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冷蔵庫荒らし

 ハニーのプリンがなくなった。

正確には私にサプライズのために寮の冷蔵庫にしまっていたプリンがなくなったのだ。

ここ最近、寮の冷蔵庫にしまっている食べ物がなくなる事件が多発していた。

犯人は未だに不明。

今日に限っては3日連続となる。

そこで私は探偵団を結成すべくハニーに駆け寄った。

そうするとハニーは

「そんなこと出来るわけ無いじゃない。仮にも神族。食べ物のことでごたごた言っていたら神族としての威厳が保てないわ。」

ハニーは雷神の娘だ。

仕方なく探偵団のメンバーになりそうな寮のメンバーを捜し求めた。

 

 まずは神族と魔族のカップルの部屋だ。

部屋を訪ねると魔族のみすずちゃんが出てきた。

部屋を訪れた理由を告げると、

「ちょっと待ってね」

そう告げるとそそくさと部屋の奥に入った。

しばらく待っていると扉が開きみすずちゃんが困ったように話し始めた。

「ごめんなさいね。あきらちゃんが言うにはそんな小さなことで騒いだら神族の威厳に関わるって。そうなると私も協力することが出来ないの。あきらちゃん、一人では何も出来ないから。」

全く神族って奴はそんなに威厳が大事なのかねと私は思った。

そう思っていたら、みすずちゃんの顔つきが少し変わり真顔でこう続けた。

「でも、あなたの恋人が参加するなら話は別よ。あの娘には負けられないから。」

みすずちゃんとハニーは仲が良いわけではない。

むしろ仲が悪いと思う。

別に二人の間に何かがあったわけではない。

元来、神族と魔族は仲が悪いらしい。

ましてや1組の最強と2組の最強である。

仲が良いわけがない。

これ以上は話すと長くなるのでその話はまた今度と言うことにしておく。

そこで疑問がわくのはじゃあ、なぜ魔族であるみすずちゃんが神族のあきらちゃんとつきあっているのかという疑問だ。

その理由は簡単だった。

みすずちゃん曰くたまたま好きになった人が神族だったと言うことだそうだ。


 断られたので、仕方なく別の部屋を訪れることにした。

そこは人形族の娘たちの部屋だった。

扉から出てきた娘につまびらかにことの経緯を説明したら二つ返事で了承してくれた。

協力してくれたのは日本人形の和歌山わかやま 琴祢ことねちゃんとフランス人形の西出にしいで 綺羅蘭きららちゃん。

もう一人の人形族、人形ひとかた 理科りかちゃんは体調が優れないと言うことで協力はもらえなかった。

しかし、ここで種族のギャップに戸惑ってしまう。

そもそも人形族は食事をしない。

彼女たちは食べ物を冷蔵庫に入れることも知らなかった。

そもそも冷蔵庫というものを今、初めて見たという。

食事というものを一から順に教えると、きららちゃんが

「そういうものがあると言うことを風の噂で聞いたことがあるわ」

横でことねちゃんがうんうんとうなずいていた。


 ここで人形族の説明をしたい。

人形族は基本無口でおとなしい性格をしてるそうだ。

彼女たちも基本無口でおとなしい。

しかし、りかちゃんは例外である。

彼女は基本おしゃべりで暇さえあればしゃべっている。

さらに身体能力は目を見張るものがある。

ちなみに人形族は圧倒的に女性が多いそうである。

その比率は9:1である。

 

話を戻すと、ことねちゃんときららちゃんはとにかく仲が良い。

冷蔵庫荒らしの捜査をしているとことあるごとにきららちゃんに何かあると

「大丈夫かい、きらら」

とことねちゃんは手を差しのばす。

私の目から見るとイチャイチャぶりが半端ないのだ。

しかし、皮肉交じりにそのことを茶化すと彼女たちはきょとんとした。

どうやら人形族には恋愛感情という概念が理解できないないらしい。

彼女たちはほかの人たちからもそう言われるが、それがいったいどういうことなのかと真顔で尋ねてきた。

私は返答に困り、とっさにすずちゃんのことを聞いた。

「え〜と、りかちゃんの具合はどのくらい悪いの?」

そうしたら、なぜか彼女たちはおろおろうろたえ始めた。

その様子を見て私は

「え〜!!そんなに具合が悪いの。もしかして命に関わるの?だったら、速く先生に連絡しなきゃ。」

さらに彼女たちはうろたえた。

そして、ことねちゃんは覚悟を決めたようにこう告白をした。

「え〜と、ごめんなさい。多分、私たちは冷蔵庫荒らしに心当たりがあるの。」

いきなりのことで何のことか分からない。

そして、後の話は自分たちの部屋でするからと言うことでことねちゃんたちの部屋に行くことにした。


 部屋の中に行くと元気だが泣きじゃくっているすずちゃんが居た。

りかちゃんは

「ごめんなさい、冷蔵庫荒らしの犯人は私です。」

そう言うとさらに激しくき泣き始めた。

私が理由を聞くと

「その前に話をしなければいけないことがあります。私は人形族ではありません。人形族に育てられた人間です。この二人には大変お世話になっているのですが、彼女たちは食事に興味がありません。なので、昔から自分で食べ物を調達していました。私は周りにも人形族と思われているのでおおっぴらに食事をとることが出来ません。かといって、生きて行くには食べなければいけません。毎日、ばれないように冷蔵庫から食べ物を盗んでいました。」

彼女は苦しんでいたんだと思い、私は彼女に同情した。

私は

「別に隠す必要は無いよ。人間だってことは。恥ずかしいことじゃないしおおっぴらにすれば良いと思うよ。その方が楽だと思うし。」

りかちゃんは安心した顔に戻った。

そうすると、きららちゃんは申し訳なさそうに

「ごめんなさいね。あなたが人間で初めて入学した唯一の人だと思われていたけど、もう一人居たの。」

思わず、謝られるところはそこじゃないと心の中で思った。


 でも、疑問が残る。彼女の人間離れした体力だ。体力測定ではほかの異人さんと渡り合い、ソフトボール投げでは10キロもの長距離をたたき出した。

本人は人形族のコミュニティで鍛えられたからではないかと答えていたが、それにしては納得が出来ない。

本人もその辺の理由は分からないようだった。

もしかすると神族か魔族の血を引いている娘かもしれない。





 

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