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11 『砂糖炸裂犯――シュガリスト――』

インフルはやっているみたいですね。

私の周りでも結構かかってる人が多いので、皆さんもお気を付け下さい!

(私が職場にばら撒いた説)

 ブリーフィングでの連絡事項の3点目は、結構なビッグニュースだった。

 なんと恵比寿課長が総務部の部長に昇進というものだ。

 恵比寿課長は人望もあるし、人当たりもいいのでマネジメントには向いているのかもしれない。

 ……ただ、優し過ぎるのも問題なんじゃ……と考えていたら、瀬能先輩が「課長は怒ったら一番怖い。この会社の誰よりも怖い」と教えてくれた。……いや、そもそもなんで瀬能先輩は俺が考えていることが分かったのだろうか? もしかして顔に出てたのか?

 そんなこんなで恵比寿課長昇進のビッグニュースで皆一度騒然となってから、


「そんなことよりも、ふたりはいつ結婚するんだ?」

「芹葉ちゃんの晴れ姿……絶対キレイ……今から披露宴が楽しみ!」

「余興は任せろ! 男、釣井が人間ウェディングケーキコスプレで、U.S.O.のダサかっこいいダンスを完璧に踊ってやるからよ!」


 何事も無かったかのように俺と瀬能先輩のイジリを再開したのだ……。

 終いには誰も反応してくれなくてヤケクソになったのか、恵比寿課長が「ウェディングケーキは僕がひとりで全部食べ切っちゃうからね!」と、無謀な宣言をしていた。……そんなことしたら糖尿病になって死にますよ恵比寿課長。


 その全部食べる発言を聞いた皆が、


「「「……今」」」

「「「……ひとりで」」」

「「「……全部食べ切るって」」」

「……仰いましたね? 課長?」キリッとした瀬能先輩


 恵比寿課長を取り囲んで楽しそうに追い詰めていた。……なんで瀬能先輩が参加しているのか? さっきまで俺と一緒にいじられてたはずなのに……。


「な、なんで急に皆して団結するんだい!? それに瀬能くんもいつの間にそっち側に!?」

「総務課は団結力が良いって恵比寿課長なら知ってるじゃないですかーやだー」

「えぇ。だから……弓削くんもこっちに来なさい」

「は、はい」


 瀬能先輩に言われたら仕方ない。

 俺に拒否権などない。

 一歩踏み出して輪に加わろうとしたら、恵比寿課長が絶望の滲んだ瞳で俺を見つめてから一言。


「ゆ、弓削くんまで僕を裏切るのかい??」


 ぐっ……!

 そんな瞳でこんなことを言われたら参加しにくい。

 ここは空気を読んで参加するべきか……チワワのように潤んだ瞳を向けてくる恵比寿課長につくか……。


「……弓削くん?」俺に向かって手を差し出してきた瀬能先輩

「よろしくお願いいたします」


 決断は一瞬だった。

 まさに秒の反応をしてしまった。

 反射的に瀬能先輩の手をとって、気が付けば先輩達に向かって頭を下げていた。


 すみません恵比寿課長!

 俺は瀬能先輩をとります!


 そして俺が合流した瞬間またしても空気が変わった。


「……また」

「……手を」

「……繋いだな?」

「こいつら……隙あらばイチャつきやがる……!」

「やっぱりお前らは敵だ! 善良な我々に(あだ)なす――シュガリストだ!」

「芹葉ちゃん……隠してたけど……実は私もずっと胃がムカムカして、胃もたれと胸焼けが止まらないの……」

「それなら僕は瀬能くんと弓削くんの今朝の一件のせいで……倒れかけたんだ」


 今度は俺と瀬能先輩を取り囲んでくる先輩達+恵比寿課長。


 まずシュガリストってなんだよ? 謎ワード過ぎて意味が分からない。

 それに今朝の一件ってなんだ? 今さっきのことか?

 ……そんでもって皆仲良過ぎだろ。


 俺と瀬能先輩は顔を見合わせてから頷き合い、開き直って手を繋いだまま「弓削くん、会議があるから行きましょう?」「承知いたしました」と、輪から抜け出して逃走したのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「――弓削くん、お昼に行きましょうか」

「はい」


 瀬能先輩と出張のスケジュールを共有するために、今日はふたりで外に出て食べることにした。

 始めは社食でもいいかと思っていたんだが……、


「何だお前ら? 外に食いに行くのか? ラーメンだったらご祝儀ってことで奢ってやるぞ?」

「お昼デートとか……うらやま……けしから……妬ましい!」

「夫婦水入らずか……その方が周りに被害が無いからいいかもな」

「ランチだったら会社の近くのカフェがオススメー! コスパ良いし、美味しいし、雰囲気も落ち着いてるし、好きな人と行くなら最適だよー!」


 他の先輩達がこんな感じなので諦めた。

 俺は「出張のスケジュール確認ですから!」と、若干動揺しながら返事をした。

 一方瀬能先輩はというと、小原先輩のところで何やら話し込んでいる。……何やってるんだ?


 程なくして弾むような足取りの小走りで俺のもとまでやってきた瀬能先輩。

 表情はいつもの通り凛とした引き締まった表情なのに纏う雰囲気が……何と言えばいいのか……ワクワクしているような落ち着きの無いものだった。


「お待たせ。行きましょう?」

「はい」

「ふたりとも車に気を付けて行ってくるんだよ? ちゃんと周りも見ないと危ないからね?」


 そんな恵比寿課長の親が子を心配するような言葉を背に、俺達は会社を出た。

~レビューのお礼~

木曽ヤマミ様! 7件目のレビューありがとうございます!

な、なんと初レビューをこの作品に捧げて下さったんですか!?

しかもサトウキビを口から出しながらッ!?

木曽ヤマミ様はビックリ人間……間違いない!(笑)


「弓削くん、これなにかしら?」床に落ちているサトウキビを眺めて首を傾げる瀬能先輩

「え? 何ですかこれ?」まじまじと観察する弓削くん

「……おっきい……ニラ?」やっぱりぽんこつな瀬能先輩だった……

「ニラですか……菖蒲っぽくないですかね?」そして弓削くんもぽんこつだった……

「ニラ菖蒲! ……きっと新種! 世紀の大発見……!」目をキラキラさせた瀬能先輩

「……そ、それ僕の……口から出た……サトウキビ……」休憩スペースでひとり呟く木曽ヤマミ様だった……


木曽ヤマミ様ごめんなさい!

反省はしていません!(笑)

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cool
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