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【連載版】クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊まりを要求してきました……  作者: 識原 佳乃
クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊まりを要求してきました……
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14 『居眠りの釣井! 早退の恵比寿! お着替えの瀬能! 我らぽんこつ三銃士!!』

 その後も開き直った(?)瀬能先輩が「あ~んする」とだだをこねたり、対面に座る先輩カップルに向かって「私と弓削くんの方が仲良し」だのと謎の挑発にも似た発言をしたりと色々とやらかしたが、どうにか無事に甲斐先輩と小原先輩とのモーニングを乗り切った。

 ちなみにふたりは既に朝ごはんを食べていたらしく、甲斐先輩はデミタスコーヒーをブラックで。小原先輩はストレートのダージリン・モンスーンフラッシュをそれぞれ楽しんでいた。


 ……朝ごはんなんて一体いつの間に食べたのだろうか?

 それとふたりとも砂糖を入れないのは眠気覚ましということか?


「――それでは自分たちは先に戻っておきます」

「くれぐれも始業時間には遅れないようにね?」

「周りが見えてないふたりには言われたくないかなー……」

「全くだ……」


 やつれたような苦笑いを浮かべるふたり。ぼそりと毒を吐かれたような気もするが……疲れているようなので俺と瀬能先輩は先にカフェを出た。


「――弓削くん」

「はい」


 カフェを出てすぐのこと。横を歩いていた瀬能先輩が立ち止まって話し掛けてきた。

 顔を向けると感情の読めない真顔でこちらを見つめている。


「朝ごはんを誘ってくれて、ありがとう。すごく……すっごく嬉しかったの」


 そう言って満面の笑みをこぼしながら俺の手をそっと掴む瀬能先輩。

 ここまで喜んでもらえるとは思ってもいなかったので、何だか気恥ずかしさがある。

 それとごく自然に俺の手を握ってきたけど……どうして指組み(恋人繋ぎ)なのか。……朝一から勘弁してほしい。


「喜んでいただけたのならばよかったです。また今度行きましょうか」

「……ん。でも今度は――弓削くんとふたりきりがいい」


 瀬能先輩は俺の指の感触を確かめる様にむぎゅむぎゅと握りながら、上目遣いにしっとりと潤んだ瞳をこちらに向けてきた。微かに揺れるその視線からは「断られたらどうしよう」という、不安が感じられる。


 ……手を握りながら涙目の瀬能先輩――このまま抱きしめてしまいたいほどに庇護欲がくすぐられた。


「――先輩の仰せのままに」


 なのでわざとらしく演技じみた返事と動作で応答した。こうでもしないと本当に抱きしめかねなかったのだ。


 するとそんな俺の反応に瀬能先輩もわざとらしく胸を張って答えた。表情は満面のどや顔。……どうも瀬能先輩もノリノリだった。クッソ可愛い。


「――くるしゅうない」(`・ω・´)ドヤッ



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ふたり揃って会社に戻ると、いつもは始業時間ギリギリに出社してくる釣井先輩が既にデスクに座っていた。

 ただよく見るとこっくりこっくりと船を漕いでいる。……間違いなく居眠りしてるな。


 それにしても今日は皆来るのが早いなぁ――なんて暢気に考えていたら、頬っぺたをぐにぐにとつままれた。

 ……見るまでもなく瀬能先輩なので「なんですか?」と顔を向けたら、


「…………」(見付かったらだめっ!)


 口パクで俺に伝えてきながら何やら悪い笑みを浮かべている瀬能先輩がいた。……うん。完全にこの状況を楽しんでいるいたずらっ子先輩だ。


 素直に嫌な予感しかしないが、わくわくしている瀬能先輩があまりにも可愛いので付き合うことにした。……我ながら先輩を甘やかしている気がしないでもない。


「…………」(何をするんですか?)

「…………」(――いたずら!!)


 100点満点の小悪魔な笑みを湛えた瀬能先輩がひっそりと動き出した。

 俺は背後から見守っていようと思っていたが、腕を掴まれて強制的に参加させられた。

 仕方なく釣井先輩の背後から息を殺して接近していると、気分はまるで忍者だ。……何だか無性に楽しくなってきている自分がいた。


「…………」(私が先攻!)


 そう口パクで呟いた瀬能先輩が釣井先輩の正面い回り込んだ。そしてどこからか取り出したカラフルな金平糖をデコピンの要領で弾き飛ばし、釣井先輩の半開きになっている口に華麗にゴールを決めた。……って何やってんだこのいたずらっ子先輩は。

 ――その後も正確無比なデコピンから放たれる金平糖はひと粒、またひと粒と吸い込まれるように釣井先輩の口に入っていく。


 ……こらっ! 調子にのってポイポイ入れるんじゃありません!


 見れば瀬能先輩は眩しいばかりの輝きを放つ太陽のような笑みを浮かべながら、心底楽しそうにクスクスと笑いを堪えていた。……完全にただのいたずらっ子である。普段のクールな課長らしさはどこかに忘れてきてしまったようだ。


「――んむ、もぐ…………あ、あめぇぇ……もう、糖分は……いらねぇよぉぉ……」

「――んっ!!」

「――やべっ!!」


 さすがに何粒も金平糖を放り込まれ、口内に違和感を覚えたであろう釣井先輩が無意識に咀嚼をし、俺と瀬能先輩はバレると思ってとっさに近くのデスクの陰に身を隠した。

 聞こえてくるのはポリポリと金平糖をかみ砕く音と寝言だけ。

 どうやらセーフだったようだ。たとえるならば、黒ひげが入った樽に剣を突き刺していくようなあの適度なスリルが全身を駆け巡る。


 ……どうしよう。めちゃくちゃ楽しいぞこれ。


 ふたりしてデスクの陰から頭をひょっこりと出して「釣井(つるりん)異常なし」「了解(ラジャー)」と、頷きあう。……つるりんって釣井先輩のことか? 急にやめてほしい。危うく噴き出すところだった。


「…………」(次、弓削くんの番!)

「…………」(いきます!)


 足音を殺すように擦り足で進み。釣井先輩のデスクからティッシュペーパーを1枚拝借する。

 瀬能先輩が物というか……もはや飛び道具を使用していたので、それに倣って俺もアイテムを使うことにした。


 ティッシュペーパーを用いて作製するのは――不随意運動を引き起こす悪魔の兵器だ。ティッシュペーパーの角を細長く丸め。鋭い針の如くピーンと尖らせたら完成。僅か数秒で出来上がった。


「……ごくりっ」俺の兵器を見た瀬能先輩が喉を鳴らして驚愕の表情を浮かべている


 ……俺が作り出した悪魔の兵器、それは――紙縒(こより)だ。


 その細く鋭く尖った先端は力をいなしながら巧みな柔軟さで鼻腔を刺激し、不随意運動であるくしゃみを引き起こす。

 ……まず間違いなくくしゃみをしたら目を覚ましてしまうだろうが、究極のスリルを味わえるのだ。


「…………」(がんばって!)


 何故か口パクで応援してくる瀬能先輩に。「参ります!」と同じく口パクで返す。


 それからゆっくりと釣井先輩の正面に回り込み。

 紙縒(こより)を持った腕を真っ直ぐに伸ばし、フェンシングスタイルで臨戦態勢に移行。

 己を落ち着ける様に深く息を吸い込んでから、細く長く吐く。それを数度繰り返してから足を一歩踏み出し、間合いに入った釣井先輩の鼻の穴(ターゲット)目掛けて(こより)を突き刺――、


「――あれ? 弓削くんと瀬能くん?」

「「!?」」


 俺はフェンシングスタイルのまま、瀬能先輩はひょっこりと顔だけを声のする方に向けると――真っ青な顔をした恵比寿部長がそこにいた。

 恵比寿部長も普段は割と時間ギリギリに来る派の人なのに、みんな揃って本当にどうしたのだろうか? ……それと何だか体調が悪そうだ。


 硬直すること十数秒。訝しむような視線をこちらに向けた恵比寿部長は、ポンッと手を叩いてから思い付いたように言った。


「申し訳ないんだけど……体調不良で今日は早退するね」

「……え?」

「……お大事になさってください、部長」


 ――早退!? まだ業務も始まっていないっていうのに早退ってどういうことだ?


 俺が反応出来ないでいると、いつの間にか冷静沈着(クール)モードに切り替わった瀬能先輩が何事も無かったかのように口にしていた。……相変わらず切り替わりが早い先輩である。こういうところは今まで通りカッコイイ。


「じゃあ、後は頼んだね瀬能くんに弓削くん――」


 それから未だに船を漕ぎ続けている釣井先輩を一瞥した後、


「釣井くんにはあまり糖分を与えたらいけないよ? 彼、二日酔いで……調子に乗った僕みたいになりかねないから」

「は、はい……?」

「承知いたしました」


 意味は理解出来なかったけど、とりあえず首を縦に振っておいた。

 もしかすると恵比寿部長も二日酔いだったってことか?


 最後にどこか苦々しい笑みを浮かべた恵比寿部長は「ではお先に失礼するね――そういえば瀬能くんは衣替えしたのかい?」そんな言葉を残して去っていった。


 ……今の今まで色々あり過ぎて忘れていたが、今日の瀬能先輩はいつものスーツ姿じゃないのだ。

 俺としてはビシッとスーツで決めた瀬能先輩もカッコ良くてもちろん好きだが。オフィスカジュアルな装いの瀬能先輩もまた良きものであった。……正直瀬能先輩ならば何を着ていようとも好きだけどな。


 恵比寿部長の発言にコテンと首を傾げた瀬能先輩は何故か俺の方を向いてから一言。


「部長は何を言っているのかしら?」


 ……あれ? もしや気が付いてない?


 朝一で見た時はスヤスヤと夢の中にいて。

 話し掛けてみたらお弁当の中身を詰め忘れていて。

 ペットボトルのキャップすら開けられないレベルで寝ぼけていた。


 ……そこから判断するに充分ありえる気がする。


「先輩、もしかしてなんですけど――着替え忘れてません?」


 俺の言葉にようやく顔を下に向けて自分の恰好を眺め始めて。

 暫く服装を確認するように手でポンポンと触れてから、風を切るような音が聞こえてきそうな速さで首を上げ。

 驚愕を顔一面に広げてから言った。


「――お、お着替えしてくるっ!!」


 そして機敏な動作で踵を返し。

 流れるような俊敏な動作で更衣室へと駆け込んで行った瀬能先輩だった……。

~レビューのお礼~

夜薙さん様! 27件目のレビューありがとうございます!

>一文字につきシュガースティック一本。

 ⇒死ぬぅぅぅ!! それさすがに致死量! 死んじゃうやつやーん!(笑)

  ちなみにスティックシュガーが1本3gと仮定すると約694㎏ですね(笑)うん、死ぬ\(^o^)/

>あ。そういえばこれ初レビューですね。

 ⇒さらりと暴露しないでください!(笑)胃が更に痛くなります(笑)

>責任とってよねっ!(主は男です)

>俺のカップ麺返せ(無茶振り)

 ⇒夜薙さん様のこのノリ滅茶苦茶好きです\(^o^)/(なおカップ麺は返さない模様)


~ところてん何派? 三者三葉SS~

弓削くん「そういえばこの間テレビでやってたんですけど、ところてんって地域によって派閥が分かれるみたいですね」

瀬能先輩「……ん?」

釣井先輩「そうなのか?」

恵比寿部長「確かに色々と食べ方はあるようだね」

小原先輩「そうなんですかー? 私は酢醤油派ですねー! 甲斐先輩も酢醤油でしたよね?」

甲斐先輩「正確にはからし酢醤油だな」

小原先輩「こまかい! ……並々ならぬこだわりを感じます……!」

釣井先輩「俺も昔は酢醤油派だったが……今じゃ三杯酢+からし派になっちまったぜ。ところてんには三杯酢だろ! 美味いからやってみろ!」

恵比寿部長「僕はもちろん――黒蜜派! 気分によってはきな粉をかけたり、抹茶パウダーをかけたりアレンジもするかな」

夜薙さん様「で、でたー! 黒蜜派や!!」

恵比寿部長「ところてんはデザート! これは譲れないかな!」

弓削くん「ちなみに自分はポン酢派なんですけど……夜薙先輩は何派なんですか?」

夜薙さん様「俺か? 俺はもちろん――鮭フレーク!!」

一同「「「「「――え??」」」」」

夜薙さん様「っていうのは冗談――」

瀬能先輩「――いっしょ!! 私と一緒!! ところてん鮭フレーク!!」(`・ω・´)キリッ

一同「「「「「「――えっ!?」」」」」」

瀬能先輩「……ん? ところてん鮭フレーク、美味しいよ?」

夜薙さん様「敵や! 新たなる敵や!! カップ麺返せ!」(関係無い)


……ところてん鮭フレーク派ここに爆誕ッ!!\(^o^)/

ちなみに私は何も付けない派なのですが……誰も同志がいません(笑)

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cool
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