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新宿ダンジョンその7

「……はぁ」


「おお、無事戻ったか伸介殿」

 

 彼女たちは新宿駅南口の階段下で俺を待っていた。この辺りは東口にも、三丁目方面にも通じていて、選択肢が広い。ちなみに降りてすぐ直進すると、例の親子喧嘩した家具店のショールームがある。昔俺も家の家具をここで買ったことがあるが、最近はとんとご無沙汰である。やはり家具というのはなかなか買い換えないものだ。商売人としては親父が正しかったのだな、と思う。


「ええ、まあ……」


 一応穏便に済ませましたとも、ええ。土下座させたら俺の右に出るものはいないぜ?


「それで、その人は?」


 俺がいない間に何があったのかわからないが、勇者とかよばれた蒼髪の男は妙にしょぼくれて階段に座っている。ちなみに格好はマントに軽装の鎧である。帯刀していないからか通報はされていないようだ。


「――勇者リーチ。例の異界の門のあった遺跡を荒らしてここへ繋がる手がかりを作った一味のリーダーだ」


「……」


 紹介されたリーチは無言のまま佇んでいる。逃げる気はないようだ。


「ええと、リーチさんはここに来た時の記憶はあります?」


「ああ……おぼろげながらな」


 喋らないかと思ったが、彼はちゃんと受け答えをしてくれた。


「我々は財宝を求め、この地に来た。しかし……あまりにも見たこともないものに圧倒されるうちに意識を失い……気が付けば、あの汁の中に……」


 まだ目がうつろだ。


「最初は、汁の外だったんですか?」


「そう、そうだ……。疲弊し疲れ果てたところであの懐かしき香りの温かい汁を飲ませて貰って……それで、癒され懐かしく思ううちに……気が付けば」


「……なるほど」


「何かわかったのか、伸介殿?」


「ああいえ、多分ですけど……まだ確信はないというか」


 もしかしたら、次の人物を探す指針になればと質問してみたのだが、脈らしきものはみつけた気がする。多分、心が同調できるなにかに反応するとそれに取り込まれるのだろう。彼にとってはそれが味噌汁――恐らく望郷の念だ。


「それで、この人はどうするんですか?」


「……貴様、しでかしたことの大きさは分かっているのだろうな?」


 キヨノさんが彼の胸倉を掴み顔を上げさせる。

 剣呑な雰囲気に周囲の注目が集まる。しかし――。


「いや、言い訳はしない。元々、私も反対だったのだ」


 彼はキヨノさんから視線を外してそういった。


「なっ……戯言を!」


「本当だ。王に請われ今まで尽くし、勇者と呼ばれ思いあがっていたが、私だっていつまでもこれが国の為、民の為になるとは思ってなどいない」


 淡々とした口調で、それが本心かどうかは伺い知れない。しかし彼は後悔の念を口にした。


「ならばなぜ止めなかった!」


「出来るわけがないだろう……お主の父上に」


 その言葉にキヨノさんがグッと喉を詰まらせる。


「宰相エチゴ殿はあれでなかなかの策士だ。我々が裏切ろうなどと考えぬよう、いくつも搦め手を用意していた。勇者などと言えば聞こえは良いが、私はただの傀儡に過ぎないと思っている」


 俺は彼のどことなく、含みのある言い方が気になった。宰相の傀儡、というだけではない何か別の人物の影がチラついたような気がしたのだ。


「――まあよい。では大人しくお縄につくがいい」


「ああ、好きにしろ。私はもう、疲れた……早く、帰りたい」


 そう言うとリーダーは深く項垂れたまま、動かなくなった。

 

「で、どうするんですかこの人?」


「捕縛の術がある」


 そういうと彼女は懐から一枚の札を取り出した。


「これを対象に貼ればその者は自動的に任意の地で待つ、まあ奴隷札の一種だ」


 そう言って彼女がその札をペタリ、と彼に貼り付けると彼はうろんな目をしたまま静かに階段を上がり始めた。


「キョ〇シーみたいで便利だなあ」


「屋敷に戻るようにしてある。一日持つから今日中に帰れば問題はないだろう」


 静かに帰途に就く彼の後姿を見送りながら、俺達は再び確認するようにお互いの顔を見た。


「で、次はどこに?」


「ああ、次は――」


 そう言うと彼女はスクロールを取り出し、新たに現れたであろう予言の文を読む。


「――地に隠れし食の都。滴溢るるかの地、その中に根付く香り高きその墨象りし場所――」


 一気に読み上げた彼女は難しい顔をする。


「何だこの、より難解な……くそ、わからぬかもしれないが、何か思いつく場所があれば私がかたっぱしに駆けて調べ……」


「ああ、わかりました。行きましょう」


「え」


「いやあよかった。前より分かりやすくて。俺も本格的にお腹減っていたのでさっさと行きましょう。いや、それよりも予約かな……」


「え、いや、今ので分かるほど……その、簡単なのか?」


「簡単ですよ~。なにせ『墨』なんてキーワードのある店なんてあそこしかないですし」


 なにせ店名からして『墨の形』そのままである。


「ま、面白い場所ですよ。ちょっとここから歩きますけど」


 目指すは新宿西口、メトロ食堂街である。


ルミネ1を軽く紹介しようかと思ったのですがそもそも店の入れ替えが激しくあまり意味がないかなと思ってスルーします。ただ移動の最中に有名かつ結構いったことのある店は紹介しようかなと。

と、いうわけで続きますが、気が向いたら本編に戻すかもしれません。


あと昨日珍しく私の作品にしてはアクセスあったのですが、どこかでリンクでも貼られたんでしょうか?いまいちわからないので知っているかたいればコメントして教えていただけると助かります。

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