机
もう私が入学してから1年が経つ。
思えばこの1年、いろんなことがありました。
私が人間として初めてこの学校の門をくぐった時、そこには神族や魔族、妖怪、光学生命体や液状生命体、人形族、とにかくいろいろな種族に出会うことが出来た。
そして、外見は違えどみんな中身は私たちと同じ女子高生だと言うことがわかった。
そして、ルームメイトのハニーとの仲も私なりに進展できたと思う。
今年もいろいろな種族に出会いたい。
そういえばハニーのクラスの人たちやハニーの友達とももっと話したい。
私のクラスの人たちとももっと交流しなきゃ。
上級生の人たちや今年入ってくる新入生の人たちとも話したい。
担任のかぐちゃんからせっかくこの学校に入ったのだからいろいろな種族の人たちとの交流をしなさいと厳命されているが、かぐちゃんの厳命がなくてもいろんな娘たちと知り合いたいと言うのが今の私の願望だ。
ただ、あまりに仲良くなりすぎるとハニーが嫉妬するのでほどほどにつきあわなければならないと私は肝に銘じている。
さて、今日は入学式です。
今年もこの学校に新たな美少女たちが入ってくるのだ。
神族や魔族、妖怪、天使と言ったあらゆる種族が新たに入学してくるのだ。
ちなみに私たちが3期生に当たるのでこの娘たちは4期生と言うことになる。
うちの学校は少数精鋭で1学年2クラス、現在4学年まであるので計8クラスあることになります。
私たちの学校は高校、大学一貫教育なので最短7年間この学校に在籍することになりますが、今年で創立4年目なので学年数が少ないのはそのためです。
そして私はと言うと生徒会の要請を受けクラスメートと一緒に入学式のお手伝いをしています。
私たちの学校の入学式は結構手が込んでいます。
何せ式の準備に一週間もかけるのですから。
そのため、在校生全員が借り出されます。
そして、私は生徒会直々に1年生のリーダーを命じられました。
とにかく私はこの大役に張り切っています。
しかし、周りからはカラ回っていると言われてますが。
そして、今私は新たな問題に直面しています。
それは校庭にポツンと置かれている1つの机です。
最初、何らかの意図を持って置かれているものだと思っていました。
しかし、生徒会や教師の方々に聞いても誰1人、校庭に置かれている1つの机のことを知りません。
いったい何の目的で机を校庭のど真ん中に置いたのか真意がはかりかねます。
これから入学式だというのに新入生が入ってくる前にこの机をどかさなければなりません。
いったい誰が何の目的で机を1個だけ校庭に置いたのか、はたはた迷惑でしかありません。
「はぁ〜」と私がため息をつき、その机をどかそうとした瞬間
「触らないで!!」
とどこからともなくかわいい声が聞こえてきました。
私は慌てて周囲を見渡しましたがそのような声の主は見当たりません。
すると、
「入学式より早い時間に勝手に来た私も悪いけど、私ははこの学校の新入生です。追い出さないで下さい。」
私はもう一度周囲を見渡したが、やはり該当する人物はいない。
何より言っていることに思い当たる節もないのだ。
とすると困ったような声で
「え〜と、取りあえずあなたが触ろうとした机の方を注目して下さい。」
その声に従って私は改めて机の方をじっくり見た。
どうやら声は机の方から聞こえるようだ。
机の荷物を入れる場所からスピーカーのように声が流れている。
「ちょっと待って下さい」
とその声が流れると次第に机がひとりでに変形を始めた。
車が変形してロボットになるおもちゃをご存じだろうか。
男の子のおもちゃで1台の車が変形してロボットになるのだ。
そして、今まさに同じような状況が私の目の前で起きている。
机がものすごい勢いで変形を始めているのだ。
その様はルービックキューブのチャンピオンが6面全部を一気にそろえているような感じだ。
気になるのは時々、
「あ、間違えた!!」「何でこうなるの!!」「あ〜!!面倒い」
と言う声が聞こえてくるのだ。
どうやら変形はとてつもなく複雑なようだ。
変形に要した時間はおよそ10分かかった。
そして、そこには1人の美少女が立っていた。
あの机からどうやって美少女に変形したのかはよく分からない。
目の前で見ていたのに理屈が分からないのだ。
そしてその美少女は私にこう自己紹介をした。
「私の名前は木学 麗桜。今年の新入生の1人です。一応、机ゴーレムという種類なんだそうです。机ゴーレムというのは私にもよく分かりませんが。私はこれからこの学校にお世話になります。今後ともよろしくお願いします。先輩。」
どうやら今年も楽しい1年になりそうな予感だ。




