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お昼休憩〜体力測定(午後)〜

 突然だが、私は委員長の種族を知らない。

私だけが知らないわけではない。

クラス中のみんなが知らないのだ。

というのも、最初の自己紹介の時みんな種族と名前を答えたが委員長の自己紹介の時、担任のかぐちゃんは

「あなたは種族を答えなくていい。みんなが引いてしまうかもしれないから。」

そう言うと、クラス中がどよめいた。

はっきり言って今の発言の方がドン引きである。

その日からクラスの中では委員長最強説が流れています。


 今はお昼休憩です。

午前中の体力測定でどっと疲れている。

人間では考えられない記録の連発。

驚愕と感激の連続。

いやはや私には刺激が多すぎます。

そして今、私にはやるべきことがあります。

なので、ルームメイトのハニーが作ったお弁当を(今日は珍しく作ってくれました)早口で食べ今あかりちゃんと一緒にある人を尾行ています。

その人は委員長です。

委員長は謎が多い人です。

種族が分からないのは冒頭で言いましたが、委員長の食事シーンを私は一度も見たことがありません。

私だけではなくクラスの誰もが見たことないそうです。

食事をしない種族も居るので、私が委員長に聞いてみると

「食事ぐらいするに決まっているじゃない。ただ、食べているところは誰にも見られたくないの。必ずドン引いてしまうから。」

そう言われると、ますます興味を持ってしまう。

委員長は購買に立ち寄り、クロワッサンを二つとイチゴミルクを購入したようだ。

そうすると、辺りをきょろきょろし、人気ひとけのない暗いところへ行った。

やっと、落ち着いたように穏やかな顔になり地べたの上に女の子座りをした。

「食事の時が一番の幸せ」

彼女がそう言うとクロワッサンの袋を開け、中身を膝の上に置いた。

次にイチゴミルクのパックを全開にし、中身をさっき開けた袋の中に入れ始めた。

私が彼女の行動に疑問が浮かんだとき、彼女はイチゴミルクで満たされた袋の中に直に右手を入れた。

「え!!」

と思わず声を出したとき、彼女は持っていた袋を落とし中のイチゴミルクをこぼした。

そして

「誰か居るの」

と大声で叫び始めました。

私たちは観念し彼女の前に現れました。

「な〜んだ、あなたたちなの。え〜と、どこから見ていたのかしら。そして、何でこそこそしていたのかしら。」

私たちはつまびらかにその理由を話しました。

そうしたら、彼女は笑って

「別に内緒にしているわけではないの。ドン引かないで居てくれたら助かるわ。私の種族は液状生命体。あかりちゃんは光学生命体だったかしら。あなたと同じでとてもレアな存在なの。私の種族は世界で3人しか居ないと言われているわ。まあ、異世界にはたくさん居るようだけど。それと私の食事の仕方は右手から食べ物を吸収するの。」

そう言うと左手で持ったクロワッサンを右手に押し込み始めた。

そうすると、だんだんクロワッサンが右手に吸収され始めた。

そして委員長は恍惚とした顔に替わった。

「基本、私は何でも吸収することが出来るのだけど、人間が食べるものが一番おいしいと思うの。私の右手には人間と同じ味覚が備わっているの。甘味、うま味、塩味、苦味、酸味の全てを感じることが出来るの。ただし、私には痛覚が存在しないから、辛味などを感じることは苦手なの。私の右手には温度感覚がないから熱々のものでも直にさわれるのよ。でも、体の中は人間と同じように温度を感じることが出来るから食事を楽しめるの。でも、溶かして食べるから食感は感じることが出来ないけど。あと、人間の食べ物でも許せないのがざるそばなどの麺とつゆが別れているやつ、あれなんでいちいち分けているの。箸などの食器を持つことが出来ないから麺をつゆにつけるという動作が非常にめんどいのよね。」

彼女は機嫌が良いのか、それとも今まで内緒にしていた鬱憤がたまっていたのか堰を切ったように話し始めた。


 こういう機会もなかなかないのでついでに今まで触れにくかったバケツについても聞いてみた。

「これは私の寝床なの。まあ、あなたにとってのベッドみたいなもの。何で、携帯しているかというと私が疲れているときや調子が悪いとき、つまり今の形が保持できないときに入る必要性があるからなの。私が液状の時、強力な消化液がむき出しになるの。それを入れる器がバケツなの。このバケツは市販のバケツだけれど、特殊な溶液が吹き付けられていて絶対に私でも溶けない仕組みになっているの。もし私がこのバケツ以外のところで液状になってしまうと私はいろんなところに浸潤しあらゆるものを溶かし1億人分の致死量の毒ガスを発生させ死んでしまうわ。だから、この星のためにもこのバケツが必要なの。でも普段の私の力は人間と大差ないのよ。」


 とんでもないことを聞かされてしまった。

確かにある意味ではクラス最強だと思う。

そう思いながらお昼休憩が終わりを告げた。


 午後の体力測定は私と委員長だけで行われた。ちなみに委員長の名前は液野えきの 慈恵ちかえ

しかし、委員長と呼び慣れてしまったのでこれからも委員長と呼ぶことにします。

担任のかぐちゃんが

「これから体力測定を始める。といっても二人だけだがな。それから、液野(委員長)はその体の状態を保持したままで受けろよな。それも訓練だと思って。まあ、液体状態になったら対処のしようもないが。ハハハ。」

冗談では済まないと私は心の中で思った。

大体、私は体力測定が苦手だ。

運痴の私には苦痛すぎる。

と思っていたら、委員長も同じことを言い出した。

お互い運動は苦手のようである。

まあ、委員長は体の状態を保持したままという条件があるから分からないでもない。

でも、私は運動も出来ないただの人間。

なぜ、この学校に受かったのだろうかという疑問がまた浮かんできた。

という不安を抱えながら、私たちの体力測定は終わった。









 



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