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机ゴーレム

 やっと夏休みが終わった。

今日から二学期です。

確かに夏休み鼻楽しいことが一杯有りました。

私も実家に帰りましたし、地元の友達とも一杯遊んだ。

そう言っても最初の頃は私が珍しい学校に通っているから質問攻めでしたが。

あ、そうそう、神界にも行きました。

ハニーの故郷でもある雷神の世界。

とても刺激的でした。


 でもそんな夏休みでしたが私はクラスメートや学校のみんなに会えないことがかなり寂しかったです。

ようやくその寂しさから解放されます。

昨日、久々に寮に戻り、今日新学期が始まります。

心機一転です。


二学期初日は授業は半日で終わります。

その内容はクラスメートそれぞれが夏休みの出来事を簡単に報告。

そして担任のかぐちゃんの二学期に向けてのありがたい言葉。

それで今日の授業は終わります。


 放課後、私は担任のかぐちゃんに呼び止められた。

かぐちゃんは

「新学期早々、悪いけど1年の木学きがく 麗桜うららの所に行ってくれないか。

作道さくみち(私)はこの学校にいる間いろんな種族に会っていて欲しいんだ。

木学きがくについては私でも知らない事が一杯ある。

そういった珍しい種族に一杯会い一杯勉強して欲しい。

頼んだよ」


 そう言われて私は彼女に会うことになった。

言われたからではないのだが久しぶりにうららちゃんの顔が見えると思ったらなんとなく顔がほころんだ。


 ちなみにうららちゃんこと木学麗桜は机ゴーレムです。

机ゴーレムというのはあまり聞き覚えがないのですがあくまでも本人の自称です。

私は机に付いた付喪神の一種だと思っています。

彼女は机として100年間生きてきてその後に自我が芽生えたのだと言っていました。

自我が芽生えて15年、ようやくこの学校に入学してきたのです。


 そうこうしていると私はうららちゃんの教室の前に来ていた。

うららちゃんの教室にはもう誰もいなかった。

みんな寮に帰ったのだ。

ちょっと待って、私がここに来た意味は?

そう思っていると突然彼女が私に飛びかかってきた。

うららちゃんだ。

飛びつくやいなや

「寂しかったよ。

夏休みの間、誰も来ないんだもん。

うちは部活もないじゃん。

先生たちは学校には来ているけれど職員室に缶詰状態。

教室には誰も来ないんだもん。

普段でもみんなが寮に帰ればひとりぼっち。

確かに教室は居心地が良いけれど1ヶ月以上誰も来ないなんて寂しいよ」

私がヨシヨシと彼女をなだめていると彼女は今までの鬱憤が堰を切ったように話し出した。

「そりゃぁ、クラスの娘とも話したよ。

でも、1ヶ月以上のフラストレーション半日という時間じゃ埋まらないの。

一杯話したいことがあるって担任も先生に話したらみんなやることがあるし私も忙しいからって言ってそれでも私が食い下がるものだからあなたを紹介されたの。

あなたにとっても勉強になるからって。

だから今日はとことんしゃべらせてもらうわ。

だから今日は話し相手になってね」

私は体の良いおしゃべり係に任命されていたようだ。


 私は

「別に話し相手は良いのだけどもうすぐお昼だからお昼ご飯を食べてからで良いかしら」

と彼女に聞いた。

彼女は

「あ、そうか。

人間って面倒だね。

食事をとらなきゃ行けないから。

私は別に食事をとらなくても良いから。

あ、そうだ、食べながらでも私の話を聞いてよ。

それぐらいフラストレーションがたまっているんだから」


 私は売店でいくつかのパンと清涼飲料水を買って彼女の暮らすに戻った。

そう、食べながら話を聞くことに同意したのだった。


 彼女は話し始めた。

「夏休みも最初は楽しかったのよ。

あかりちゃんもいたし」

あかりちゃんとは光学生命体の種族で簡単に言うと立体映像が自我を持ったようなもの。

彼女とあかりちゃんは寮に戻ることもなくそれぞれ教室で暮らしている人たちだ。

話を戻すと

「でも一週間も経つとあかりちゃんが旅に出ると言い出したの。

彼女は一瞬で何処にでも行けるから。

そうしたら私は教室でひとりぼっち。

帰る家なんてないし、そもそも机だからそんなに動きたくないしね。

私のホームグラウンドは学校そのものだから。

でもじっとしていられたのはそれから一週間ぐらい。

自我を持つ前は別にどうってことはなかったんだけどやっぱりうずうずしてきてね。

ちょうど教室を通りかかった先生に頼み込んで教室の鍵を開けてもらったんだ。

ちなみになぜ教室の鍵がかかっていたかというとセキュリティ上の問題なのだそう。

用がある時や教室を出たい時は先生方に連絡するようにと夏休み前に言われたの。

一応念のため電話も教卓の上に置いてあったんだけど」


 彼女は続けて

「それからは学校を冒険し放題。

一応先生方がいる昼間に動くことにしているのだけど。

音楽室に行っていろんな楽器を演奏したり、美術室に行って絵を描いたり。

図書室に行って全ての本を読破したり。

机の状態でプールに浮かんだり。

一応言っておくけどちゃんと先生の許可は取っているからね。

一応夏休みは満喫していたから。

誰にも会わないこと以外は」


 彼女はよっぽど寂しかったのか私にいろいろと話してくれた。

明日からは通常の授業に戻る。

彼女も寂しい思いをしないだろう。


 結局、夕方まで彼女はずっと話し続けていた。

もちろん、私に気を遣って何度も休憩を入れてだが。

そして彼女が話し終わると元の姿の机へと戻っていった。

机に戻った彼女は

「今日はありがとう。

私の話し相手になってくれて」

と感謝を述べた。


 私にとっても今日は久しぶりに疲れたが有意義な1日だったと思う。




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