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小葵さんと私。  作者: ライン
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3話『小葵さんと私。それと服』

 さて、何とか、一条さんとゴールデンウィークに遊ぶ約束を結ぶことができた。そして、なんと、そのままの勢いで、一条さんと連絡先をその日中に、交換してしまった。

 下校中、連絡先に初めてクラスの友達が増えたことが嬉しく、つい何度も画面を見ては喜んでいた。

 それにしても、こういう時は、こちら側から「よろしく」と言った類の文をメッセージとして送信しておく方がいいのだろうか。それとも、向こう側から送られてくるのを待つ方がいいのか。どうすればいいのかよくわからなかった私は、とりあえず、小葵さんに聞いてみようと、小葵さんの部屋に訪れていた。

「瑞穂ちゃん、はい、お茶。どうぞ」

「ありがとうございます……」

「それにしても、もう約束しちゃったんだねぇ……早いし、偉いなぁ。ちなみに、その子と連絡先は交換したの?」

「はい。それで一つ聞きたいことがあって……こちらから『よろしく』とか送るべきですか……?」

「……じー」

「?」

 私が質問をしているのに、小葵さんは応えずに私の方をじっと見つめていた。その様子は明らかに別の方向に関心が向いているという感じだった。

「……あの、何ですか……?」

「瑞穂ちゃん……約束した子って、もしかしてもしかして……男の子?」

「んなっ……そんなわけないじゃないですか。女の子ですよ。女の子」

「そうなんだ~。なんかちょっと残念~」

 目をキラキラと輝かせながら聞いてきたと思えばすぐにシュンとした表情になる小葵さんは見ているだけで何だか面白いし、そこが何とも言えない小葵さんの魅力だと思う。

 しかし、私が男の子と二人きりで遊ぶなんてことは、いくら多感な時期とは言え、よほどのことがない限りありえないだろう。……多分。

「まぁ、男の子かどうかは別として……連絡した方がいいと思うよ~。やっぱり、挨拶は大事だからね」

「そうなんですね……えっと、じゃあ、『今日はありがとう、またどこに行くか決めようね。これからよろしく』……こんな感じでいいですかね?」

「うんうん。いいと思うよ~」

 私は、そのまま、その文章を一条さんに送った。あとは、返信を待つのみである。

「ところで、瑞穂ちゃん。今思ったんだけど、遊びに行くのはいいとして……そのためのお金はちゃんと持ってるの?」

「一応親からお小遣いとしていくらか貰ってるので多分大丈夫かと」

「そっか……じゃあ……服は?」

「え? ……特にこだわりとかはないので、いつもの格好で行こうかと思ってるんですけど……」

 そう言った途端、小葵さんの視線が少し鋭くなった。そして、こちらへ近づいてきて、肩をぐっと掴まれる。そこまで力は強くないけど。

「瑞穂ちゃん、あなたは今、何年生?」

「高校一年生ですけど……」

「ウワー、ワカイネー。オシャレニモキョウミアルジキダネー?」

「何でそんな変な棒読み……」

「そこは置いておいて……コホン……改めて……瑞穂ちゃん。もうちょっとオシャレに気を遣いましょう、そうしましょう」

「え? ちょっ……」

 小葵さんはいきなり私の肩を掴む力を一気に強くして、そのまま押し倒そうとしてきた。すっかり油断していた私は、あっという間に床に押し倒される。小葵さんは、私が着ている制服に手をかけてきた。あまりの事態に慌てて抵抗をするも、小葵さんは、手慣れた感じで私の制服をゆっくり、ゆっくりと剥いでいく。服の下から侵入してきたその手がお腹に触れたのを感じる。

「ひぅ……」

 小葵さんの手が妙な冷たさだったため、思わず変な声が出てしまった。

「ふふ。瑞穂ちゃん色っぽい声出しちゃって……怖がらなくても大丈夫だよぉ~。これから瑞穂ちゃん大改造計画が始まるだけなんだから……へーきへーき……うふふ」

 小葵さんは変なスイッチが入ってしまったみたいで、歯止めがきかない感じになってしまっている。このままだと、色んな意味でマズイ気がした私は、負けじと抵抗に抵抗を重ねるが、小葵さんはなかなか離れてはくれなかった。だんだんとずらされていく服。肌が露わになったせいで、隙間から入ってくる空気が耐え難かった。

「さ……小葵さん……これ以上は……っ……」

「女の子同士でしょ……? 何を恥ずかしがるの……?」

 小葵さんの顔が近づき、大人びた声で囁かれた。ついつい、抵抗を忘れてドキっとしてしまう。その瞬間を狙ってか、小葵さんの手は私の体を撫でるようにして動く。

「いゃっ……だから、そういうのじゃなくって……も、もっと普通に……ぃ……」

「うふふ……まずは、上を――

 小葵さんが私の上の服を完全に脱がしかけたその時、スマホの通知音が部屋に鳴り響いた。小葵さんは、一気に力が抜けた感じになって、私から離れる。私も、力は抜けているが、倒れたままスマホを手にとり、確認をした。すると、一条さんからの返信メッセージが届いた通知だった。

「……」

「……はぁ。何だか今ので白けちゃった」

「ええぇ……通知音だけで……?」

 拗ねたように、立ち上がって自分の部屋の中にあるクローゼットを開けた。私のクローゼットと比べて、たくさんの服でいっぱいだった。さすがは女子大生と言ったところなのだろうか……。

「ダメと言われても、瑞穂ちゃん大改造計画は、ちゃーんとやるからね?」

「はぁ……最初っからそういう感じで普通にやってくれたらいいのに……」

「さっきのは冗談だよ~。さすがに、私でも瑞穂ちゃんの純潔を無理やり奪ったりはしないから……」

「……許可があったら奪ってたんですか?」

「……う、ごめんなさい……反省してます……だからそんな目で見ないで……ついでにお酒禁止しないで……」

「お酒は知りませんよ……」

 先ほどのお返しと言わんばかりに、思い切り睨みつけてあげたら、必死に謝ってきた。やっぱり、小葵さんはたまに変だけど面白い。今後、襲われるのは少し勘弁してほしいが。

「ちゃ、ちゃんと色々オシャレについて教えてあげるから、ね? とりあえず、まずは仲直りしよ……?」

「仲直りって、大げさな……ケンカしたわけでもないから、いいですけど……別に……」

「やった~。じゃあ、とりあえず、瑞穂ちゃんは自分の部屋に行っていつもの格好になってまたこっちの部屋に来てみて~」

「はい、わかりました」

 こうして、小葵さんによる私の大改造計画がスタートしたのである。

 

 


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