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人形族(前編)

 「人形は長年愛されると魂が宿り、その魂が一生を迎えると天国へと旅立ちます。その天国というのが私たちが育った故郷(ふるさと)なのです。」

ことねちゃんはそう語り語り始めた。


 私は今、人形族のことねちゃんときららちゃんの部屋に来ています。

担任のかぐちゃんにが言うには私がいろんな種族と知り合うことが使命であるということになっているらしい。

私も異人さんのことはあまり知らない。

そしていろんな種族の方々と知り合いたい。

だからこの機に乗じて人形族であることねちゃんときららちゃんに自分たちの種族の話をしてほしいと部屋に押しかけたのです。


 ことねちゃんは話し続けた。

「私たちは人形だけが住む世界にいます。

そこで平和に暮らしていました。

私たちは基本的に人間とそう変わりません。

少なくとも私はそう思っています。

飲食ができないのは仕方ありませんが。

(人間世界での)人形だったときの記憶はありません。

私は山の中できららと一緒に育ちました。

そこは自然豊かなところです。

この世界とあまり変わりません。

ただ、住んでいるのが人形だということです。

違うのは男女比率です。

1:9で圧倒的に女性が多いです。

もちろんこの世界と同じく虫や鳥、動物などが存在します。

それらはぬいぐるみなどではなく本物の生き物です。

もちろんぬいぐるみ族の方々も一緒に暮らしていますがこの人たちも私たちと同様に社会生活をしています。

草木も普通にあります。

海や川、もちろん山もあります。

人形族にも学校があって私たちはそこで勉強してきました。

ぬいぐるみの人たちも通っています。

学校もこの世界と変わらないものです、多分。

教科も行事もそう変わりません。

ちなみに小学校の修学旅行の時、初めて人間世界に行きました。

人間世界で一番驚いたのは食べ物に関する店が多いことです。

私たちには必要がないので。」

ことねちゃんはそう語り終えた。


 話している最中、きららちゃんはずっとことねちゃんを見つめていた。

私は心の中でことねちゃんを王子、きららちゃんを姫と呼んでいる。

人形族には恋愛感情を持たないと言うがどう見てもアツアツである。

しかしそのことを言うと2人に詰問されるので今は黙っている。

何しろ普段から恋愛というものはどういったものなのか質問されまくっているので藪蛇(やぶへび)なことはできない。

恐らく2人はつきあっているのかと聞けば軽く1時間は逆質問されることが目に見えている。


 ことねちゃんが語り終えるときららちゃんは嬉々としてことねちゃんのことを語り始めた。

「そう言えば小学生時代私が野犬の群れに囲まれたた時、琴音は勇気を持って追い払ってくれたの。

野犬と言っても三つ首の犬の群れに襲われてね。

あのときは死ぬかと思ったわ。

そのときにことねが偶然現れたの。

大人でも命を落とすほどのパワーを持つ野犬。

ことねは必死に私を守ってくれたわ。

あのときのことねは格好良かったわ。

私が困ったときはいつもことねが助けてくれたし。」


ことねちゃんが気恥ずかしそうな顔をしていた。


私はこの話を聞いてやはりあちらの世界では住んでいる動物の種類が違うのだなと思った。

そしてやはりことねちゃんときららちゃんはラブラブなのだと思いました。


 それから私は一番知りたかったことを聞こうと思いました。

人形族であるりかちゃんの出自(でじ)のことです。

彼女は明らかに人形族とは違います。

かといってことねちゃんたちが言う人間とも明らかに違います。

りかちゃんがどういった経緯で人形族として育てられることになったのか知りたかったのです。

私がそのことを聞くとことねちゃんが重い口を開けた。


続く






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