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池袋の帝王 その2

「皇帝陛下、ねえ……」


「あれ~信じてないの?」


 この金髪の優男、一応皇帝候補、つまり皇太子である。礼儀をもって答えないとあかんよなあ。


「傍目からみて幼女の膝に縋り付いて泣いている優男が皇帝とか片腹痛いわ」


「な、なにおう!?」


 あかん、めっちゃ本音出た。彼が目を剥いて俺を睨む。

 だってさ、俺の中の皇帝って言ったらギルがメッシュする人だもの。こんなヘタレじゃなくてさ。実力、胆力、見た目、全部そろった傲慢さの塊、あと金髪、それが皇帝だと勝手に思っている。


「そもそもどうして皇太子さまがこっちに来たのさ? この屋敷はもそっと普通の異種族の方々がご利用なされてるんですがね」


「アハハハハ! そうだね、僕も普通の神様だしね!」


「わ、我は普通の皇太子だぞ!」


「そんなに普通がいてたまるか!」


 街を歩いていて普通にこいつらが歩き回っていたら嫌すぎる。


「――この子とはねえ、ちょっといろいろあったんだけど」


 懐かしむ――という表現をこの億年を生きているであろう神に使うのも変な気がするが、彼女(?)は彼との馴れ初めを語りだした。


「――元々僕は多元宇宙を彷徨って、それぞれ強い『物語』のある場所を渡り歩いているのだけれど。理由は――言わなくてもわかるかな?」


「……暇つぶしで?」


「そうそう! 単なる暇つぶしだよ。実際暇だからね!」


 本音かどうかもわからないが、たとえ本心からの神様の行動原理を知ったところで人間になんて理解できないだろう。


「それで僕はね、ある時帝国――あちらの世界の一番大きな国だね。そこを観光していたのだけれど、そこでこの子と出会ったのさ」


「このお坊ちゃんか」


「ぼ、坊ちゃんじゃない!」


 見た目は大人、中身は子供、どうみても坊ちゃんです本当にありがとうございました。


「この子はね、ちょっと訳ありでね。皇帝として育てられてたわけじゃないんだ」


「……ふうん?」


「元々皇帝の血統では傍流、皇位継承権に絡むこともない、穏やかな日々を送っていたわけだよ。でもそれが王権の争いが始まって、十人もの皇子同士が争い始めてしまった。そして骨肉の争いの末――生き残ったのがこの子さ」


 俺は改めてこのしょぼそうな皇子様を見つめる。実は結構、すごかったりするのか?


「――ふ、ふん! どうだ、我の凄さを実感したか?」


「……お前が手を廻したんじゃないの?」


「やだなあ、人の世に手を貸すほど落ちぶれちゃいないよ~」


 千の顔を持つ神はケラケラと嗤う。


「嘘つけ。とんでもない力与えてるじゃねーか」


 先ほど屋敷を改変した力は普通、人に与えていい物じゃないだろ?


「いやいや、これは後付けだよ? この旅が決まった時に僕がプレゼントした、旅限定の代物だからさ。ほら、何かと物騒じゃない最近?」


 物騒なのはお前定期、だと思うが突っ込むのも面倒くさい。


「ただ、この子は強い星の力を宿している。それだけは確かだよ。だから僕も仲良くしているのさ」


 人と神の友情なんてたいていまやかしである。何か裏があるような気がしてならないが、当人がいいなら突っ込むのも野暮だろう。俺は気にしないことにした。


「と、言うわけであとは宜しく頼むよ。僕はちょっと出かけないといけないから」


「い、行っちゃうのニャー君?」


「そんな泣きそうな顔をするなよ、僕がいなくても君は立派にやっていけるさ」


「う……うん。でも君がいなくなったら我はまたこの男に虐められるかも……」


 しねえよ。てかいつまでも異界神ドラえもんに頼るな。てかこれ俺のポジション完全にジャイアンじゃないですかね? つーか便利な祝福どうぐは貰うわ、困ったら泣きつくわ、まんまじゃねーか。


「――さて、のび太殿、本日の御用命は?」


「――のび太とは誰だ? 我の名は シングラス=ノビオ=ノビラータ十五世である。きちんと呼べ」


やっぱのび太でええやん。と思ったが一応切り替えることにする。


「ノビ様、でいいですかね? こちらの世界で長々と名前を読み上げるのも面倒なので」


「……特別に許す」


 俺らのやり取りを横目で見ていたニャルラトホテプは満足そうな笑みを浮かべると、どこかに消え去っていった。


「――ふう。ところで、ご飯を食べに来た、と仰いましたね? ご希望などありますか?」


「――いや、まずは観光だ。飯というものは腹を空かせねば美味くはないのだから。それに、我が目的はこちらの暮らしを見ることも含まれる……我が国民の為に帝王学を学ぶには……」

 

 御大層に目を瞑り演説をかますノビ君の話を右から左に聞き流しながら俺は今後のプランを考えた。


「わかりました。それじゃあ行きましょうか」


「いや、待て。もう一つ、条件がある」


「条件?」


「そうだな――帝王らしき場所、我が尊さに敵う場所、そういう場所を案内せよ。我は帰れば帝位に就くことになる。そうなればもう自由な行動など無理だ。今回のこともニャー君に頼み手を尽くしてもらったのだ。だから、この場において我が見て、よいと思える場所を――」


「はいはい、じゃあ行きましょうか」


「ちょ、ちょっと待て! こら、腕を引くな! 我は高貴な……」


 面倒になったので俺は彼の手を取ってさっさと出かけることにした。

変にプライドが高いわ、注文も面倒だわ、でもいいでしょ、案内してあげますよそういうところを。

明日から数日家を空ける予定(もしかしたらすぐにキャンセルされるかもしれませんが)なので

それに伴い書き溜めておいた新作を投稿します。

なおそちらはこちらと一週間ごとに入れ替えで更新しようかと思っております。

ただこっちも早く読ませろ、という意見が来た場合は交互にしますがその際はコメント下さい。


というわけでこちらの更新は今週はここまで、来週をお待ちください。新作も宜しく~。


追記:「転生したら殺人ホッケーマスクだった件」 投稿しました。よろしくお願いいたします。

https://ncode.syosetu.com/n4695fb/



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