話の決着?
「なぜそのような事をおっしゃるのですか?」
「それが事実だからさ。 今度は、私が昔話をしようか」
カナン様が語りだす。
「エミリーの8歳の誕生日、その日までは確かに私とエミリーが婚約するはずだった。 それは家同士で決められたことだ。 でも私は、父と母の仲睦まじい様子を見ていたし、自分だけのお姫様がやってくると聞いて心待ちにしていたんだ」
当時のカナン様がそんな風に思っていてくれたとは知らなかった。
「ただ幼い私は1つの失敗をした。 エミリーが熱を出しパーティが中止になると聞いて、癇癪を起こしたんだ。 おもちゃが手に入らないような苛立ちだったのかもしれない」
婚約者はおもちゃ扱いですか。
ゲームでも俺様入ってたなぁ。
「それに怒ったのが、サレニー候でね。 自分の娘を、そんな奴にやるわけにはいかないと、えらい怒りようで それに賛同した父が、私を遠くの騎士学校にやることを決めたのさ。 私の必死の願いで、婚約者候補になることはなんとか許してもらえた」
じゃあもし王弟殿下が息子に甘かったら、無理矢理にでもその時点で婚約を結ぶことになってたのかもしれない?
いくら父が娘を可愛くとも、ユグドラシル家には逆らえないだろう。
そもそもゲームでは婚約者なのだし。
「騎士学校に入ってから私は努力した。 早く戻れるように、一人前になってエミリーの婚約者としてふさわしい男になるようにと」
ん?ひっかかる。
「あの、カナン様? お話を聞くと、私は騎士学校に追いやった原因は私ですよね? 恨まれるならまだしも、なぜそうまでして、婚約者になりたいと思っていただけるのか、、分からないのですが」
「それは私がエミリーに恋をしたからさ。 その頃からエミリーは可愛かったし、日々届く手紙や、家の者から届くエミリーの様子の話や肖像画が、何より楽しみだった」
お父様、勝手に個人情報をユグドラシル家に流さないで、、
最初の頃は、字の練習がてら手紙をよく書いていた、ような気もする。
「エミリー、君の心が私のものになっていないことは分かっている。 だが、想うことは許してもらえないだろうか」
ここで追い打ちをかけられる人がいたら、教えて欲しい。
雨に濡れた捨て猫みたいって、こういう人のことを言うんだよ、絶対。
「思想の自由は基本的人権ですから、、仕方ないですよね」
少しヤケ気味に答える。
「同級生として、仲良くしましょう?カナン様」
ぱっとカナン様の表情が明るくなる。
捨て猫は虎だったかもしれない。
「ありがとう、エミリー!!」
背は高いし、体つきもがっしりしてるのに、人懐こい印象なのはこの笑顔のおかげなんだろうなぁ。
人気なのも納得。
私はこの世界の女性にしては小柄なので、並ぶと身長差がすごそうだ。
「・・・それで、私はエミリーの婚約者候補のままでいられるのだろうか‥?」
また濡れ猫のような不安げな顔で私に問いかける。
立場は、カナン様の方がずっと上なのに。
「カナン様がそれを望むのであれば..ただし、条件があります」
「条件?」
「誓約書を、作成していただきたいのです。 条件は、1つ 学園を卒業するまでは、婚約者候補のままであること 2つ 婚約者候補を辞退するときは、互いの個人、家に対し不利な状態になることを避けること」
「私から婚約者候補を辞退したいという日が来るとは思えないが、、、 これはサレニー家、ユグドラシル家の爵位、資金、領地など資産全てに相互に影響を与えないという解釈でよいのかな?」
「そうですね、条件をのんでいただけるのであれば、学園を卒業するまでは私もカナン様の婚約者候補となりましょう」
「本当か!!」
一方的にカナン様が私の婚約者候補だったのから、互いに婚約者候補にランクアップしてしまった気がする。。
でもこれなら、カナン様がヒロインルートいって、婚約者候補辞めても、誓約書を盾にとったらサレニー家不利にはならないよね!?
「私にカナン様の心を縛ることはできません もし、カナン様に運命の人が現れたとしたら、、私の婚約者候補であることが重荷になるような事態は避けたいのです。 ただ、私の家族や従者達、大切な人達を守るすべを私に与えてはもらえないでしょうか」
「大切な人達か。 私はまだその中には入っていないのだな」
カナン様が切なそうな笑みを浮かべる。
うん、ごめんなさい。 入ってません。
「分かった。 内容をまとめた誓約書を作成させよう。 調印の際は、サレニー候とエミリーを、改めて呼び立てることになるだろう」
やはり、家と家の問題ですよねー。