5 親の会での出会い
学習障害ルポ5・親の会での出会い
問題を起こしているのは陽太。先生が怒るのも当然だと思う。しかし、なぜ文字がみんなのように読めないのか…なぜ場にそぐわない行動をとってしまうのか…陽太本人にもそのわけが分かっていなかった。そのため怒られるたびに、陽太はパニックに陥っていた。
学習障害(LD)児の大半は、なぜ自分がみんなと同じようにできないのか分からないで混乱している。
例えば空間認知に問題のある子供の場合、「ろ・る」はどこが違うのか認識できない。しかし先生やみんなは全く違う文字だという。そして教科書をみんなの前で読むたびに笑われる。この体験の繰り返しは、勉強に対する強烈な劣等感を植え付けてしまう。
特に“ひらがな”という学習の入り口でのつまずきは大きい。また依然として成績重視の教育体制の中では、勉強が分からないということは大きなハンディになってしまうのである。
しかし、この苦しい時期が典子にとって転機となった。まず本を読んでLDの知識を付けることにした。そして何より「LD親の会」に入会したことが大きかった。そこには同じ悩みを抱える親が大勢いた。
正式名称は「全国LD親会」。総会員数約2700人で、会報による情報交換や、行政への働き掛けなどを行っている。構成団体である長崎のLD親の会「のこのこ」は、1990年に全国でも8番目に発足した。現会員数は120人で、九州では最大規模の組織である。
―いろいろな悩みを聞いた。産んだ母親のせいにされ、家庭の中で孤立している人。家でのしつけが悪いせいだとPTAでつるし上げられた人。そして典子も悩みを打ち明けた。
「うちの子もそうだったけど、こうすれば大丈夫よ」。とりわけ年上の子供を持つ親からのアドバイスには説得力があった。ようやく典子も陽太の障害に対して、前向きに考えられるようになっていった。