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フクロウ

 夕方になり、キツネの先生の授業がようやく終わった。

しかし、まだ私には補習の授業が残っている。

朝からレベルの高い授業に私はもうクタクタだ。

 

 夕方から来る先生はちょっと特殊なのだそうだ。

その先生はいわゆる夜行性で太陽の出ているときには起きていないらしい。

と言っても日光が苦手というわけではないらしい。

そして、時間になると窓から教室に入ってくるらしいということを言っていた。

だから、私は指定時間の5時ぴったりに窓を開けた。


 それから5分から10分ぐらい経った頃、その先生は急に教室に現れたのだ。

なんとなくボーッとしていたからなのか私はいつ教室に入ってきたのか分からなかった。

その人は私をしばらく観察した後、こう自己紹介をした。

「あなたがこの学校唯一の人間なのね。どんな娘かと思っていたら結構かわいい娘じゃない。(笑)改めて自己紹介するわね。私の名前はグレーティア・ノイナー。知っていると思うけど私たちが異世界の中には動物から知能を得て人型ひとがたへと進化してきた種族がいます。それはあなたもクラスの人たちを見てよく知っていることでしょう。神族、魔族、天使族だけではなく妖怪族、獣族、鳥族、魚族、昆虫族、人形族などこの統合された世界では様々な種族がいます。私はその中でも鳥族、つまり鳥から進化した種族のものです。」


 確かにこの学校にはあらゆる種族が存在する。

しかし、私の知らない種族も沢山いる。

そういった種族との出会いもこの学校に入った私の使命でもある。

そんなことを考えているとこの先生もキツネの先生と同じように愚痴を言い始めた。


 「この学校の理念も非常に素晴らしいと思うわ。でもね、この学校自体も欠点があるの。もう既に聞いていると思うけどこの学校は人型ひとがたでないと入学できない決まりがあるんだけど、もう一つ入学資格があるの。それは昼行性出なければならないこと。夜行性の種族も私を含めて多数いるわ。そういった人たちに門戸を開いてないことが問題よ。」

この先生も大分不満がたまっているようだ。

このまま愚痴を言い続けるのかと思ったら、先生もはっとしたようで

「いけない、いけない。自己紹介を続けるわね。私は鳥族の者と言ったけれどもその中でもフクロウから進化したフクロウ族の者です。フクロウは夜行性なのでこの時間でもかなり早い時間帯。あなたたち人間の時間帯で言うと今の時間は朝の4時台か5時台と言ったところね。だからまだ眠たいの。でも有能な人間がいると聞いたから私もワクワクしているわ。」

とても楽しそうに話す先生だ。

「そうそう、私の翼を見てみる?」

と言うと先生は私に背を向けた。

その羽はとても大きく、そしてフクロウの羽そのものだった。

「あ、そういえば私が教室に入ってきたのが分からなかったみたいだけどそれはフクロウの特製そのものの性よ。」

と言うと先生は一瞬で教室の後ろの方に異動した。

「どう、羽の音が全くしないでしょう。スピードはそんなでもないんだけどね。」

いやいや、かなり謙遜していらっしゃる。

「じゃぁ、そろそろ授業を始めるわね。私が担当するのは歴史、それもあなたがよく知らないはずの異世界の歴史。それも私たち動物族の歴史から妖怪族、神族、魔族、天使族。そうそう、あなたのクラスに人形族もいたわね。そういった歴史をさらっと5時間。つまり、10時まで授業するわよ。そういえば人間さんは夕ご飯を食べるんだっけ。食べながらでいいから授業を聞いてね。」

私はそんなに器用ではないと心の中でツッコみながら授業を聞くことにした。


 授業では異世界が必ずしもずっと平和ではなかったことを学んだ。

人間の歴史と同じで同じ種族同士で戦争が繰り返し起きていたこと。

人間の歴史と同じで同じ種族同士で差別問題があったこと。

そうして今の平和がいろいろな人たちの犠牲の上に立っていることを学んだ。

確かに今でも差別問題が残っている。

差別問題をなくすには自分を認め、他者を認めることが先決だと思う。

相手を自分と対等に認めなければ差別はなくならない。

相手を見下すことが差別やいじめの始まりだと思う。

それに自分自身を肯定的に認めなければ相手と対等的に渡り合えるはずがない。

私はこの5時間の長い授業でそういうことを学んだと思う。

口で言うのは簡単だがなかなか難しい課題だ。

私はこのことを肝に銘じて生きていこうと思う。


 そんなこんなで長い1日は終わった。

私は器用なことが出来ないのでこの5時間食事もせずに授業を聞いていた。

早く寮に帰ってハニーの手料理を食べたいと私は心から思った。

 

 

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