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29.魔力量の測定と密談

ジルクハルトとレオン、ラウルとリベルトにクロードが王城へ到着した頃には既にセドリックは魔術師団長と共に魔力を測定するための部屋へ入室していた。


その部屋は結界で強化されたガラスに囲まれており、外側から魔力測定を確認できる。


中央には学園で用意されていた物より二回り大きい水晶があり、セドリックは手を翳す。


セドリックの足元に陣が浮かび上がり周りに風が巻き起こる。そして光に包まれた。


数分後、魔力量測定が終わった。


告げられた魔力量はジルクハルトに匹敵していた。ややジルクハルトより少ない、といったところだ。


「セドリックと二人で話したい」


部屋から出てきたセドリックにジルクハルトが話しかける。


「兄さん?私のクラスメイトです。私がセドリックと話します」


先日の人の良さそうな笑顔とは違う。兄であるジルクハルトへの対抗心を見せる微笑み。


「王太子としての命だ。これからセドリックと二人で話す」



チッ



ライナハルトが舌打ちをした。綺麗な顔を歪めてーーーー


ジルクハルトはセドリックを執務室へと連れて行き、レオンの入室を制した。扉の外での護衛を命じて。


レオンの代わりにクロードが入室し、執務室には三人。何を話すのか、レオンはセドリックが失礼な態度を取らないことを祈った。


「なになに?レオンってば過保護すぎ!てか、セドリックってそんな非常識には見えないけどなぁ〜」


「孤児院でも礼儀正しかったし常識はあったから安心しろ。急に魔術を発動させるような馬鹿じゃないだろ」


「そ、うだけど……心配。ジルクハルト殿下との相性が悪そうだし。だからと言ってライナハルト殿下相手だと最大限の無礼を働きそう……」


「マジかよ!お前の弟ってば、ぶっ飛んだことするのか?レオンのように常識人だろ」


「うぅ……甘やかし過ぎ過保護に育て過ぎたから……調子に乗らなければいいんだけど……」


「そう心配するな。クロードもついている。あの男の前でぶっ飛んだ事が出来たら大物になれる。それはそれで貴重だ。それに、だ、面倒見のいいジルクハルトの事だから悪いようにはしない。せいぜい、弱みを握られるくらいだ」


「弱みっ!?」


「それで飼いならす。まぁ、平民相手にはしないだろうから安心しろ。囲い込みが目的だろうし」


「そうそう!自分の側近候補とか?レオンが騎士を辞めたら護衛がいないじゃん?魔力が多くて治癒できる奴は貴重だからな。羨ましいー!俺も光の属性が欲しい!」


その属性、差し上げたいと思う。

ラウルが持てば有効活用できるはずだ。

レティシアとして光属性に関わる魔術は毒の打ち消しくらいでしか使わない。怪我をしても治癒はしていない。反魔で多少使うくらいか。


治癒術なんてセシルの方が上手く使いこなせる。


ジルクハルトとセドリックは何を話しているのか。既に三十分は経過している。



(ライナハルト殿下は……何を話したかったのかしら……。あの場にはオースティン侯爵がいたわ。ライナハルト殿下が動いた時にオースティン侯爵の表情は変わらなかったようだけど)



リベルトとラウルがセドリックの魔力と今後のことについて話しているが、レオンは一人、オースティン侯爵がライナハルトを王位に付ける以外にも目的があるのではと考えていた。


ジルクハルトを王太子から引き摺り下ろすにしても時間をかけすぎている。レティシアが行方不明になった時に一気に叩き落とせたはずだ。


それが出来なかったという事は、オースティン侯爵に関わる何かをジルクハルトが握っているということ。

若しくは、証拠となる物を抹消出来ていない。



ガチャーーーーー



不意に扉が開いた。

話が終わったのかセドリックが出てきた。レオンは執務室内を確認するとジルクハルトの機嫌は良さそうで安堵する。



(失礼な事はしていないみたいね)



ほっと胸を撫で下ろしジルクハルトに視線を移すと、目が合った。とても、とても甘い笑みを浮かべている。


「レオン、勤務終了だ。今日は帰っていい」


「あ、はい。承知しました」


「セドリック、本当にいいのか?」


ジルクハルトは念を押して確認する。


「えぇ、これからの事にも関わりますので兄さんに相談します。まぁ、兄さんが良しとしないでしょうから諦めてください」


「そうか、残念だ」


セドリックに手を引かれ、その場を後にする。


王城から出るとまだ明るい。

市井に向かって歩いているが、セドリックは黙ったままだ。


「何を話していたんだ?」


「……将来のこととか」


治癒術師の事だろうかと、レオンの頭を過ぎる。


「セドリックの将来の事なのに私の我儘で文官になってと話をしているんだって気づいた。セドリックは自分のやりたい事をしなよ。騎士以外で」


「騎士は反対なんだ」


「セドリックは優しいからね、人を傷つけるのは苦手だろ?」


「……そ、かな」


セドリックは自嘲する。苦手ではない。ゴミのようなクズは殺してもいいと思っている。あの家の奴らは特に。


「今夜はお祝いしようか。食べて帰ろう」


「いいの?」


「たまには贅沢しよう」


「じゃぁ、ハンバーグの店にしよう」


「好きだなぁ、ハンバーグ」


「あれは絶品だね。貴族じゃ食べられない」


「確かに、中のチーズが最高!」


市井で暮らし始めてから知ったハンバーグの味は二人の心を暖かくした。それから特別な日はハンバーグと決めている。





食事が終わり帰宅した後は早めに就寝した。

セドリックが何故、約束を破り光の属性を判定させたのかレオンは聞けずにいる。




真夜中の日付が変わった頃、焦げ臭い匂いの所為で意識が浮上した。


「姉さん!!火事だ!逃げるから服!」


真夜中ということもあってレオンの意識はハッキリとしていない。


「姉さん、怒らないでよっ」


セシルはレティシアの服を捲り上げ晒しをキツく巻き直す。その行動に驚いたが上手く身体が反応しない。


「放火だ、逃げるよ?」


セシルに手を引かれ家の外に出た。その後数回、セシルは家の中と外を往復して必要最低限の物を持ち出した。


「あっ……首飾り!大切なのっ」


「あぁ、あれか。待ってて」


数分後、レティシアの大切にしているアメジストを使った花のモチーフの首飾りを持ってセシルが戻ってきた。


「はい、大切な物」


「ありがとうっ」


ジルクハルトから贈られて邸を出る時に持ち出した唯一の宝物。



業火の炎に焼かれ他の物は全て燃え尽きるだろう。



この辺り一帯に火を放たれたようで逃げ出した住人が多くいる。皆、呆然としている。


「どうしようか」


学園へ通うにも制服を仕立て直す必要がある。手元に残った資金では制服を仕立て直すと家財道具が買えなくなる。

貯金を崩しても、すぐに底をつくだろう。


「もう学園も辞めようか。俺、働くよ?」


「そっ……それはっ」


「ねえ……兄さん、もう無理するのはやめよう。楽、しようよ。折角、平民になったんだしさ」


そのセシル、セドリックの表情は楽しそう。また一からやり直すだけだよと言われると、確かにそうなのかもしれない。

夢のように調子が良かっただけなんだ。


「レオン!セドリック!」

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「堕ちた聖女と愛を取り戻した英雄〜英雄は婚約破棄を告げ聖女を断罪する」

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