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生きたがり

 今日、放課後いつものように授業が終わり寮に帰ろうとしたところ担任のかぐちゃんに呼び止められた。

作道さくみち(私)、今日お前に会って欲しい人がいるんだ。

以前、いろんな種族の人に会って欲しいと言ったよね。

私も忘れてたわけじゃないんだ。

いろんな種族の人間を紹介するのを。

今日、たまたま都合のいい、暇な奴を連れてくるからそいつの話を聞いてやって欲しい。

そいつがどういった世界で生まれ、どのような生活をしてきたのかを。

取りあえず教室で待っていてくれ」


 そう言われ、今かれこれ30分は経つ。

教室で待っているのだが誰も入ってこない。

人払いしているようで私以外教室にいないのだ。

しばらくすると「すいません」という声がし、誰かが入ってきた。

その女性はとても美しく肌は青白かった。

しかし、どこかで会ったような気がした。

その女性は

「私は先生から言われあなたに会いに来ました。

なんか一番暇そうだからって。

別に暇じゃなかったんですけどね」

と優しく微笑みかけた。

続けて

「初めまして。

私の名前はとくがさき 菊音きくねと申します。

こう見えてアンデッド、分かりやすく言えばゾンビです。

そういえば文化祭でお会いしたので初めてじゃありませんね」

思い出した!!

文化祭のお化け屋敷で委員長に命乞いした人だ!!

彼女は続けて

「なんか私の出自(でじ)を知りたいとのこと。

そんなこと言われるのは初めてだわ。

それにあなたはこの学校唯一の人間、私も興味があるわ

私の話を聞いた後じっくり人間の話も聞かせてね」

と言うと私にまた微笑んでくれた。

彼女は美人さんなので私にその気が無くてもドキッとする(もちろん、私にはちゃんと決まった人がいます)


 そして彼女は語り始めた。

「私はおよそ18年前、この世に生まれたの。

元は人間だったらしいけれど生前の記憶は無いの。

だから、人間だった時の暮らしは分からないし元の名前も知らないの。

ただ、本能的に生きたいという気持ちだけは持っていた。

一応言っておくけどゾンビが人間を襲うのは映画の仲だけの話、実際に襲う人はまずいない。

でも世の中には偏見があるから私たちゾンビは生きにくいの。

だから自らをゾンビとは言わずアンデッドと言うの。

世間ではそういった方が通ると思うわ。

話を戻すと私は生まれてすぐアンデッド保護施設に収容されたわ。

そこでは私たちに人権があること、勉強が出来ること、自由に過ごしていいこと、いろいろと学んだわ。

保護施設に収容されている人たちもいろいろな人がいて、全身傷だらけの人、生前の記憶がある人、私みたいに記憶がない人、それに子供からご老人まで。

バラエティに富んでいるの。

私はその施設の仲で15年間育ち、この学校に入学したの。

残念ながらこの学校の他の人たちみたいに特殊能力は持っていないのだけど。

私たちはほぼ人間と変わらない存在だと思っているの。

死んでいること以外は。

そうそう、私が人間と違う点がもう少しあるわ。

これは全てのアンデッドに当てはまるわけじゃないの。

いわば私の個性みたいなものよ。

それは私は眠れないし食べることも出来ないの。

水分は摂っているけどね。

眠ることが出来ないのは眠ると死んでしまいそうな気がして怖くてね。

もう死んでいるんだけどってツッコミは止めてね。

食べることが出来ないのはもしかすると生前毒を盛られたのかもね。

それで固形物は摂取できないのかも。

液状のものは摂取できるんだけどね。

私は体の何処を見ても傷跡がないの。

だから生前毒で死んだんじゃないのかと思うの。

他殺か自殺か分からないのだけど。

生前の記憶が無いからね。

自殺だとしたら,生前死にたがっていた私が今は生きたがっている。

皮肉な人生よね。

実際死んでいるのだから、眠らなくても食事を取らなくても死ぬことはないのだけど。

今はこの世を謳歌しているわ。

寝ることはないから24時間、暇な時は図書館に入り浸り。

図書館のある程度の本は読み尽くしたわ。

もう同じ本を2周も3周もしているの。

ゲームだって廃人プレイはお手の物。

だって眠らないから。

おかげで学力もゲームのランキングもトップクラス。

今はとても楽しいの。

そういえばあんたは賢人会の候補らしいわね。

賢人会は特殊能力を持たない私たちにとっては憧れのエリートコース。

実は私もその候補の1人なの。

この学校には候補が4人いるらしいの。

私とあなた。

それとあと2人。

近く勉強会を開くって私を連れてきた先生が言っていたわ。

これから長いつきあいになりそうね。

これからもよろしくね」


 私はいろいろな世界があるのだなと感心しつつ、担任のかぐちゃんは大事なことをなぜこうも伝え忘れるのかなとあきれていた。


 それから私はアンデッドのきくちゃんに私の出自(でじ)やハニーとのこといろいろと話した。

きくちゃんには恋人がいないのでうらやましいと言われてしまった。

きくちゃんは上級生ながらそういう感じがせず非常に気さくで頼もしい人だと思う。

私は先輩についていきいろいろと教えてもらいたいと思った。

特にこの学校のこと、いろいろな種族のことを。

また賢人会候補の残りの2人もどんな人か会ってみたい。

もう会っているらしいのだが、話が終わった頃に入ってきた担任のかぐちゃんはそう言っていた。


 とにかくこれからの学園生活楽しみが出来ました。




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