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ダメ天使

 いつもの放課後、私は今日もいつものように帰ろうとしていた。

やっとハニーに会えると気もそぞろに帰り支度をしていると廊下の方から

「この教室に作道さくみち 進葵たまき(私)と言う人はいないかしら。」

と大きな声が聞こえてきた。

私は誰だろうと思い廊下の方へ向かった。


 廊下に出てみると2人の女の子が私をにらみつけていた。

どうやら新入生らしい。

しかし心当たりがないので私は思いっきり聞いてみた。

「え〜と、私に何の用かしら。」

そうすると1人の女の子がいきなり

「あなた生意気なのよ。」

と罵倒してきた。

その娘は続けて

「私は天使の中ではかなり頭のいい方なの。

ていうか、同年代の中の全種属の中で一番頭がいいと思っていたわ。

それがこの学校にきてビックリしたわ。

あなたという存在にね。

この学校の生徒の中で一番頭がいいのはあなたらしいじゃなの。

私を抜いてね。

人間ごときがなぜ天使の私より頭がいいことになっているのかしら。」

そんなこと言われても私は困るんだが。

そんな困った私を見ていたようでもう1人の女の子がすかさずフォローしてきた。

「ごめんなさいね、この娘、礼儀を全く知らないの。

そのくせ天使としてのプライドはめちゃくちゃ高いんだから始末に負えないんだけど。

天使としての能力もうんと下なのに一端の天使気取り。

何せ実力も無いのに自分は偉くなきゃイケないと思い込んでいる。

一般常識も無いのに。

そういう娘だから勘弁してね。」

おいおい、この娘めちゃくちゃ毒舌だなと思っていたら隣の娘がめちゃくちゃ狼狽うろたえていた。

最初に威勢の良かった子はどうやら打たれ弱いようだ。


 しばらくするとようやくその娘は正気を取り戻し私にこう自己紹介を始めた。

「私の名前は楽野らくの 天祢あまね

この春に入学してきた新入生よ。

私は天使の世界でも珍しい人間と天使のハーフ。

そのおかげで天使の世界に住んでいるんだけど天使としての能力はほとんど無いの。

だからこの学校にはあなたと同じ学力優待で入ったの。」

ここまで言うと隣の娘がこの娘の話を遮って話し始めた。

「お嬢様はとても不憫な娘なんです。」

「ちょっと、あなた今までお嬢様なんて言葉使ったことないじゃない!!」

「お嬢様とため口で話せるのは私の特権なのです。

他の人たちにはやはりお嬢様だと言うことを知らしめないと。」

「ていうか、あなたの方が私の家柄よりもあなたの家柄の方が格上じゃないの!!」

「いいえ、家柄なんかは関係ありません!!

私は一生お嬢様の面倒を見ると心の中で決めたのですから。」

「そんな話、今初めて聞いたわ!!」

なんか言い争っているみたいだ。


 落ち着いたところでその人はお嬢様を差し置いて話し始めた。

「まず、自己紹介をしますね。

私は西極さいごく 優陽ゆうひ、お嬢様にお仕えするものです。」

隣の娘は不満そうだがそれにかまわず続けて

「お嬢様はさっき申し上げたとおり,私たちの世界では珍しい人間と天使のハーフなのですがそのせいもあって天使としての能力はほとんどありません。

そのせいもあってお嬢様は幼少時代とても苦しんでおられました。

みんなと同じじゃないと。

私たち天使は慈愛に満ちているとよく言われますが、それはいくつもの経験を積んだ大人の天使のことです。子供の天使は非常に幼稚です。

人間の世界と同じくいじめも差別もあります。

お嬢様はとにかく異端の天使だったのです。

私はとにかくお嬢様を守ってあげたかった。

その思いでお嬢様の身の回りの世話、彼女が天使としての能力が皆無なら私がお嬢様の分まで自分の能力を上げてお嬢様を守ってあげたいと思ったのです。

まぁ、そのおかげでお嬢様は自分のことも出来ないダメ天使になっちゃったんですけどね。」

私は結果ダメじゃんと心の中で思った。

彼女は続けて

「でもお嬢様は天使としての能力が皆無な分、学力はどの天使にも負けないほど優秀になられました。

おそらく全種属の中でもトップクラスに。

それが突然、あなたという存在が出てきたのです。

しかも人間。

そのことがお嬢様のプライドをズタズタにしたと思います。

あなたにはその責任を取ってもらいたくここに参上したまでです。」


 私に対する一方的な恨み、もはやイチャモンレベルである。

私が困っていると担任のかぐちゃんが割って入ってきた。

「話がついたかと思ってきてみたら思った以上にこじれているな。

私は楽野らくのが将来の賢人会入りの候補だから作道さくみち(私)にいろいろと教えを請うように言ったはずなんだけどな。

主旨が伝わってなかったみたいだな。

作道さくみち(私)には迷惑をかけたな。

私からこいつらによく指導しておくよ。

それとこの学校では人間ごときだとか人間風情とか言う言葉は禁止な。

場合によっては退学処分になるから。

今回は見逃しておくけどな。

この学校はあらゆる種族が仲良くすることを目的とした学校だ。

今後、けんかをふっかけるようなことはするな。

あと、作道さくみち(私)はこの2人の面倒をよろしくな。」

全てを言い終えると担任のかぐちゃんは去って行った。


この後、(担任の)かぐちゃんの言ったことがよっぽど堪えたのか2人に泣いて謝られた。

私はそこまでじゃないと思っていたのでこのシーンがよっぽど堪えた。

そしてこの2人の学園生活での相談にもこれからのることになった。

一年先輩として教えられることは教えていき学ぶべきことは一緒に学んでいこうと思う。


しかし今日はとても疲れた1日だった。



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