すべての優しいifを殺して③
『どこだ?』
今朝から何度もメールをするが、返答は帰ってこない。
浩二には聞きたい事が山ほどある…何故あんな事をしたのか? 何を知っているのか? 挙げればきりが無い。
とぼとぼと歩くうちに階段が終わりを告げ、俺は夕日が差し込むもうすっかり人のいなくなった靴箱にさしかかる。
流石と言うかなんと言うか。
このびっしり組まれたスケジュールをこなす俺の為に、比嘉は担任に俺がHRに加えその他の時間消化に過ぎない授業に出なくてもいいようにすっかり話をつけてくれたらしくお陰で朝少し顔出して出欠を取るだけで後はこんな感じで時間が超過して終われば教室に近寄らなくても帰宅出来るように配慮がなされた。
全く、比嘉にはただえさえ以前命を救ってもらったと言うのに借りばかりが出来てしまう。
比嘉。
お前は本当に脳内花畑のお節介な自分が間違ってるなんて微塵も考えないまるで絵に描いたような清く正しく美しい誰がも認める『正義の味方』だ俺の体中に虫唾が走ってるんだから間違い無い。
そんなお前が、なにをまかり間違って俺なんかを好きなのかは皆目検討がつかないが今回は少しばかり張り切りすぎたんじゃないのか?
はっきり言って、いくら百戦錬磨な正義の味方でも今回の案件は人智を超えていて流石に荷が重すぎだのだ。
俺にも何が何だか分からないが、お前を傷つけたのは間違いなく俺に関る『何か』であるのに間違いはないのだろう…。
比嘉を巻き込んだのは俺だ、いつもの人助けだと息巻いて飛び込んできた馬鹿をもっと上手くあしらう事が出来ていたならこうはならなかったんだ!
ふと気が付けば、俺は医務室の前にいた。
合わせる顔など無い。
けれど、せめてお前がお膳立てしてくれたスケジュールくらいちゃんとこなそうと思っ____。
「そこに、姉さんはいませんよ」
背後から聞き覚えのある声変わり移行期に見られるハスキーな声が、低く響く。
「比嘉弟…」
振り返ると、中等部に在籍している比嘉弟が比嘉そっくりの顔で俺に鋭い眼光を向けていた。
「姉さんは早退させました。 それにこの時間じゃ医務室には誰もいません」
男にしては少し長めの髪の所為で余計に姉に似ている…が、比嘉はそんなに憎悪に満ちた表情を他人に向けることは無いだろう。
じりっっと、比嘉弟は俺との距離を詰めつつ学ランの胸ポケットから細い何かを取り出す。
チチチチチッ…。
丁度、天窓から差し込んだ夕焼けの紅が比嘉弟のまだ幼さの残る細い手のに握られたソレの刃に反射する。
カッターだ、筆箱に入るくらい細身の。
「なんだよ? 今日日の中坊は…筆記用具は凶器ですって?」
「ええ、まぁ…こんなの使た所で僕が貴方に適う筈はありませんが例え殺されたとしても許せないんですよ…」
比嘉弟の目は、見る見るうちに俺に対する殺意に染まる。
嗚呼、非常に残念な事にこの怒れる狂犬の飼い主たる俺の従弟はここには居ない。
キュッっと、中等部2年の青いラインの入った上履きが床を鳴らす。
長めに出されたカッターの刃が、真っ直ぐ俺の腹目掛けて突き出された!
パシッ!
狂犬の手からカッターが弾かれ宙を舞って床に突き刺さり、その衝撃で体制が崩れる。
俺は、体制を崩し床に崩れようとした羽根の様に軽い狂犬の体を受け止めそのまま腕を捻じりあげた。
「ぐ…あっ…!」
「悪いな、俺ってば身に覚えの無い事で死んでやれるほどお人好しじゃないんだ」
腕を捻る俺を、狂犬が恨めしげに見上げる。
「とぼけるな! この筋肉だるまっ! 姉さんと小山田に何をしたっ!!!」
は?
捻っていた腕を放すと、比嘉弟はビタンと情けなく床に顔からつっ込んだ。
「おい」
顔面を強打し、呻く狂犬をひっくり返し学ランの襟を掴んで目線まで引き上げる。
「小山田って浩二のことだよな? どう言う事だ?」
「っく…それはこっちの台詞だっ!」
俺が、あまりにきつく襟を掴んだためか狂犬は苦しそうに呻く。
「ちっ!」
襟を放して開放してやると、狂犬は激しく咳き込みながら床に蹲った。
「吐け! 何があった? 浩二がどうしたって?」
「ゲホッ! 貴方っ…本当になにも ゲホゲホッ?」
狂犬は、俺を訝しげに見上げ言葉を続ける。
「姉さんは、昨日の晩貴方に呼ばれたと家を出て行きました…そしてこんな事に…小山田も昨日貴方のお見舞いに行くと家を出たきり戻ってません…どう考え____」
「待て待て! 何だって? 俺に呼ばれた!? 浩二も家に帰ってないだと!?」
思わず学ランの襟を掴んだ俺の手の中で、狂犬が声も出せずにコクコクと頷く。
冗談じゃない! 1mmも身に覚えがねぇぞ!?
少なくとも浩二は、不穏な動きをした以外は元気で普通に家に帰って行ったはずだし比嘉については全くもって論外だ俺は呼び出してなんかいないそれに___。
「本当に夜から学校に来ていたなら、何であいつ制服だったんだよ!」
「姉さんは持ってる服が極端に少ないんだ! 中でもスカートなんて制服意外に持ってない___貴方に会うから着て行ったんでしょう!」
俺は、締め上げられたまま顔を真っ赤にして叫ぶ狂犬の襟を離してやる。
そう言えば、俺の前に現れる比嘉は100%制服姿だった!
「ゲホッゲホッ! それにっ、返すものがあるとゲホッ…貴方と一緒に姉さんを見つけてくれた人がそんなモノは見なかったと言ってました…だから僕は貴方が犯人だと____」
比嘉が俺に返すもの…一体何の事だ?
「本当に貴方じゃ無いんですか?」
なおも疑いの目で俺を見上げる狂犬に、俺は首を振る。
「俺じゃねぇ…それに浩二は確かに家に来たが元気に帰って行った、それはぶ…仲嶺って奴が一緒に見てたから間違いない比嘉を医務室に一緒に運んだのもそいつだ」
「ああ、それなら僕も会いましたね…いらないと言ったのに自宅まで姉さんに付き添って来ましたから」
狂犬の眉間に皺が寄る。
どうやら豚は、比嘉の弟である狂犬に嫌われたらしい。
「何が起きてるんです? はっきり言って僕は貴方を疑っていますが_____今の貴方が嘘を付いているとも思えない!」
比嘉そっくりの真っ直ぐな瞳が俺を捉える。
「分からない…俺にも一体なに_______」
プニニーチェリー!
プニニーチェリー!
プニニーチェリー!
俺の学ランの胸ポケットで、愛用の赤いスマホが間抜けな着信音と共に震える。
っち、マナーモードがなんで外れてるんだよ!
「どうぞ、出て下さい。 今は刺したりしませんから」
狂犬に促され、俺はポケットからスマホを取り出し画面を見た。
「!?」
間抜けな着信音に身を震わせた画面には、『県警少年:青沼王将』と表示されている!
俺はもう嫌な予感しかせず、震える手で画面にふれ耳に当てた。
「…はい」
『玉城君! ああ良かった!』
電話口から突然俺の名を呼んだのは、安堵したような女の声!
『私! 赤又ですよぉ!』
「あっ赤又さん…?」
それは、青沼さんの部下の赤又だった。
『ザザ…ちて、落ち着いてザザ…きくですよ!』
何処から掛けているのか、ノイズまじりの赤又声は落ち着なく捲くし立てる。
『君の家が全焼しました』
その言葉に、俺の頭は真っ白になった。
『どうザザッした!? 聞こえてますか!? ザザザザッ』
ノイズの所為で俺に聞こえてないと思ったのか、赤又はひたすら『全焼』と言う言葉を繰り返す。
「…家族は……俺の家族は無事ですか?」
たっぷりの沈黙の後、俺はようやく擦れた声で問う。
『ザザザ学校に行ってた子達は確認取れたけど…』
電話口の赤又は言葉を詰まらせる。
「言え…はっきり言えよ!!」
突然怒鳴った俺に、比嘉弟はただ事ではない気配を感じ後ずさる。
『まだ、君の祖父母とお母様それに叔父さん達の安否の確認が出来てないですよ……』
おろおろとした赤又は、尻すぼみに言葉を濁す。
「直ぐ行く」
『あ、ちょっとま___ブッ』
俺は、電話を切るなり走った!
家が全焼!?
この目で見るまで、赤又の言葉なんて信じられない!
背後で何事か叫ぶ比嘉弟の事などすっかり眼中には無く、只ひたすら駆け丁度来たバスに飛び乗った!
バスに揺られている間も悶々としようやく下りた最寄のバス停から更に全力疾走する!
家に近づくにつれ、鼻につく焼け焦げた匂いにうっすら舞う煙が鼻を掠めてもそれでも俺は信じてなかった。
あの角を曲がれば、家があると_____。
「はっ…はっ…嘘だろっ……!」
俺の目の前にあったのは、あまりに残酷な事実だった。
止めどなく続く消防車の放水活動。
群がる野次馬。
もはや原型など留めていない1階平屋建てのご近所かた若干浮いた感じだった赤瓦のどこか南国風の我が家。
すっかり鎮火し焼け焦げた鉄骨かたら漂う煙が、茜色から少し暗くなった空に上る。
「ぁ…ぁ……!」
鉄の匂い。
俺の目に『あの日』の出来事が鮮明に浮かぶ!
嫌だ!
止めろ!
見たくない!
頭が割れるような錯覚に陥り、野次馬の中で膝を着いた俺は胃の中のモノを全てぶちまける。
近くにいた誰かが、悲鳴を上げて俺の傍から飛退いた。
ざわめく野次馬どもの喧騒が、どこかぼやけて遠巻きに聞こえる…世界もどこか水を吸ってぶよぶよにしわがれた指先みたいに感覚が遠い。
"つかまえた"
朦朧とした意識の中で、奴は嬉しそうに言ったんだ。
**************
ゴッ!
鈍い音がして激痛が走り視界がぶれた。
「兄ちゃん!」
頭が割れるよ…割れた激痛とぶよぶよにぼやけた世界で小さな腕が倒れる僕を受け止める。
「逃げられると思ったのか?」
血の付いた鉄のハンマーを弄びながら、お父さんが笑いながら言った。
お父さんは、自分は可哀想な人間だと言うのが口癖で自分がこうなったのは僕の所為だから僕はお父さんのサンドバックにならなくちゃいけないんだっていつも言ってる。
僕は、生まれた事がもういけない事でお父さんから『夢』を奪ってしまったんだってお母さんが言ってた。
だから、僕はいつでもお父さんが殴れるようにしてなきゃいけないんだ。
ずっとずっと、一人で殴られてたある日。
お母さんが、赤ちゃんをつれて病院からもどってきた。
赤ちゃんは僕の弟で『剣』って名前だって!
僕はずっと一人だったから、嬉しくて嬉しくてずっとずっと赤ちゃんの剣を見てた。
可愛い可愛い僕の弟。
剣と一緒なら、お父さんにどんなに強く殴られてもお兄ちゃん平気だよ!
僕は、中学生になっても相変わらすお父さんのサンドバックだった。
体中痣だらけで、体育の着替えも恥ずかしい…教師に根掘り葉掘り聞かれるのも嫌になったのであまり学校には通わなくなった。
僕は、罰を受けているんだ邪魔をしないでくれ!
学校の保健室から強制的に連れて行かれた病院でそういったら、恐い看護婦さんに抱きしめられてびっくりして突き飛ばしたら看護婦さんは泣いていた。
その事をお母さんに言ったら、怒って学校に電話して『もう学校には行くな』と僕に言った。
それから、僕は学校に行かないでお父さんのサンドバックだけやってた。
剣は、そんな僕をいつも心配して小さな手で傷の手当てをしてくれた…僕はそれだけで十分だったのに…!
「兄ちゃんをいじめるなぁぁぁぁぁ!」
いつものように、僕を殴っていたお父さんに剣が体当たりをしてしまった!
体当たりされて少しよろめいたお父さんが、いつも僕を見るときの目で僕の前に立って両手を広げて震える小さな剣を見て次の瞬間、その髪の毛を捕まえて部屋中を引きずり回した!
僕は、恐怖のあまり剣が…大事な弟が泣き叫んでいるのに只ぼーっと見ている事しかできなかったんだ。
「ごめんねごめんね」
気が済んだお父さんがお酒を飲んで寝てしまった後、動けなくなっていた僕をボロボロになった剣がぎゅっと抱きしめた。
「守ってあげられなくてごめんね」
ズキン。
「兄ちゃんばっか痛かったなぁ…オレがもっとつよかったらこんな事させないのに…!」
ズキン。
「オレつよくなるから、もう兄ちゃんだけこんなの駄目だ」
ズキン。
駄目だ…剣、もう言わないで…知らない振りしてたのに気付かない振りしてたのに!
「痛いよ…もうやだよ…」
「うん…うん…」
「たすけてっ…剣」
馬鹿な僕は、8つも年下の弟にすがり付く事しか出来なかったんだ。
それからは、剣も殴られるようになってしまった。
まだ、学校に行ける剣は学校の先生や保健室の先生に僕を助けて欲しいと頼んだらしいけど皆本気にしてくれなくて…と言うかお母さんが剣はウソツキの病気だからと言った所為で誰も剣の言う事なんか信じてくれなくて誰も助けてくれなかった。
だからあの日、剣は言ったんだ。
「泣かないで、大丈夫オレが必ず守るから…お父さんの追いかけてこれないくらい遠くに二人で逃げようよ___ねぇ、兄ちゃん」
何処逃げるのか聞いたら、剣はトモダチになったパチンコ屋さんのお兄さんが少しの間泊めてくれるからそれから考えようと言った。
他にも、クラスの友達のお父さんとゲートボールのおじいちゃんがが剣の体の傷に気がついて警察に知らせてくれてるらしい事も…もう少し待っていようと思ったけど僕がもう限界だから今日逃げようって!
パチンコのお兄さんとは、夜にバス停の近くにあるパチンコ屋さんの前で待ち合わせていると言う。
僕は胸が高鳴った!
逃げよう、剣と一緒に_____。
けれど、子供じみた逃走劇は家のリビングで幕を閉じた。
熱い!
熱い!
ハンマーで殴られた所が燃えるようだ!
ぶよぶよの世界で、僕を呼ぶ泣きそうな剣の声が遠くにも近くにも聞こえる。
僕はなんて馬鹿だったんだろう…こんなにこんなに小さくて幼い弟に頼って!
助けて貰おうと思うなんて!
僕は、お兄ちゃんなのに!
僕が守らなきゃいけないのに!
僕は、剣の腕からのろのろ抜け出して生まれて初めてお父さんに殴りかかった!
恐くて恐くて仕方なかったけれど、僕はお兄ちゃんだから剣を弟を守らなきゃ!
けれど、そんな僕に下されたのは硬い鉄ハンマーだった。
今度は、横から激しく揺さぶられ一気に気持ち悪くなった所に更におなかに激痛が走ったと思ったら僕の体が吹き飛ばされてガシャンと食器棚に背中を激しくぶつける!
そんな姿に、剣が狂ったように叫んで僕を呼ぶ!
「ァッ…だっ」
食器棚に跳ね返ってうつ伏せになった僕は、『大丈夫だ』と剣に言おうと顔を上げた。
その時見えたのは、剣が鬼のような形相のお父さんに捕まる姿。
「け______」
ガシャン!
ガラスの割れる音と、背中と肺を襲う圧迫感_____僕の上にぶつかった食器棚が倒れてきたのだ!
床と食器棚の隙間から見えるばたばたもがく剣の小さな足。
助けを求める絶叫。
もがいてももがいても持ち上がらない食器棚。
弾けるような音がして、全てが終わった。
夕焼けの茜色が照らすフローリングに広がる血の海に、もう何も映すことはない淀んだ瞳で虚空を見詰めたまま横たわる小さな弟。
食器棚からようやく這い出た僕は、血の海を這って弟を抱いた。
抱きしめたそれは、いつも体温が高くて熱いくらいだったはずだったのにどんどん熱を失って只の肉になろうとしている。
笑い声がして、僕はふと視線をあげた。
少し離れたソファの上で、お父さんがテレビを見ながらビールを飲んでいる。
血の海の中には、真っ赤に染まったハンマーが無造作に放り投げられていた。
「ちょっと待っててね」
僕は剣にそういって、ハンマーを拾ってソファーでテレビを見ているお父さんの所に行って思い切り頭を殴りつけた。
お父さんは、頭から血を流し情けない声を上げながらソファーの向こうに逃げたから僕はひょいとソファーを飛び越えてもう1回殴りつける。
すると、お父さんはふらふらしたと思ったらソファーを乗り越えてフローリングの床に倒れて動かなくなった。
あんなに怖かったお父さんさんが、僕と剣をあんなに殴りつけたお父さんが!
なーんだ、こんな簡単な事でよかったんだ!
「剣! 剣! 僕やったよ! お父さんを倒したよ! これでもう恐くない、お父さん僕達のこともう追いかけて来れない、もう大丈夫だよ!」
だから、ねぇ、起きてよ…!
剣は何も言わなかった、当たり前だ。
死んでる。
誰がどう見ても死んでる。
ガチャって音がして、リビングの戸が開いた。
買い物に行っていたお母さんが帰ってきたのだ。
ドサッと、両脇に抱えていた買い物袋が床に落ち剣と良く似たくりっとした大きな目が見開かれる。
「おかぁさ____」
お母さんは、大股で血の池を越えてソファーの傍に倒れてるお父さんの所へ駆け寄ってしきりに『きょうちゃん! きょうちゃん!』と声をかけそして僕をギラギラした目でにらみ付けた!
「圭! アンタがやったの!?」
「お母さん、お父さんが剣を_____」
お母さんは、大声で黙れと言った。
「お父さんに謝りなさい!」
そして、僕は見た。
お母さんに抱えられていたお父さんの指が、ピクリと動いたのを。
どうして?
何がいけなかったんだろう…僕が弱かったから?
馬鹿で愚かだから?
自分では何もしようとしないで、助かろうなんて思ってなくて、何も考えないで…こんな小さな剣に全て押し付けて______。
僕がもっと体が大きかったら。
僕がもっと強くて優しかったら。
剣を守れたのに…。
ぶくぶく世界がふやけて歪む。
要らない。
自分の事しか考えないお父さんも、お父さんの事しか見えないお母さんも、自分ことさえ見えない僕も。
みんなみんな要らないから。
どうか、剣を返してください。
ぶくぶくぶくぶくふやけて歪む。
"駄目だ! その力を使ってはいけない!"
誰かが叫ぶ。
"そんな事をしたら、世界が歪んでしまう!"
だって、此処じゃ剣は死んだままだもん。
"それは、可哀想だが避けられない運命だったんだ!"
駄目だよ、僕もう決めたんだから。
止めようとする不思議な声を押し切って、愚かな僕は枝を真っ直ぐ縦に切り裂いた。
それが、破滅に向うとも知らずに。




