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1 プロローグ


 陽太(17)=仮名=は長崎市内の県立単位制高校に通う元気な男の子だ。部活動は太鼓部に所属し、春の文化祭では全校生徒の前で見事なばちさばきを披露した。性格も明るく、友達も多い。ピアノの腕もなかなかのものだ。そんな陽太にも苦手なものがある。それは“漢字の書き取り”だ。

 


 まず「字・宇」の見分けがつかない。先日の期末試験でも「うつのみや」を漢字で書けずに×をもらった。中学校までは「め・ぬ」など、似たひらがなの違いが分からず苦労した。視力が極端に低いわけでもない。医療機関で検査を受けたこともあるが、知能指数は平均よりむしろ高かった。しかし“文字の認識”が苦手なために、学習面で遅れをとっているのは事実だ。

 


 近年教育現場で、読み書きや計算など特定分野の習熟に困難を示す子供たちの存在が指摘されている。学習面で問題が顕著に表れるため「学習障害(LD)」と呼ばれている。アメリカでは俳優のトム・クルーズらが自身の学習障害を公表し支援活動を行うなど、よく知られた障害である。しかし日本では教育現場を中心に、この4、5年で浸透し始めたのが現状だ。

 


 県教育センター(大村市)が1998年度に行った実態調査では、対象児童の約1・35%に「LDもしくは学業不振、軽度の自閉的傾向、知的障害が見られる」と報告された。しかし一般的にはクラスに一人の割合でいるといわれている。同センターの職員らは教育相談の経験を基に、LD児などへの理解や指導法をまとめた手引書を自費出版し反響を呼んでいる。また事態を重く見た文部科学省は、平成13年度から全国調査を実施した。

 


 日常生活はほかの子供と同じようにこなせるのに、学習面では遅れが出る。そのため本人の努力不足や親のしつけの不備と誤解されることが多かった「LD」。しかし研究が進むにつれ、脳神経系の軽い障害が原因であることが分かってきている。

 


 ここに長崎県内に住むLD児陽太の軌跡がある。彼の歩んできた17年間を通して、知られざるLD児の現状と教育現場の問題点を探っていく。



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