が確認すればいいことだ」


「ですがっ!もし慰み者であったなら、貴方が手を出すことで愛妾となるのですよ?!」


「問題ないだろう。なら、貴方達が決める私の婚姻相手は純潔であると保障されるのだな?」


数名の貴族は視線を逸らす。

もちろん、ヴィクトリウス侯爵も。

娘が純潔であるか自信がないからだ。


「困っているようなら、私の婚姻相手は純潔であるかは関係ないようだな。まぁ、いい。婚姻後、その娘をどう扱うのかは私次第だしな。婚姻して直ぐに儚くなるのも良くあることだ」


あってたまるか、そんなに簡単に王太子妃が殺されてたまるか、と、レオンは心の中でボヤく。



(そ!れ!よ!り!慰み者であったかをジルクハルト殿下が確認するですって?!それこそあってたまるか!)



レオンは絶対に正体が暴露てはいけない、乙女の危機だと強く心に決める。



会議では今回の決定事項をその場で書面とし、国王、宰相、議長とジルクハルトが署名して有効なものとした。


ジルクハルトに残された期間は半年。

レティシアを捜す捜索部隊や関係者は邪魔をされ上手く動けなくなることが予想される。

捜索を打ち切らせる程の痛手を負わされるかもしれない。


書面にサインした後は貴族達から逃れるためにジルクハルトは早々に会議室を後にした。


執務室へと戻りクロードには事の顛末を伝え捜索チームへと連携した。

捜索チームにいるジェイドを呼びつけ、今後の捜査計画を確認するらしく、クロードは別室へと移動した。


想定していたよりも早く終わったことが嬉しいのか、晩餐は部屋でとるらしい。



(部屋に運び入れるのが面倒なのに。でも、部屋の方がゆっくり出来るよね。侍従を下げたら自由だもの)



ジルクハルトの部屋の前に到着し中へと入る。来る途中に控えていた侍従に食事のことを伝えたので、直ぐに晩餐が準備された。


「レオンも食べろ」


「セドリックと食堂へ行きます」


「セドリックの分も部屋に用意させている。だから、ここで私の相手をするのも仕事のうちだ」


「……はい」


渋々、食事を共にすることを了承した。

椅子の位置が向かいではなく隣の理由を聞きたい。何故、隣でなければダメなんだ。

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