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【連載版】クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊まりを要求してきました……  作者: 識原 佳乃
クール美女系先輩が家に泊まっていけとお泊まりを要求してきました……
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9 『ぽんこつ+天然+寝ぼけ=甘えんぼうで忘れんぼう』

「――先輩、おはようございます……?」


 修羅の笑みこと村田本部長との飲み会を終えた翌日のこと。

 二日酔いの気怠い頭痛に悩まされながらも、いつもの時刻に出社した。


 昨晩日本酒をあれだけ飲んだというのに、瀬能先輩は当然のように席にいたが――珍しい光景を見てしまった。


 うちの会社はオフィスカジュアルな服装でいいのだが、瀬能先輩なりのこだわりなのかいつも更衣室でスーツに着替えてからやってくるのだ。

 ……それが今日は、リボンのついたオフホワイトのブラウスにベージュのカーディガンを羽織り、落ち着いたネイビーのタックスカート姿だったのだ。


 一目見て、驚愕。

 二度見して、高揚。

 三度目の正直……という訳ではないが、改めて瀬能先輩はクールだけではなく、可愛さも兼ね備えているのだなと実感した。


「…………」


 そんなオフィスカジュアルな女性らしい恰好で自席に座って腕を組み。俯いたまま静かに固まっているのだ。

 俺の挨拶に返答がなかったので、ある程度予想はできた。

 それを確かめるために極力足音を立てぬよう、まずは自分のデスクに向かい荷物を置く。

 心を落ち着けるよう深く息を吐いてから、覚悟を決めて瀬能先輩のもとに向かった。……もちろん、抜き足差し足忍び足で、だ。


「…… (すー)…… (すー)


 近付いて聞こえてきたのは――いつもの穏やかな天使の寝息。


 課長に昇進してからというもの、職場では冷静沈着(クール)な態度を崩していなかったあの瀬能先輩が――無防備にもスヤスヤと夢の中だ。

 ……いちいち言うのもあれだが、寝顔すら美しくて可愛いのは一体全体どういうことなのか?

 二日酔いの怠さなんて全部吹き飛んだ。


 早起きは三文の徳、ということわざは本当に実益があるものだとひとりで勝手に納得しながら、これからどうするべきかと考える。


 グッスリと眠る瀬能先輩。

 恐らくは俺と同じ理由で、昨晩の深酒がたたってのことだろう。

 あまりにも気持ち良さそうに寝息を立てているので、このまま寝かしておいてあげたいが……俺達以外誰もいないとはいえ、ここは会社だ。

 誰か来てしまったら就業時間外だが瀬能先輩が居眠りをしている姿が見られてしまう。真面目な瀬能先輩のことだ……もしそうなったら落ち込んでしまいそうな気がする。


 ……なんてものは建前で実際は――俺が瀬能先輩の可愛らしい寝顔を他の人に見せたくないだけだ。


「先輩、起きてください」

「…… (すー)…… (すー)


 普段のトーンで声を掛けてみるが、返事は天使の寝息だけ。

 無反応なのは想定内だ。


 せっかくこんなレアな瀬能先輩が見られたのだ。

 ただ普通に起こしてはツマラナ――ゲフンゲフン……なので、趣向を変えてトライしてみる。


「――鮭、サーモン、ハラス」

「…… (すー)…… (すーっ)!?」寝息を立てながらピクリと揺れる瀬能先輩


 うむ。無条件で可愛い。


「――鮭フレーク、すじこ、イクラ」

「…… (しゃけぇ)……??」むにゃむにゃと寝言を漏らす瀬能先輩


 うん。ただただ可愛い。朝一から最高の気分だ。


「――焼き鮭、鮭のムニエル……鮭のちゃんちゃん焼き」


 俺の作戦が功を奏したのか瀬能先輩が、


 「………… (ちゃん) (ちゃん)……やき……」


 と呟くのと同時に、ゆっくりと瞼が開いた。


 はい。いちいち可愛い。最高かよ本当に。


「おはようございます」

「…………」

「先輩?」

「…………」


 ゆったりとこちらに顔を向け、とろんとした瞳が俺を捉えているはずなのに、瀬能先輩は完全にノーリアクション。

 どうみても未だ眠りの世界にどっぷりのようだ。


「…………」まだ眠いのかフラフラと左右に揺れている瀬能先輩


 他の人が来るまで時間は充分にある。


 ……寝ぼけている瀬能先輩が愛らし過ぎるので、このまま眺めていてもいいだろうか?


 一瞬そんな考えが頭をよぎったが、やっぱり他の人に見せたくないという気持ちが勝り、瀬能先輩の肩を優しく掴んで揺らした。


「朝ですよ。起きてください先輩」

「……あ、さ?」

「そうですよ。それにここは会社です」


 コシコシと目を擦っている瀬能先輩からようやくまともな反応が返ってきた。再起動まであと少しだな。


「……かいしゃ」

「はい。おはようございます先輩」

「……おはよー、ゆげくん」


 起きていると言えば起きている。

 眠っていると言われればそんな気もする。


 ……とりあえず会話が成立する程度には目が覚めたようなので、自分用に買っておいたペットボトルの水を手渡した。


「お水どうぞ」


 だけど寝起きで力が入らず自分で開けることができなかった瀬能先輩は、ぼんやりとしたまま俺の袖口をクイクイと引っ張って……、


「……おみずー、あけてー」


 のんびりとした無垢な口調で言った。


 子供よりも子供っぽいその仕草は、もとからあった天然要素に寝ぼけステータスが追加されたことによって、爆誕したようだ。


 一言でいうのならば……尊い。

 甘えんぼう先輩が無邪気過ぎて尊い。


「開けましたよ。こぼさないように気を付けてくださいね」

「うん」


 俺に言われた通りペットボトルを両手でしっかり掴んでから「んくっ……んくっ……」と飲み始めた瀬能先輩。

 よほど喉が渇いていたのか一気に半分ほど飲んで。満足そうに「ぷふぅーっ」なんて言っていた。……尊みがヤバイ。


「ごはん、たべなきゃ」


 水を飲んだらてっきり目覚めるのかと思いきや、そんなことはなく。のっそりと動き始めた瀬能先輩は、鞄からあるものを取り出した。『呑兵衛殺し』という文字が書かれた、あのお弁当包みだった。


 ……この展開、前にもあったな。


「おにぎりですか?」

「おにぎり」

「中身は何ですか?」


 すると少し考えるように虚空をボンヤリと見つめてから、ちょこんと小首を傾げて「……はてな?」と口にした瀬能先輩。……どういうこと!?

 ま、まさか寝ぼけて作ったから中身に何を入れたのか覚えていないってことか?


 ……大丈夫なんだろうか。


 心配になって様子を窺っていたら、ウエットティッシュで手を拭いて、ゆっくりとした手付きで包みを解き、お弁当箱のふたを開けた。


 ――そして中には……、


「……え?」

「……ん!!」Σ(,,ºДº,,*) ←急にこんな顔をした瀬能先輩


 ――何も入っていなかった。



==============================

~特典のSS紹介コーナー~

 挿絵(By みてみん)

来週の15日発売の書籍をご購入頂きますと、書店さんによってはSSが付いてきます!

今回はそちらのご紹介をさせていただきますね!

※どの特典SSも数に限りがありますので、気になった方はお早めにゲット頂けますと幸いです!


【初回版限定同梱版SS】 『黒い――いくら!』

 ある日街中を歩いていると、ばったり瀬能先輩に遭遇!

 そこから始まる瀬能先輩とのデート、そして「黒い――いくら」の正体とは一体……!?


【TSUTAYA様】 『ホットミルクブレイク』

 ふたりぼっちの残業中、瀬能先輩が用意してくれたホットミルク。

 甘いホットミルクを飲みながら、ほっこりまったり瀬能先輩といちゃつく……苦いものが欲しくなるそんなお話です。


【とらのあな様】 『机の下でこっそりと』

 大事な会議を控えて緊張気味な弓削くん。

 そんな後輩くんに自分も緊張していることを伝えようと、周りの人たちにバレないよう机の下でこっそりと……!!


【ゲーマーズ様】 『見守り隊結成』

 ――なんとまさかの釣井先輩視点のSSです(笑)ギャグ系SSとなっています。

 これを読めば今日からあなたも見守り隊の一員に!? でも裏切り者には粛清が待っている……!?(笑)


【メロンブックス様】 『イタズラ』 

 ――最近、瀬能先輩の様子がおかしい。今日もオフィスでイタズラを仕掛けられたからだ……。

 ことあるごとに様々なイタズラを仕掛けてくる瀬能先輩の狙いは一体何なのか……!? ぽんこつ劇場ここに開幕!!


【Wonder GOO様】 『IF~図書委員――瀬能芹葉~』 

 もしも瀬能先輩と同い年で同じ学校に通って、クラスメイトだったら……そんなIFストーリーの第1弾。

 クラスメイトの瀬能は影が薄い。……だが、本当の姿は――俺だけが知っている。お化けが苦手で――そして……。


【くまざわ書店様】 『IF~生徒会長――瀬能芹葉~』

 もしも瀬能先輩と同じ学校に通って、先輩後輩という仲だったら……そんなIFストーリーの第2弾。

 十全十美の超人である会長は、周囲から畏怖されていた。そんなある日、お昼休みにその姿を見かけて後を追ってみると……!!

7話での伏線

>同じ課の人間には「これから弓削くんとふたりで飲みに行ってくるから、心配しないで」と伝えること。

 ⇒見守り隊 [休憩室] (・・ )))。。。サササッ

  見守り隊 [休憩室]д・)ジーッ……


~レビューのお礼~

AsoRa様!

24件目のレビューありがとうございます!

>初レビューです!

 ⇒ヒエッ! またも初レビュー!!

  最近初レビューという文字を見ると私が緊張します(どこまで攻めていいのかと!!)

>日々我々読者を癒して下さい!

 ⇒時には癒しではなく、吐き気 (オロロロロ)を皆様に与えられるように頑張りますね!(笑)


癒しとは何か? ~付き合い始めて最初のエイプリルフール~


瀬能先輩(……今日は4月1日(エイプリルフール)! せっかくだから弓削くんに嘘をついてみましょうか)

弓削くん「課長、頼まれていた会議資料なのですが」※場所は皆がいるオフィスなので課長呼び

瀬能先輩「その前に大事なお話をさせてもらえるかしら?」内心ワクワク

弓削くん「はい。どうかしましたか?」(あっ……何か考えてるなと些細な表情変化を読み取った弓削くん)

瀬能先輩「私達……別れましょう? 理由は……えっと……その、色々ね」しどろもどろ(。-`ω-)

弓削くん「はい――なんて言うと思いましたか? 今日はエイプリルフールですよね?」

瀬能先輩「…… (よかったぁ)……うん。せっかくのエイプリルフールだから嘘ついたの!」安心\(^o^)/

弓削くん「エイプリルフールだからってこんなにも(たち)の悪い嘘をついても許されると思いましたか?」

瀬能先輩「……えっ?」(。´・ω・)ん? どういうことかしら?

弓削くん「俺は誠実な芹葉さん……いえ、課長のことが好きだったんです……でも幻滅しました。別れましょう」

瀬能先輩「…… (やぁ)……やだぁぁぁぁぁっ!! ごめんなさいするから!」( ;∀;)

弓削くん「う、嘘ですから! そんなに騒がないでください芹葉さん!」(小声)

見守り隊の皆(またなんか夫婦漫才してるぞ? 取り乱す瀬能とあやす弓削……頼むからそのまま終われよ?)

AsoRa様(まだ癒し、まだ癒し、まだ癒し!)

瀬能先輩「本当に嘘!? 私のこと好き?」

弓削くん「え……皆いますしここで言うのは……勘弁して下さい」

瀬能先輩「!! やっぱり私のこと嫌いになったの……?」ウルウル先輩

弓削くん「好きですよ! 大好きですよ! 決まってるじゃないですか!! 芹葉さんは俺の彼女です! 誰にも渡しません!」やけくそになって大声で宣言する弓削くん

瀬能先輩「……わ、わたしも――明弘くんのことすき、好き――だーい好き♪ 独り占めするんだもん!」弓削くんに抱き着く瀬能先輩

見守り隊の皆(爆発しろ!!)

AsoRa様「癒しいやしイヤシIYASHI……オロロロロロロッロ!! 癒しって何だー!?」オロるAsoRa様


癒しとは吐き気! 吐き気とはオロること! すなわち吐いたら癒されたということ!

……ですよねAsoRa様?\(^o^)/

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