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体力測定〜午前〜

 ちょうど、入学から半月が過ぎた頃、今日もいつもと同じ日が続くと思っていた。

たいそうな出だしで始まったが、何のことはない。

体力測定だ。

今日の始業の時間に担任の天使のかぐちゃんがいつもどおり、ずかずかと教壇に上がり、

「昨日、言い忘れていましたが今日は体力測定の日だから全員ジャージに着替えなさい。」

「え〜!!」

と教室中どよめいた。

我が校では体力測定の日は全校を上げての行事である。

当然その日の授業は中止。

偶然、今日は体育のある日だったのでよかったがなかったらどうするつもりだったのだろうか。

という疑問が頭をもたげてきたとき、

かぐちゃんが

「え〜と、記録係に作道さくみちさん(私)、光風みつかぜさん(あかりちゃん)、そして委員長を任命します。任命された人の記録は別枠で午後にとります。あなたたちは普通の人と違うので」

どうやらこの学校では人間である私の方が特別な存在のようです。

まあ、あかりちゃんは人格を持った立体映像なので分からないでもない。

詳しくは光学生命体と言うそうだけど詳しくは分からない。

ただ、教室にある机や椅子、教科書や文房具、彼女が手にするあらゆるものが立体映像でまかなわれていることを知っている。

彼女は実在するものを触れることが出来ないのだ。

普通の体力測定でも測れないであろうことは容易に想像がつく。

事実、このあと、あかりちゃんの体力測定免除が告げられた。

しかし、意外なのが委員長である。

彼女はほかの異人さんと同じ扱いを受けないのかと疑問を持った。

それどころか委員長が別枠と知ったクラスメイトたちがどよめいていた。

「人間の、かわいそう」

「殺されなければ良いけど」

「やっぱり、私たちとは別次元なんだ。」

そういった声が聞こえてきた。

そうすると私は普段はおとなしくて優しい委員長がちょっと怖く見えてきた。


 みんなジャージに着替え朝礼に向かうように整列し、校庭に向かった。

どうやら私たちが最後のようである。

担任の天使のかぐちゃんが校長先生にこっぴどく怒られていた。

いつもは上からのかぐちゃんがめっちゃ小さく見えた。

校長先生は

「担任の先生に従って、正しく測定すること。体力測定を行う場所にはシールドが張っているので遠慮なく全力を出してほしい。」

朝礼が終わり、担任に連れられて測定場所に向かった。

それにしても今日は炎神と水魔のカップルがいつも以上にいちゃいちゃしている。

前回、紹介し忘れましたが、炎神の方が火口ひぐち 暁空あきらさん、通称あきらちゃん。

水魔の方が水瀬みずせ 泉涼みすずさん、通称みすずちゃんです。

 

 体力測定の項目は握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、持久走(1000メートル)、50メートル走、立ち幅跳び、ハンドボール投げです。

記録を測定する私には驚愕の一途だった。

まず、測定する器械が見たことのないものばかり。

そして、人間ではあり得ない記録の続出。

50メートル走なんか平均記録が1秒。

持久走に至っては平均20秒である。

そんな中でもあきらちゃんはダントツの早さであった。

でも、あきらちゃんはあかりちゃんに

「どうだ、めっちゃ速いだろう。」

と自慢していたら、あかりちゃんは

「私の体の構成は光が中心なので、本気を出せば秒速約3億メートルは出せますけど」

と真顔で返され、あかりちゃんはきょとんとしていた。

どうやら意味が分からなかったよう。

まあ、あかりちゃんには悪気はないのだけど(もちろんあきらちゃんも分かっています)

最もびっくりしたのが、ハンドボール投げです。

校庭では距離が足りないと言うことでシミュレーション室で計測しました。

外だと近隣に迷惑がかかると言うことで。

みんな平気でキロメートル単位の記録を出します。

その中でも人形族のすずちゃんがダントツの10キロメートルの記録を出しました。

本来、人形族はパワー系ではないそう。

ほかの2人の人形族もびっくりしてるぐらいだから。

「すごいね、すごいね」

と3人で手を取り合って1つの単語を連発してすずちゃんを称えていました。


そうこうしているうちに全ての項目の測定が終わり、お昼が来ました。

そのお昼の時間に私は委員長の驚愕の姿を見たのですが、それは次回にすることにします。







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