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霊感0!  作者: えんぴつ堂
たぶん、よくあること
7/25

たぶん、よくあること ①

**************


 まあ…たぶん、よくある事っすよ。


 ストーカー女に嫉妬されて、耳を集めるのが趣味の悪霊をけしかけられたりとか。


 その悪霊に殺されかかったストーカー女を救う為、気を失ってる本人の耳を刈り取ったり。


 父親になって欲しいくらい慕っていた叔父さんが、身内どころか人間であるかさえ疑わしいなんてのはね。


 追伸:アロエは不味い…。


**************



 俺の望みは、『昼休みをゆっくり過ごしたい』只それだけなのに…。



 「どうした? 玉城、食わないのか?」


 昼休みを迎えた教室。


 目の前に座る柔道男子100超級全国大会3位にして柔道部主将の豚(仲嶺一)は、憮然とした態度で腕を組む。



 「やーんなぁーに? ボクちゃんと一緒にランチしたいのん? 照れくさくって水すら喉を通らないわん★」


 「……」


 俺の精一杯の皮肉と抗議は、豚には届かないようだ。


 つか、何なの?


 マイスイートとの憩いの場を失い、肩身の狭い教室でひっそりヤキソバパンを頂こうという健気な俺に何か用ですか?


 『ストーカーミンタマ姉さんと愉快なミミチリボウジ達』と絡んだのは、土曜日の事で現在は週の初めの月曜日…ただでさえ土曜日の疲れが抜け切らないというのに目の前の豚は俺に休息を与える気は無いらしい。



 「……お前、昼休み中そこに座っている気か?」


 俺は、腕を組んだままジッと此方を見つめる豚に問う。



 「この前の話、覚えてるか?」


 豚が、俺に問いを返す。 



 この前? 何の話だ?


 怪訝な表情を浮かべる俺のに、豚は呆れたようにため息をつく。



 「…っち、お前の復帰の話だ」


 は?


 「…本気で忘れてたのか!?」


 豚が、頭を抱える。


 あ~思い出した、確か言ってたな…俺の部活をクビになった理由が不当だとかなんとか…。


 「今、比嘉が必死で証拠を集めてる…後はお前の覚悟しだいだ!」 


 げっ、マジかよ!


 俺、頼んでませんけど!?


 うわぁ~…コレが、選ばれし者のKYをも正当化する奇跡のスキル『お節介』かぁ…。


 「プライベートが忙しいので、丁重にお断りさせて頂ます」


 俺は、潔く豚に頭を下げた。


 プライベートが忙しいのは本当だし、これ以上こいつ等と関り合いにないたくない!


 その為なら、幾らムカついても頭の1つや2つ下げましょう!



 「プライベートねぇ……」


 豚は、そう呟くと俺の机の上に小ぶりの紙袋を置いた。 


 「…何だよそれ?」


 「身に覚えが無いとは言わせ無いぞ?」



 豚に促され紙袋を開ける。


 中には、布に包まれた箱…弁当?



 「幾ら、部活を辞めたとはいえ羽目を外しすぎなんじゃないか?」



 豚が、眉間に皺を寄せ咎めるように言う。


 話が見えないな…。



 「ずいぶん、綺麗な人じゃないか? 年上だろ?」



 年上? 綺麗? なんのこっちゃ?



 「あんな綺麗な人に、弁当作らせるなんて…うらや___」


 「おい、それどんな美人だ?」


 「はぁ? どんなって…年は20代位で気が強そうだけど出るトコ出てる感じのナイスバディで黒髪のボブカット…って知り合いじゃねーのか?」


 俺は、豚の台詞が終わらない内に掃除用具入れの隣にあるゴミ箱に紙袋を投げ捨てた。


 「おい! 何すんだよ!」


 豚が、素早くゴミ箱から紙袋を取り出す!


 「何だか知らんが! 折角、作ってきたんだぞ! 食えよ! 食いモンに罪はねーだろ!?」


 豚のハゲ頭に血管が走る。


 ちっ!


 俺の知り合いで、ナイスバディの黒髪ボブなんてあのストーカーしか居ない!


 ストーカーが作った弁当なんて、何が混入されてるか検討がつかない…そんのモン食えるわけねーだろ!



 「じゃ、お前が食え! 俺はヤキソバパンで十分だ!」


 俺が、そう言い放つと豚は袋から弁当を取り出し俺の机の上に広げた。


 花柄の布に包まれた二段の弁当は、上がおかず下が米に分かれている。


 豚が、おかずの蓋を開ける…出し巻き卵にミートーボール、ひじきの佃煮…一見内容は普通の弁当と変わらない…それどころか美味そうだ。



 続いて、米の方の蓋を開ける。



 「「………………」」



 俺と豚は、各々違う意味で言葉を失った。



 俺は、固まる豚から蓋をそっと奪い弁当箱に被せる。


 「玉城…俺、桜デンブのハートマークなんて初めて見た」


 豚の言葉に、コレが現実だと思い知った。



 おぞましい…余りにおぞましいが、ミンタマ姉さんは叔父さんから俺に乗り換えたらしい…。


 『良い人を探せ』確かに俺はそう言ったが、自分が俺にどんな事をされたか分かってんのか?


 何がよくて、自分の耳を狩り飛ばし病院で脅しをかけるような高校生に心を奪われるのか皆目検討がつかない…。


 「やっぱり、コレはお前が食うべきだろ?」


 豚が、弁当を俺の方へ押す。 


  空腹の男子高校生の胃袋わし掴みの完成度に少々心が揺らぐが、いかんせ製作者があのミンタマ姉さんだ…食うなんて怖すぎる!


 「いらねー」


 俺が指で弁当を弾き返すと、豚が恨めしげに俺を睨みつける。


 きっと、豚には俺が年上美人に弁当作らせるようなタラシに見えるのだろう…いやぁ…ほんと! 何もかもが迷惑だ!



 ぐぅぅぅぅぅ…っと、豚の腹が鳴った。


 そういえば、昼休み柔道部は寮の食事が出る筈だがコイツ…寮に戻らなかったのか?


 「じゃ、良いんだな! 食うからな!」 


 「勝手にしろ」



 どーなっても知らねーけどな。




 俺は、弁当を食い始めた豚をヤキソバパン片手に注意深く観察する。


 豚の食欲は凄まじく、あっと言う間におかずの半分と米に乗ったハートマークの原型が無くなる。


 コリッ。


 丁度、ミートボールをほおばった豚のふくふくとした頬から肉らしからぬ音がした。


 「?」



 コリコリ……ごくっ。



 「なんの音だ?」


 眉間に皺を寄せる豚は訝しげな顔をしてたが、納得したように平静を取り戻す。


 「…軟骨入りのミートボール…だな多分…何だやっぱり気になるんじゃないか~もう返せねーぞ」


 豚のドヤ顔に軽く殺意を覚えたが、そんな事よりもふと気になった事があり豚にソレを訊ねることにした。


 「この弁当を持ってきた美人さ…他に何か変わった所なかったか?」



 コリッ。


 「? 変わったとこ?」


 「ああ、ナニか身に着けてた物とか…服装なんか」


 米とミートボールを租借しながら、豚が記憶を辿る。


 「ヘッドフォン……」


 「ヘッドフォン?」


 「ああ、片耳だけ…しかもDJとかが使うっぽいデカめのヤツ…何で、そんな事訊くんだ? 少なくとも知り合い何だろ?」


 「…いや、なんでもない」



 変なヤツ…と、豚は呟くと食事に集中し始めた。 


 コレは、悪魔で推測の域を出ないがほぼ正解だったと自負できる。


 片方だけのヘッドフォンにお手製軟骨入りミートボール…答えは一つだ。  



 果たして、この事実を豚に…いや…俺にだって『良心』くらいはそれなりにある…ここは黙って置くべきだよなぁ?


 最後のミートボールが、豚の口に収まる。



 「美味かったか?」


 「え? ああ…美味かったけど? 何笑ってんだ?」


 豚が、怪訝な顔をした。



 おっと、どうやら顔がニヤついていたらしい…。



 「別に______」


 プニニィチェリー!

     プニニィチェリー!

   プニニィチェリー!



 教室に大音量でふざけた着信音が鳴り響き、俺は学ランの胸ポケットから馴れた手つきで赤いスマホを取り出した。


 「おい! 携帯持ってきてるのか!?」


 豚は眉間に皺を寄せ、俺を睨む。


 無理もない、柔道部の規則では携帯・PHSなどの外部と連絡の取れる媒体は持ち込み禁止だ。

 唯一の連絡手段は学校の公衆電話か寮母の部屋もしくは柔道部の寮の最上階、歴史ある柔道部を取りし来る伝説の指導者にして自身の息子をメダリストにまで育て上げた男_______真輪士忠則まわしただのり大先生の住まう部屋の応接室しかない。


 しかも、許可制でそれが滅多に通ることはない。


 柔道部の寮って所は、正に牢獄と言っても過言ではないだろう。


 まぁ、連絡なんて学校の公衆電話でなんとかすりゃいいんだけどね。



 「うるせっ、俺はもう柔道部じゃねーんだ部の規則なんか知るか! それに、コレは携帯じゃねースマホだ!」


 嫉妬を滾らせる豚を尻目に画面を見る。


  見た事のない番号からの着信…一瞬取るのを躊躇するが、もしかしたら博叔父さん知り合いかも知れない。


 画面をタッチし、電話に出る。


 「もしも_______……何で、お前がこの番号知ってる?」


 声の主は、俺の問いには答えず用件を述べると直ぐに会話を打ち切った。


 「…っち」

 

 「おい! 何処行くんだよ!」


 電話を切るなり、席を立った俺に豚が問うがそんなの無視だ。


 昼休みも残すところ30分……5時限目は体育だ、どうせ俺は奉仕活動だろうから多少遅れても気付かれないだろう…比嘉以外には…。



 「仲嶺、人間って以外に栄養価がいいらしいぜ?」



 頭に『?』マークを浮かべた豚を残し、俺は教室を後にした。






 足早に歩くこと三分。


 俺は、指定された場所にたどり着いた。


 そこは、元は美しかったであろう荒果てた温室。


 入り口に、『イングリッシュガーデン・クラブ』なんて書いてあるから本来なら美しい花とか咲いていたんだろうが…。


 ギィィィィィィィ!


 温室のさび付いた扉を押すと、まるで悲鳴のよう軋む。



 「……」


 中を覗くと、そこはまるで朽ち果てた廃墟のように荒れ放題だ。


 ……ホントに此処であってるよな?



 プニニィチェリー!

    プニニィチェリー!

  プニニィチェリー!



 胸ポケットが、震える。


 ……いい加減、スマホの扱いに慣れないと…マナーモードってどうすりゃ良いんだ?

 

 取り合えず、画面をタッチし電話に出る。 



 『そのまま、真っ直ぐ進んで下さい』


 声の指示に従い、俺は腰まである草を掻き分け前に進む…それにしてもこの温室は広いな流石金持ち学校と言った所か。


 『その角を曲がって』


 ガサッ!


 突き当りを右に曲がると、鬱蒼っと生い茂った雑草が終わりを告げ目の前には良く整備された空間が広がりその中央には…噴水?



 「丁度、整備が始まった所なんですよ」



 俺は、耳に当てていたスマホを切り噴水の前に立つ人物に目をやった。



 「お久ぶりです、玉城先輩」


 そこには、いつぞや俺の肩にコンパスを突き立てた浩二の友人…コンパス少年…もとい! 『暗殺少年』があい変わらず長い前髪で目を隠しにっこりと微笑んでいる。


 「何で、この番号知ってんだ?」


 「…」


 ……こっちの問いには答えない……ね…。


 少し沈黙して、暗殺少年が口火を切る。


 「無駄話はしたくありません、単刀直入に…」


 「だめだ」



 俺は、暗殺少年の言葉を遮った。



 「…もう、あの人は俺の家族だ…お前には返せネェよ…」


 「そうですか、交渉決裂ですね…」


 声変わりを迎えた、ハスキーボイスが低く唸る。


 「じゃ…此処で死んで下さい!」


 「!?」


 暗殺少年の手が動いたと思った時には、目の前が真っ白になる!



 石灰か!?



 石灰が、目に入る事を恐れ俺は思わず目を閉じる!


 バッキ!


 右足脹脛に、強い衝撃が走った!



 「…っつ!」


 薄く目を開けると、そこにはへし折れた木製のバットを持った暗殺少年が薄ら笑いを浮かべていたが次第に表情を曇らせていく。



 「なっ、なんで!?」


 俺は、驚愕する暗殺少年の学ランの襟を掴みそのままズルズルと引きずる。



 「はっ! 放せ!!」


 「なぁ…知ってるか~? アロエってかなり効くんだぜ?」



 先週。


 この暗殺少年の蹴りによって、パックリ開いてしまった全治一ヶ月の脹脛の傷はアロエの効能により土曜日の朝には公園までのダッシュを成し遂げ今は、全力で振り下ろされたバットをへし折るに迄にすっかり完治している!


 まぁ、目の付け所は悪くない…怪我を狙って相手を確実に潰そうとしてくる姿勢は買うし俺好みだけどここは世間の常識を知るべきだろう。


 「何する気だ!!」


 歩みを止めた俺を、暗殺少年が伸びきった前髪の隙間から殺意の篭った眼光を光らせる。


 「調教」


 俺は、掴んでいた襟を引き上げ茶色く濁った水の溜まる噴水に暗殺少年を沈めた。

 

 バシャバシャと、手足をバタつかせ暴れる暗殺少年を適当な所で引き上げ息継ぎをさせる。



 「ゲッホ! ゲッホ! …ゲッホ!!」


 「ははw お前、軽いな~50キロあるか? ちゃんと飯食ってんの? つーか、『殺す』とか言っちゃだみだよぉ~」


 「ゲホッ…っ! 筋肉だるま…殺してやる…!」


 あは★もういちょ沈むかクソガキ?


 俺がもう一度暗殺少年を静めようした瞬間、後頭部に強い衝撃が走り目の前に無数の銀色の星が散る!


 「あ"?」


 振り向くと、そこには息を弾ませた従弟が柄の折れた室内箒を持って立っている。


 「圭兄! 何考えてんだよ! 幾ら何でもやりすぎだ! 傷害罪って言葉知ってる!?」


 浩二は、緩んだ俺の手から友人を引き離し地上の空気を吸わせ咳き込む背中を叩く。 


 「おいおい、先に仕掛けてきたのはソイツだぞ?」


 「そうだろうけど! 圭兄は強いんだから加減してよ!!!」



 ヘイ!c ousin!


 リアルに命狙ってくる奴に手加減出来るほど、ボクちゃんつおくないからぁぁ!




 キーンコーン カーンコーン

        キーンコーン カーンコーン



 昼休み終了の鐘が鳴る。



 「ほ~ら、予鈴も鳴ったし俺帰るわ~」



 俺は、濁った噴水に座り込む暗殺少年と浩二に背を向ける。



 「_______さない…」


 「切斗!」


 振り返ると、噴水からまるで貞子のように這い出た暗殺少年が濡れて顔に貼り付いた前髪の隙間から憎悪と怒りに満ちた瞳で俺を睨む。



 …悪いな…爺ちゃんは、もう俺の爺ちゃんだ…。

 

 今更、本当の家族が現れたからって帰す訳には行かな______



「…お前なんかに、姉さんは絶対に渡さない!!!」



 ________ん?



 暗殺少年は、顔に貼り付いた長い前髪を邪魔とばかりにかき上げる。


 「え…? は?」


 そこに、あわらになったのは染み一つ無い白く美しい肌に全ての人を虜にする漆黒の瞳____恐らくそんな美しい物を見て体中に虫唾を走らせるのは俺くらいの物だろう…それ程までに似ているのだ…。



 「え? 比嘉?」


 そこにいたのは、どう見ても俺のクラスメイトにして正義の味方兼監視役の最強の女…比嘉霧香ひがきりかそっくし____



「圭兄! 走って!!」


 ガコンっと頭上で何かが外れるような音がし、反射的に上を見る。


 温室の天井からキラキラとした塊が……え"? これってシャンデリアァァァァァァァァァァァァ!!!!!


 突然の事に、一瞬反応が遅れる!


 げっ!? 避けきれなっ_______



 ガシャァァァァァァン!!!


 「圭兄!」


 派手な音が、温室に響く。


 だが、不思議な事に痛くない。



 

 

 「ガキ相手に何やってんだ?」




 聞き覚えのある声に、俺は顔を上げる。


 そこには、時代遅れの襟足を長く伸ばし先端を金色に染めた髪と黒地に『ガラクタ倉庫』と赤く刺繍されたベスト…間違い無い。


 「武叔父さん…?」


 弟を毎日恐怖のどん底に落とす外道シスターズ父親にして、母さんの兄にあたる人だ。


 「何で…此処に…?」



 武叔父さんは、呆ける俺を見てニヤリと笑った。 


 「仕事だ、このボロ小屋の改修作業の依頼があってな…まさかお前に遭うとは『おいたん』思わなかったぞぉ~」


 厳つい、ヤンキー上がりの外見から発せられた『おいたん』と言う言葉に温室の空気は凍りついた。



 無理も無い。


 背の高い部類に入る俺より頭半分高い長身に、肉体労働者の筋骨隆々としたバキバキボディの怖いおじさんからバリトンの猫なで声で『おいたん』なんて一人称が出たら寒気以外何も感じない!


 武叔父さんは、俺か視線を外し浩二と暗殺少年のほうをみた。


 「浩二君じゃないか~久しぶりだね~あのクソ野郎はまだ呼吸してるのかい?」


 バリトンボイスに込められた明らかな殺意が、別の意味でその場を氷点下に引き下げる。


 「え…はい……死んではないから…息は元気良くしてますよ…?」


 浩二は、しどろもどろになりながら武叔父さんの問いに答える。


 「止めろ! 脅すな! 浩二に親父の事なんか聞いても仕方ないだろ!」


 もう、親父とは関り合いになりたくが浩二は大事な従弟だ出来れば疎遠になりたくは無い。



 「…ああ、あの男の血縁者を見るだけで…浩二君ってあのクソと顔似てるし…つい」 


 …そんな事で、殺意を向けられるなら俺なんてコピーですよ叔父上。


 そ…俺と親父はまるでクローンのようにそっくりだ。


 ホント、毎朝鏡の前で吐き気がする。


 まあ、俺の方が断然背が高いし体格も良いが金が溜まったら鼻の整形くらいはしようかと最近マジで考えている所だ。


 「それと______」


 武叔父さんが、暗殺少年に視線を移す。


 「何だか良く分からんが、こんな仕掛けまで用意して可愛い圭ちゃんの命を狙うとは…死んどくかクソガキ?」


 武叔父さんは、おもむろに何かを引いた。


 ブイィィィィィィィィィ!


 突如響く甲高い車のエンジンのような音に、俺は思わず耳を塞ぐ。


 「え?」


 俺は、目を疑った。


 武叔父さんにばかり目が行ってて気が付かなかったが、その右手には年季の入ったチェーンソーが唸り声をあげていた。



 ブイィィィィィィィィィィィィ!!!!


 チェーンソーは唸る。



 「た、武叔父さん…冗談だよな?」


 「……」


 あ。


 不味い、博叔父さんの時と同じだ。


 俺は、浩二にアイコンタクトを送る!


 浩二、すかさずそれに反応!


 武叔父さんの地下足袋がジャリッと地面を掴んだ瞬間、俺は背後から肉厚な背中を羽交い絞めにした!



 「逃げるぞ!切斗!!」


 浩二は、親友の腕を掴み一目散にその場を駆け出す!


 その姿を見た武叔父さんは、もがくでもなく冷静に激しく駆動するチェーンソーをいたいけな中学生目掛けて投げつけた。



 スローモーション。



 大きく回転しながら宙を舞うチェーンソー。


 この時ばかりは、周囲の音は一切消えずぶぬれの少年の背中に_______



 「左!!」



 俺の声に、暗殺少年の腕を浩二が引く!


 間一髪逸らされたチェーンソーが、噴水の縁に激突し石膏を抉った。



 ガキッ!



 「「あ」」


 暗殺少年の頭が、大きく振れる。


 倒れるかと思われた体を、暗殺少年は気合で踏みとどまった!



 「のあ!? きっ切斗!?」



 浩二が、ふらつく体を受け止める。 


 頭を抑えている所を見ると、どうやら噴水に使われていた石膏が当ったらしい。


 鋭い眼光が、俺と武叔父さんを捕らえる。


 側頭部から流れる血で、鮮血に染まった白い肌がなんともなまめ・・・・いやいや! 違うだろ!?


 噴水に溜まった汚水の中で、チェーンソーがブスブスを煙を上げながら最後の断末魔を上げる。



 ジャリ…ジャリ…。


 「え、嘘! ちょっと! マジかよ!?」


 俺の全力の羽交い絞めをものともせず、もはや無言の巨神兵と化した武叔父さんが留めを刺そうと徐々ににじり寄る。


 「浩二! 早くソイツ連れてどっか行け!!!」


 「分かってるよ! コラ! 切斗! 睨んじゃいけません! 目ぇみんなって、逃げるのぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」



 聞く耳持たない相方に四苦八苦していると、ガサッガサッ背後から草を掻き分ける音と___。



 「圭ーそこにいるのー?」


 俺を呼ぶ美しいソプラノ……虫唾と冷や汗が同時に噴き出す!



 「圭?」


 草を掻き分け顔を出した比嘉が見たのは、折れた室内箒で砕けたシャンデリアの残骸を片付けるアウトサイダーなクラスメイトの姿だった。


 「…よう」


 軽く手を振ったその男子の姿に、少し顔を赤らめる。


 どうしよう、気持ち悪い。


 「今日の、奉仕…此処だって聞いてたんだ…声かけてくれたら良かったのに…」


  比嘉が、少し残念そうに言う。


 幸か不幸か今日の奉仕活動の現場は、この朽ちた温室だった様だ。


 「学園長先生が、業者を入れて本格的に整備を始めるらしいんだけど_____」


 「お前さぁ」


 俺は、比嘉の言葉を遮る。


 「もう、俺に付きまとうの止めろよ」


 美しい顔が、凍りつき声を失った口がパクパク動く。


 「この前の答えなら『ノー』だ、理由は『生理的に無理』なんで! そこんとこヨロシク!」


 それだけ言って、俺はキラキラ輝くガラスの残骸に視線を落とす。


 ジャリッと地面を蹴る音がして、美しい黒髪が草むらに消える。



 「わーおー…壮絶…」


 噴水の影から、浩二と鮮血に顔を染める暗殺少年が顔を出す。


 「これで良いだろ? 比嘉弟…お前も俺に付きまとうな」


 鮮血の比嘉弟は、鋭い眼光で俺を見たがすぐに背向け裏口のほうへ歩き出した。


 「おい! 切斗!!」


 浩二は、俺に手を振ると親友の後を追って行った。








 「______って言うのが昨日の俺のアリバイなんですよ刑事さん!」



 マジックミラーに蛍光灯と電気スタンドの光が眩しく照り返す明るい取調室で、若い男の刑事に俺は昨日の出来事を武叔父さんの所業を削除して説明した。


 ここは、県警本部少年課・第3取調室。


 この、17年生きてきて始めての警察署ですよ!


 俺、補導もされた事無いのに!


 何故、こんな所にいるかと言うと…俺にある嫌疑がかけられているからだ。


 「君は、体育特待生なんだってね?」


 若い、男の刑事が薄ら笑みを浮かべる。


 「…はい…そうでした」


 「じゃぁ、さぞ悔しかっただろう? …家庭内の事情とは言え有無を言わさず『クビ』になったのは」


  蛇のような目がねっとりと俺を見た。





 昨日、私立尚甲学園・高等部の敷地にある改修工事中施設内において同学園勤務の体育教師が無残な惨殺体で発見された。



 体育教師は、かつて柔道部を全国制覇へ導き自身の息子をメダリストへ育て上げた伝説の指導者であり_______俺を退部させた張本人。


 「いやぁ…実に無残だったよ」


 爬虫類のように、なんの感情も無い瞳を細め無機質な机の上に幾つか写真を並べる。


 そこに写っていたのは、血の海に横たえる人だった物。


 ただしソレは、無残に下半身をズタズタにされ両足を失っていたけれど。


 「王将おうしょうさん! 未成年になんて物見せるんですかぁぁぁぁぁ!!!」


 背後から、勢い良くドアの開く音と甲高い声がして同時に写真が奪われる。


 「っち」


 「『っち』じゃありませんよぉぉぉ! どうして一人で始めちゃうんですか! 取調べは、録画録音、男女二人で行うのが義務なんですよぉぉぉ!!!」



 半泣きで金切り声を上げるのは、どうやらコンビを組んでいる女刑事なのだろうのび放題の髪を無造作にゴムで束ねやつれ切ったボロボロの肌に目の下には青黒い隈を浮かべはらはら涙を流す。


 きっと良く寝て、良く食べれば美人なんだろうにもったいない。


 王将と呼ばれた若い刑事は、イライラとタバコを咥え火をつけようと100ライターを_____


 「だめですよぉぉぉ! 取調室…てゆーか署内全館禁煙ですぅぅぅぅ!!」


 「っち!!!」



 忌々しいとばかりに、タバコを握りつぶした刑事は再び感情の失せた瞳で俺を見た。


 「お前だ、お前がやったんだろう? 間違いないな? そうだろ? そうに決まってる、今から俺の言うとおりに調書を作成し______」



 「ふざけんな」


 「そーですよ!!任意同行なのに何言ってんですかぁぁ!」



 コンコン。



 取調べ室の扉が乾いた音を立てた。


 女刑事が、扉を開けなにやら会話する。


 「王将さん、その子帰って良いそうです!」 


 「何!?」


 「その子の言うとおり裏が取れました!」



 女刑事の言葉に、俺は胸を撫で下ろす!


 まあ、当然だ俺は何もしていない!



 「あ~玉城君だったよね、家族の人が迎えに来てるから今日はもう帰って大丈夫!」


 『今日は』の言葉が引っかかり俺は、女刑事をチラリと見る。


 「えと、もしかしたら、ね、もしかしたらだけどっ…また、話し訊くかもって…感じ?」


 女刑事の狼狽振りを見るに、俺への疑いは完全に消えてはいないのだろう。


 「…わかりました、取り合えず帰っても良いんですね?」


 喋りながら、席を立つ俺に女刑事はコクコクと頷く。


 

 「またね…玉城君」



 蛇の目が、口惜しそうに俺を見る。


 冗談じゃねぇ…二度とゴメンだね!


 女刑事の後に続いて取調室を出ると、ずらっと並んだデスクに詰まれた書類の山の隙間から警察官達の視線が一気に俺に注がれる。


 恐らく少年課と呼ばれるこの場所には、ざっと20人はいると思われる警察官すべてが俺を疑っています的な視線を向けているようで胸糞悪い。


 「ごっ、ゴメンね! 怖い顔してるけど皆とってもいい人たちなんだよ~…」



 語尾に覇気が感じられねーなぁ…この人多分嘘とかつけないタイプだ。


 重苦しい課内を通り抜け、女刑事が扉を開ける。



 「圭ちゃん!!!」


 ダンディなバリトンボイスが俺の名を叫び、ゴツイ腕が体を抱き寄せる。


 「____よかった」


 武叔父さんが、ありったけの力で俺を抱き締める為息が出来ない!


 「た、おじ…くるしっつ!」


 それに、恥ずかしい!!!


 背後に感じる女刑事の視線が痛い!


 「あ~お父様…もしかしたら、玉城君には又話しを____」


 女刑事が言葉を詰まらせる。



 不味い。


 「帰ろう、武叔父さん。 俺は、もう大丈夫だから…」


 殺気の篭った眼光で女刑事を睨む武叔父さんの手を引き、俺はその場を足早に退散した。


 何でこんな事になったんだ…俺は只昼休みを穏やかに過ごしたいと思っただけなのに!


 あーあー明日、学校行きたくねぇ…。








 そこには、昨日とはまるで違う世界が広がっていた。


 普段通りに、家を出て。


 普段通りに、バスを二本乗り継ぎ。


 普段通りに、人混みを掻き分け。


 普段通りに、教室の出入り口のサッシを引いた。



 静まり返る教室。


 全ての視線が俺に釘付けになる。



 疑惑


 恐怖

 

 憤怒


 驚愕


 殺気



 そこにいる全ての無数の目に、好意的なものなどあるはずは無い。


 俺は、まるで石像の様に固まるクラスメイトを尻目に自分の席へ向う。


 進行方向にいる烏合の衆は、まるで弾かれた様に俺を避けた。



 ガタン。


 俺が椅子を引いただけで、クラス中がビクッっと肩を振るわせる。



 マジですか?


 俺、何もしてませんけど?


 俺が席についても、クラスの誰も席に着こうとせず只此方を凝視するばかりだ



 「は~…なんなの? みんな席に着いたら? もーすぐHRですよぉ?」


 「何しに来た!人殺し!!」


 突然発せられた怒号に、どよめく教室。


 石像と化した烏合の衆から、一人のクラスメイトが俺の前に出てきた。


 学ランのズボンに上は緑の指定ジャージに身を包んだかつての仲間…金城輝彦きんじょうてるひこは、寒そうな一分狩りの坊主頭に青筋を浮かべ泣きはらした瞳で俺を睨み付けた。


 「金城…俺はやってない」


 「信じられるか!!」


 金城が、俺の机を蹴り飛ばした為中身が全て床に撒き散らされる。



 「お前以外に誰が、真輪士先生を殺すほど憎んでるって言うんだ!!」


 コイツ…マジで言ってんのか?



  「ちょっと待って!? え? 何? 何処をどう考えたら部活をクビになったからって殺人しようなんてぶっ飛んだ思想に走れると? てーるーは頭湧いてんの? 柔道如しに、ボクちゃんそこまで妄信してませんからぁぁぁ!」


 バキッ!


 突如、視界がぶれる。


 殴られた事に気付くのにそんなにはかからなかった。


 「_______っ」

 

 口いっぱいに血の味が広がる。


 「出てけ! ここにお前の居場所なんてねーんだよ!!」


 なるほどね…それが民意ですか。


 だが、それに従ってやるほど俺は良い人ではない。









 俺、何にもしてないのに教室出てけって言われたんだ。


 だから、断固拒否してみたの。


 そしたら、こうなった。


 「ゲッホ…もう終わりか? てーるーちゃんよぉ…」


 ガキッ!


 もう何発目が忘れたみぎすとれーとが、頬を捉える。


 俺は、椅子に座ったまま身じろぎ一つせず金城の拳を受け続けた。


 反撃?


 出来ない事は無い。


 俺と金城とは大して実力に差はないし、闘ってヤれない事は無いよ?


 只、やり合う理由が俺に無い。


 だって、俺は人殺しじゃないし…卒業のために授業を受けなきゃならないし、こんな教室でこんなに人目があるのにやり合ったら色んなモンも無くすのは俺の方だ。


 「はぁ…はぁ…はぁ…」


 金城が、遂に肩で息をする。


 その様子が可笑しくて、ついにやけた俺を見てその目に狂気を宿したかつての仲間はその拳に全力を込めて殴りかかって来た。


 あ。


 死ぬかも。


 が、その拳は俺には届かなかった。


 「放せっ!!!」



 腫れ上がって視野が半分になった目でチラリと見ると、二人ほどの同じハゲ頭が怒れる同房を取り押さえているのが見える。


 「もう止めろ! これ以上はヤバイって!」


 「そーだよ! お前大学推薦決まってんじゃん! バレたらヤバイだろ!!」


 二人のハゲに諭され、金城はようやく拳を下ろす。


 クラス中がその様子をたたずを飲んで見守っていたが、流石に状況を見かねたウエイトリフテング部のエース二人組みが何事かハゲ達に話しかけ俺の方に来たかと思うと突然一人が俺の椅子の足を掴んだ!



 「…?」


 そして、もう一人も同じく反対側の椅子の足を掴む。



 え、まさか…?


 「「せーの!!」」


 力自慢のウエイトリフティング部によって、俺は椅子ごと神輿のように担がれそのまま教室を突っ切り______!


 ガラッツ!


 タイミングよく開けられたアルミサッシの扉から、勢い良く外に放り出された!


 空中で中途半端に回転した体が、植木に突っ込む。


 受身を取り損ね悶絶する頭上でピシャリと、乾いた音がして扉が閉まると同時に始業の鐘が鳴った。





 「かはっ…!」


 無様に植木につ込こみ、ひっくり返ったプランターに咲いていた季節はずれのパンジーが俺の腹に根をさらす。


 日の光がこんなに照っているのに、熱った頬に当る風は冷たい。


 ジャリ。


 急に、日に光が遮られ影となったそこは冷たく底冷える。



 「は…俺って…そんなに、信用…無ぇのな……」


 「まあな」


 体重100キロを超える進撃の巨漢が、無様に横たわる疑惑のクラスメイトを見下すが逆光でその表情は読めない。


 「派手にやられたなぁ…やったの金城だろ?」


 『豚』こと、柔道部主将:仲嶺一は横たえる俺の手を掴み立ち上がらせた。



 「行くぞ」


 どこに?


 豚は、訝しげに自分を見る疑惑の掛かったかつての柔道部員の上着の泥を軽く叩く。



 「俺の部屋」


 そう言うと豚は、有無を言わさず俺の腕を引きずんずんと進撃を始めた。


 体育科の教室として使われる粗末な建物の隣の、近代的な体育館の裏。


 そこにそびえるは、学校まで徒歩二秒と言う最高の立地条件を有した地下2階地上8階の鉄筋コンクリート建ての『真輪士荘』と白壁にでかでかと黒く刻印された古びた柔道部専用の寮。


 俺は二年半此処に住んでいた……と言っても、俺が住んでいたのは地下の6人部屋でこんなに日当たりの良い一人部屋なんかじゃない!


 「適当に座れよ」


 ドアの前に立ち尽くす俺に、部屋の主は振り向かずに言った。


 「おお…」


 取り合えず、靴を脱ぎ部屋へと足を踏み入れる。


 間取りは2LDK、俺が住んでた6人部屋と変わらない…あ!


 風呂とトイレついてる! っち…! これがA特待…レギュラーと三下の違いって奴か!!


 体育科の中でも、特に柔道部はレギュラーとその他に対する優遇の落差が激しい…中でも寮における部屋割りがそうだ……力あるものは家具家電付の一人部屋、そうでない者は5~6人部屋風呂もトイレも共用だ!


 A特待は寮費が無料だか、B特待とc特待は寮費が一人頭5万は下らないというのに!


 「おい、さっさと座れ!」


 せかされて、俺はようやくちゃぶ台の前に置かれた座布団に腰を下ろす。


 「使え」


 豚が、丸いちゃぶ台の上にコトリと凍ったアイスノンを置く。


 「……」


 俺は、好意に甘えて腫れ上がった目蓋にアイスノンをあてがう…冷たすぎるソレは痛みに追い討ちをかけた。



 「へぇ…冷蔵庫とかあんのか…」


 「ああ…? 下の部屋には無いのか?」


 俺の言葉に、豚は訝しげに繭を顰める。


 「無ぇよ…食堂の共用の奴しか…」


 片方の目で豚の部屋を見回す。


 豚はその図体からは想像できないが、かなり綺麗好きなのか…それとも一人部屋だからなのかまず臭くないしゴミ一つ落ちてない…てゆーか部屋に家具らしいものが圧倒的に少ない。


 あるのは、この丸いちゃぶ台にレテビ・冷蔵庫・ベランダの方に洗濯機か?


 後、二つの部屋も扉が外され中が見えたが空っぽだ。


 何故だろう。


 人が住んでるって感じがまるでしない。


 「玉城」


 ズシンと巨漢が、ちゃぶ台を隔て俺の前に座る。


 「お前、何で学校来たんだよ?」


 豚は、肘をつきさも理解出来ないとガジガジと汗ばんだ坊主頭をかく。



 「何でって…俺は殺ってないからさ」


 「…にしてもよぉ…疑われているんだろ? 何で来れるんだ?」


 俺は、ようやく柔らかくなったアイスノンを持ち替え豚をチラリと見る。


 「お前も俺を疑ってるのか?」


 豚はう~んと唸りまた頭をかく。


 「まぁ…100%信ろってーのは無理な話だな」


 豚は、立ち上がり今度は冷蔵庫からスポーツドリンクの500mlペットボトルを二つ取り出し一つを俺の前に置いた。


 バキッ…ゴキュゴキュゴキュ。


 豚は、一気に自分の分を飲み干し真剣な眼差しで俺を見据える。


 「はっきり言って、金城やクラスの連中が疑うのは無理も無い話しなんだよ…なにせお前は部活をクビになったにも関らず学校に居続けている変り種なんだからな…」


 「…」


 「しかも、三年生の三学期…三年間の努力も大学進学も全て失って怨まない方がおかしいだろ? …俺なら耐えられない…全てを失うなんて…」



 豚は、何ともいえない表情で俺を見た。


 ああ…虫唾が走る。



 コレは、『哀れみ』だ。 

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