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9 『つまるところ焼き鳥はタレと塩だったら私は断然……柚子胡椒派ね』

 ギャグ回です!

「ウツボってどんな味がするのかしら? ……海のギャングだから……塩味? でもそれだと陸のギャングと空のギャングは……何味になるのかしら? ……そもそも陸のギャングと空のギャングって何の動物? 海のギャングがいるのだからもちろんいてもおかしく――」


 妙に真剣な表情で天然っぷりを爆発させている瀬能先輩。完全に本題の斜め上に向かって思考を展開しているというのに、他のことが気になって仕方ない様だ。……きっとウツボを釣って少なからず興奮しているんだと思う。

 顎に手を当てて思考に没頭しているからなのか、フラフラと右に左に蛇行しながら歩いている。

 そんな様を見て、生け簀に落ちるんじゃないかと心配になったので、瀬能先輩のブラウスの袖口を掴んで皆が待つ個室まで引っ張って連れて行った。

 ちなみに瀬能先輩は俺に引っ張られていることに気が付いていないらしく、未だに「つまるところ焼き鳥はタレと塩だったら私は断然……柚子胡椒派ね」などと独り言を呟いていた。


 あれ? ウツボどこいったんですか? しかも柚子胡椒って選択肢にないですよね!?


 心の中でツッコミを入れながらふたりで席に戻ったら、仁王立ちで待ち構えていた釣井先輩から釣果報告がされた。

 既に釣り上げた魚は店員さんが持って行ってしまったとのことだったので、釣果と言っても口頭でだったのだが。


「俺が宣言通り鯛を釣り上げてやったぞ! それもめちゃくちゃドデカイやつだ!」

「ウチは石鯛だったよー! 値段は鯛より全然高かったから、釣井先輩よりも上かなー!」

「俺は大物のヒラメだったな。ちなみに値段は石鯛同様鯛よりも高かったから、釣井先輩が最下位っすね」


 全て鯛にならなくてよかった……とひとり安心していたら、釣井先輩が俺と瀬能先輩を指さして言った。


「んでよ……俺らが必死こいて釣ってたのに、お前らはなんでウツボなんて釣ってんだよ? ……それもふたりで楽しそうにイチ――」

「――イチ……バン……そう! ふたりがイチバン楽しんでいたね! このお店を選んでよかったよ!」


 釣井先輩が何か言おうとしたところで、急に他の先輩達がおしぼりで口を塞いだり、おでこをペチーンと叩いたり、両手両足を掴んで押さえ付けたのだ。……なんでおでこ叩いたんですか……。

 そんな異常な状況だというのに恵比寿課長はのほほんと感想を口にしている。

 押さえ付けられている釣井先輩は「もがごごおごぉうごがぁぁっ!?」と何かを叫んでいたが、恵比寿課長が気にしている様子はない。


 ……これがパワハラってやつか? いや、多分違う気がするが。


「ホント……なんでウツボ釣れたんですかね?」


 そう言いながら横に座っている瀬能先輩の方を向いたのだが、そこには誰もいなかった。

 どこにいったんだ? と見回してみたら、押さえ込まれてもみくちゃにされている釣井先輩の横にちょこんと座っていた。

 それから親指と中指でOKマークを作ったかと思いきや、両手を使って凄い早さで釣井先輩のおでこにペチペチペチペチとデコピンを連続でかましていた……何やってんですか瀬能先輩!?

 ただでさえ面白い光景だというのに、何故かデコピンが8ビートのリズムを刻んでいたので、不覚にも笑ってしまった。


「…………」無言でペチペチ継続中の瀬能先輩

「もいっ! もへほ!! ほほう!!」何かを伝えようと叫んでいる釣井先輩

「……ふぅーっ……満足したわ」満足げな表情で俺の横に戻ってきた瀬能先輩

「おいっ! 瀬能、お前! 先輩のデコで8ビート刻むってどういうことだ!? ふざけんな!!」やっと解放された釣井先輩


 なんだこのコント? もしかして歓迎会の余興なのか?

 しかも釣井先輩も……もぐもぐ語を喋っている……だと?


 堪え切れずに声を上げて笑っていたら、おでこを押さえた釣井先輩が「おい! 弓削! お前笑ってないで俺のことを助けろよ!?」と切実な表情で訴えてきた。


「なんか邪魔しちゃいけないのかと思いまして……」

「それならせめて瀬能を止めろ!! これだから周りのことが見えないバカ――もごぉ!?」

「――瀬能くん! 弓削くんを連れて引っ掛け釣りコーナーで伊勢えびでも取ってきてくれるかな?」


 また何か言いかけたところで今度は恵比寿課長自ら、釣井先輩の口をおしぼりで塞いでいた。

 一旦釣井先輩の拘束を解いていた他の先輩達も瞬時に押さえ込みを再開。

 口、頭、両手、両足をホールドされて大の字で仰向けになっている釣井先輩が、俺に助けを求めるような視線を向けてきた。


 こんな状況で俺に一体どうしろと!?


「はい。かしこまりました。……弓削くん、行くわよ」

「えっ? ……了解です」


 俺の教育係である瀬能先輩がそう言っているので、従うまでだ。

 理由は分からないが、(はりつけ)状態にされている釣井先輩には死んでもらうとしよう。


 とにかく今日分かったこととしては、釣井先輩がイジられキャラだということぐらいだろう……。

 デコピンされた釣井先輩のおでこはほんのり赤くなってます……ゆでダコかな?

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