表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

序章ー6

 アニー達がライアンの方へと駆け寄っていく。

 全身で歓喜を顕にし、感動に瞳を潤ませているようだった。

 ライアンを抱きしめながら、アニーは、

 「勇者様、すぐに傷を治します。」

 と言い、魔法を唱えようとする。

 しかし、それをライアン自身が制した。

 「いや、…僕よりも、リュートの方を先に治療してやってくれ。」

 「なに言ってんだよ。…今は、お前の方が重症じゃないか。…こう、血がドバドバって。」

 「いいんだ、ユージ。……」

 とライアンは抱きしめている腕を振りほどき、アニーの背を押して、俺のいる場所まで来た。

 「さぁ、アニー。……早く。」

 と急かされて、アニーはオロオロしてしまっていた。

 それでも彼女は、俺に向かって呪文を唱えようとしていたら、ー

 苦痛の声を漏らし、ライアンが足が崩れて膝をついた。

 急いで全員が振り向くと、もはや彼の瞳は虚ろとなり、虫の息の状態だ。

 「ほら、見ろ。…やっぱり、そうじゃねぇか。」

 「これは、もう魔法じゃ間に合いません。…残っていたエリクサーを使用しましょう。」

 ロンダーは懐から液体の詰まった瓶を取り出し、蓋を開けて中身を、直接ライアンの傷口にかける。

 瞬く間に傷は塞がりだし、なんとか立てるまでの元気を取り戻した。

 「す、すまない。…皆。」

 ライアンが謝罪するも、他の仲間達はほっと安堵したようで、首を横に振って否定していた。

 すると彼は、ロンダーから多少残ったエリクサーの瓶を受けとり、屈んで俺の方に瓶の口を向けてくる。

 「大丈夫だよ、今治すからな。リュート。……」

 その彼の一言に、俺は堪忍袋の緒が切れた。

 残った力で瓶を持つ手を叩いてやった。落ちた瓶は割れずに床を転がっていく。

 「な、何をするんだ。…」

 「そうやって。…お前はいつも、俺を各下に見て蔑んでいるんだろう。…お優しい勇者の俺は、お前みたいな、ひねくれた野郎も心配してやるんだぞって。……」

 「は?」

 「現に、…他の奴等は、誰も俺なんか眼中にないらしいしな。…よかったな、思惑通りに言って。」

 俺の言葉を聞き、ライアンは困惑していた。訳が分からないと、表情で訴えてくる。

 そんな、あいつの顔を俺は睨み付けながら、

 「俺は、…お前のそんなところが、一番嫌いだったんだよ!!」

 と、大声で宣言した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ