表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/84

26 『……予約していた瀬能です。チェックイン、お願いします』(一瞬だけクールモード)

書籍化作業を優先しているので更新遅れ気味です。すみません!

今回は長くなり過ぎたので分割です。

こっちは短めで内容はないよう!(いつも通り)

後半は明日の20時予約投稿してあります!

 博多駅から徒歩4分の好立地に建つ、14階建てのビジネスホテル。ここが本日の宿泊先だ。

 そこに病院からタクシーで直接向かった。

 俺はビジネスホテルに泊まるのが初めてなのだが、建物の外観は普通のホテルと遜色のないもので、ロビーは広く木目を基調としたオシャレな作りだったので、正直驚いた。

 1階にコンビニが入っていなければ普通のホテルで通じると思う。


「先輩、ホテルに着きましたけど、ひとりで歩けますか?」


 俺はキャリーケースをふたつ引いているので、フラフラと前を歩く瀬能先輩に声を掛けたら「だいじょうぶ」と返答が。

 そんな返答に……本当に大丈夫だろうか? と思ったの俺だけじゃないだろう。

 気持ちふらついているが特に何事も無くフロントへとたどり着き、「……んっ」と一度咳払いをしたかと思ったら――瀬能先輩が()()()()()になった。……なん……だと!?


「……予約していた瀬能です。チェックイン、お願いします」

「お待ちしておりました、瀬能様。恐れ入りますがこちらに、お名前とご住所のご記入をよろしくお願いいたします」


 ……俺は幻でも見ているのだろうか?


 つい先程まで「どこにもいかないで?」と、俺の手を握ったり腕を絡めたり、隙あらば抱きつこうとしていた人とは到底思えない。

 会社で見せているいつもの冷静沈着(クール)美女(ビューティー)にスイッチした瀬能先輩がそこにいた。

 ペンを受け取って何食わぬ顔をしてさらりと必要事項を書き終えて、従業員(フロントクラーク)の注意事項説明を受けている。

 俺はそんな様子を横目に隣でチェックインを行う。

 瀬能先輩が上手くできなかった場合のフォローをしようと思っていたのだが、これならば問題はなさそうだ。

 ……というかこんなにもしっかりと受け答えができるのならば、どうして病院ではあんなに子供っぽく甘えてきたのだろうか? 魚を怖がっていた時や飛行機に乗っていた際の過去の例からして……もしや瀬能先輩は病院が怖いのか?

 うん。充分ありえそうだ。


 ふたりしてカードキーを受け取って、偶然同じ13階の部屋だったのでエレベーターに乗り込む。

 エレベーターはカードキーと連携していて、停止階が制御されるようだ。……ここ本当にビジネスホテルだよな?


「……つか、れた」


 扉が閉まりエレベーターが動き出してすぐ、そう呟いた瀬能先輩が前を向いたまま俺の方に力無く寄り掛かってきた。

 やはりフロントでの対応は無理をしていたらしく、背後からだったのでその表情は見えなかったがだいぶお疲れのようだ。


「お疲れさまでした。後は部屋でゆっくりするだけなので、楽にしてください」

「……ん。そうする」


 多少警戒していたが瀬能先輩は抱き着いてきたりする事も無く、ただただ俺に身体を預けてくるだけだった。

 こんな密室空間で何かあったら逃げ場がなかったのでとりあえず一安心だ。

 程なくして13階に到着したので部屋に向かったら、廊下を挟んだ向かい側が瀬能先輩の部屋だった。


「ゆげくん、おむかいさんだね」


 瀬能先輩が嬉しそうに微笑んでいる。

 この近さなら何かがあってもすぐ駆け付けられるので助かる。


「ですね。とりあえず荷物置いて着替えてからそっちに行きますね」

「え? ……どうして?」

「病人をひとりで放っておける訳ないじゃないですか。……あ!! す、すみません! 家族でもない野郎を入れるのは先輩も――」


 当然看病をするつもりだったが、よくよく考えてみれば常識的にありえないことだ。

 女性がひとりで止まる部屋に男が上がり込むってアウトだろ。……いくら心配だからって何やってんだ俺は。


「――ちがうの! どうして、きてくれるの? わたしわがままイッパイいったし、ゆげくんをこまらせてばっかり。……それなのに、どうして――きてくれるの?」


 瀬能先輩の言わんとしていることは何となくしか理解できなかった。

 きっとこれ以上迷惑を掛けたくないと考えているんだろう。

 だが、そもそも俺は迷惑を掛けられたなんて微塵も思っていない。……精々俺の貧弱な理性がバラバラに分解しそうになったくらいだ。

 それに病人を看病するのに理由なんていらないはずだ。

 ……()()も破っちまったしな。


「あれですよ……その、どこにも行かないって約束を破った罪滅ぼし……というのは建前で。……本当は先輩のことが心配だからですよ」


 心の底から、身体の芯から、火を噴きそうなほど恥ずかしかったが、ヘタレビビリなりに精一杯の言葉を伝えた。


「……ゆげくん」

「は、はい」

「ありがと……すっごく、うれしい。……はやく、きてね?」

「はい!」


 ――そして視線を逸らした瀬能先輩は静かに部屋へと入って行った。

まだ書籍化作業があるので、ちょっと更新遅れちゃいます!

カッコ可愛い瀬能先輩にすべく、改稿頑張ってますので、

他の皆様の良作をお読みになられながら、心緩やかにごゆるりとお待ちいただけますと嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cool
※画像をクリックするとアース・スターノベル様の公式ホームページに飛びます!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ