紅茶の好み
案内された部屋は、応接間兼書斎といった感じの部屋で、奥のドアが寝室につながっているらしかった。
お茶のセットと、フルーツや焼き菓子、ケーキがいく種類も並んでいた。
「かけて楽にしてくれ。 紅茶の好みはあるかな?」
「カナン様と同じように、、」
緊張する。距離感が分からない。
ゲームでの性格設定はあまり当てにならないと思っていいだろう。
カナン様は、他の婚約者候補の女性達にもこんなに打ち解けて話すハーレム体質の人なのだろうか。
綺麗なメイドさんが紅茶を運んでくれた。
一口で最高級の茶葉が使われていると分かる。
好みとしては、姉様の店に置いてある茶葉をルシアが入れてくれた紅茶が、一番美味しい。
「手紙の返事が来た時は驚いたよ、今回もまたダメだと思っていたからね」
「父上の意向が強く、、申し訳ありませんでした 断り続けたことへの罰があれば、父ではなく私めにどうか」
「まさか!サレニー候やエミリーに罰など与えるわけがない。 今ここにいてくれるだけで、嬉しいのだから」
処罰を受けずに済みそうで、ホッとする。
「ご厚情痛み入ります」
「エミリー、会うのが久しぶりとはいえ、私たちは幼い頃から親しんできた仲であろう?どうかもっと楽に話してはくれまいか?」
「カナン様がおっしゃるのであれば、、」
よかった、堅苦しいお嬢様言葉と敬語は、そろそろ限界だった。
「手紙だけじゃ足りない、こうやって会って話したいことがたくさんあるよ」
「私は、カナン様にそうやって思っていただくほどの者ではないですよ」
「そんなことはない。 エミリーは魅力的な女性だ。 もうすぐ同じ学園に通えると思うだけで、心が踊るよ」
は?漏れそうになった声を、ぐっとこらえる。
「同じ学園?」
「サレニー候から聞いていないかい? 向こうの学校から、やっとこちらに戻って来ていいと、父上もサレニー候も、おっしゃってくださったんだよ」
聞いてませんよ、お父様。
「で、では、もうすぐ私達は、同じ学園に通うと?」
「そうだよ、私も多分に漏れず、寮に入る」
やばい。学園内で、悪役令嬢とカナン様とヒロインが出会ってしまう!!
「カナン様!」
「なんだい、エミリー」
うっわー、キラキラしてる。
第二王子は陰なら、この人は陽だ。 対になってて、魅力倍増らしい。
「二人でお話がしたいのですがっ」
「今しているだろう?」
「そうなのですがっ」
「人払いをする必要があると」
こくこくと頷く。
カナン様は使えていたメイドさん達に、部屋を出るよう指示をしてくれた。




