ホームルーム
秋も深まりつつある今日この頃、いつものように私は教室に登校してきたのだった。
そして、いつものように友達と談笑し、いつものように朝のチャイムが鳴った。
そして、いつものように担任のかぐちゃんの第一声から始まった。
「てめ〜ら、静かにしろ。今日は前から言ってある文化祭の出し物について話し合おうと思う。」
「え〜!?」
私たちは初耳である。
かぐちゃんはよく大事なことを伝え忘れることが多いなとあきれて聞いていた。
かぐちゃんはその様子を見て
「あれ!言ってなかったっけ?まあ、とにかく、このホームルームの時間を使って文化祭の出し物を決定するから。」
そう言うと、委員長を進行役に指名してかぐちゃんは教室の後ろの方へと向かっていった。
委員長はかぐちゃんの代わりに教壇に立ちコホンと咳払いをしてから進行を始めた。
「それでは、文化祭の出し物の希望を聞きます。希望のある人は手を挙げてください。」
まずは、人形属のことねちゃんが手を挙げた。
「私たちが本場の人形劇を演るというのはどうでしょうか。私たち人形族が演じれば本当の人形劇になりますし。」
委員長は額に汗しながら
「え〜とですね、和歌山さん(ことねちゃん)、このクラスには人形族は3人しかいませんし、クラスのみんながやれるものを推薦してくれるとありがたいのですが。」
と言った。
ことねちゃんは少ししょんぼりした顔をして座った。
その他にも映画やお化け屋敷などの案も出たが、どれもしっくりこないらしい。
文化祭の出し物の案が滞っていると、かぐちゃんがあるヒントを私たちに提示してきた。
「うちのクラスには初めての人間の生徒がいるんだ。それをいかした出し物を出せば良いじゃないか。」
それを聞いたみすずちゃんが
「そうだ、人間の世界ではメイド喫茶が流行っていると言うわ。メイド喫茶なんてどうでしょうか。」
私はこの提案にビックリした。
いやいや、確かに流行っているかもしれないけどそれは一部だから。
私は行ったこともないし、そんなに詳しくないのだがと心の中で思っていた。
しかし、私の反応とは裏腹にクラスメイトたちが
「それは良いわね、面白そう。」
「でも、ただのメイド喫茶じゃつまらないわね、和装メイド喫茶なんてどうかしら。
「良いんじゃない。じゃあ、メニューはどういうのが良いかしら。あまり手間のかからないものがいいわ。」
とトントン拍子で進んでいった。
しかし、メニューの話になると流れがピタンと止まった。
お店を出すなら、やはり人間の口に合うものがいいに決まっている。
どうやら、クラスメイトは人間の食べ物に関する知識が薄いらしい。
そして、私に意見を求めてきた。
私はメイド喫茶どころか普通の喫茶店にも入った経験がない。
私に意見を求められてもと思いつつ、ここで私がしっかりしなければメニューがとんでもないものになるかもしれないという責任感があふれてきた。
そこで私は次のように提案した。
「メニューはそんなに多く浮かばないけれど、小倉トーストなんていかがでしょうか。小倉トーストとはトーストしたパンにバターを塗りその上にあんこを塗ったものです。とても手軽で美味しいと思います。もう一つはコーヒーフロートはいかがでしょうか。コーヒーフロートとはコーヒーにソフトクリームをのせたものです。ソフトクリームは専用の機械が必要になりますがとても美味しいと思います。」
ここであきらちゃんが手を挙げて質問した。
「コーヒーにソフトクリームをのせるなんて、上のソフトクリームは溶けちゃいませんか?」
私は
「え!?コーヒーはホットじゃなくてアイスですよ。ホットだとあっという間に溶けちゃって何の意味もないですからね。」
と答えた。
ここで担任のかぐちゃんが声を上げた。
「これで文化祭の出し物が決まったな。専用の機械や衣装などお金のかかるものはこちらで用意しておくから、各自その他の準備をするように。これでホームルームは終了。」
なんとか文化祭の出し物が決まりました。
私にとっても初めての文化祭。
何よりも楽しみです。




