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花火

 私のクラスメイト、光風みつかぜ あかりは光学生命体だ。

わかりやすく言えば、映像生命体と言ってもいい。

彼女は15,6年前にに偶然生まれた。

ある国のとある研究室で立体映像の研究をしていたら、偶然人格を持ってしまったらしい。

以前、彼女が言っていた「狭いコミュニティで暮らしていた」とはこの研究室のことらしい。

だから光学生命体の生態はあまり分かっていない。(本人もよく分かっていないらしい。)

彼女の生まれた研究室では彼女の仲間を増やそうと努力しているが、あまりうまくいっていないようだ。

要するに光学生命体は世界中で光風みつかぜ あかり、ただ一人と言うことになる。


 ここからは光風みつかぜ あかりちゃんのことをあかりちゃんと呼ぶことにする。(普段そう呼んでいるので)

あかりちゃんは授業が終わっても女子寮に帰らない。

いや、帰れないのだ。(いじめられているわけではないのでご安心を)

担任のかぐちゃんは女子寮からの登下校を原則として例外は認めないと言っていたが、あかりちゃんに対して例外事項として認めている。

と言うか認めざるをえないのだ。

あかりちゃんの家と言えるものは電脳空間だ。

電脳空間にいるときは私たちの世界にはいない。

ただ、電脳空間は彼女にととって非常に苦痛な存在だそうだ。

だから、必要性がない限り電脳空間には入りたくないそうだ。

でも必ず毎日一回は入らざるをえない。

それはいつかというと夜。

彼女の体は光で構成されている。

光がくなる無くなる夜は、生命の危機になるのだ。

完全に闇になる前に電脳空間に入らざるをえないのだ。

彼女は電脳空間に入ることを「寝る」、電脳空間から出ることを「起きる」と言う。


 余談だが、「寝る」、「起きる」というものは人間の感覚とは全く異なるものだそうだ。

元来、光学生命体はいわゆる人間の「寝る」という行為をしなくてもいい。

というか「「寝る」ことは出来ないのだ。

もちろん、あかりちゃんも電脳空間内で常に起きているそうだ。


話を戻すと、あかりちゃんは日没とともに「寝る」行為をして日の出とともに「起きる」行為をする。

前述したとおり、あかりちゃんは電脳空間は苦痛であるので一刻も早く出たいのだそうだが命を守るためそういう生活をしている。

前にあかりちゃんに電脳空間はどんな状態か聞いてみたことがある。

あかりちゃん曰く

「電脳空間はカオス状態。あらゆる情報が混濁した状態なの。その世界では私の思い通りになるものは一つも無いわ。人間が夢を見る理由は脳が記憶の整理をするためのもので、つまり、夢の中にはあらゆる情報が詰まっているの。でも、それを人間はそれが理解できないでしょ。それと同じで私のいる電脳空間は世界中のあらゆる情報が入っているの。その中で情報の整理が常に行われているの。人間にわかりやすく言えば私は意味不明なドラマを永遠に見せられているようなものなの。電脳空間にいる限りそこから逃れることも出来ないし。」


 そんなあかりちゃんにはささやかな夢がある。

あかりちゃんは花火を見たことがないらしい。

知識としては持っているが、実際に見たことはないのだ。

理由は夜に彼女は私たちの世界に存在が出来ないからだ。

彼女曰く、夜でも光源さえ有れば存在は可能らしい。

ただし、生半可な光源ではない。

私はこの話をまず委員長にした。

委員長は自分だけでは何ともならないとして、あかりちゃんを除くクラス全員を集めていろいろと策を練った。

でも、策はまとまらず結局は担任のかぐちゃんに相談した。

かぐちゃんはクラス全員であかりちゃんを喜ばそうとしていることに泣いて喜び、特殊なライト教室に設置すること許可した。

その特殊なライトとはあまりに眩しく、人間界ではまず使われない代物だそうだ。(ただし、一時間しか持たない)


 そして、花火大会当日、教室にそのライトを設置した。

私たちはその教室に入ることが出来ないので隣の教室で一緒に打ち上げ花火を見た。(そのライトはあまりにも眩しいので一緒の教室にいることは出来ない)

あかりちゃんは泣いて喜んでいた。(実際には光学生命体は涙を流さないが、私にはそう見えた。)

そして、あかりちゃんは

「本当にありがとう。私は死ぬことはないけど、このことは一生忘れない。」

そう言うと、ライトの切れる5分前に電脳空間に帰って行った。


 そして、私もこの日を一生忘れることはないと思う。




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