しゃらしゃら
遠くで、音が聞こえる。
私とは、無縁の。
でも、私はうれしい。
この、音がある世界にいられることが。
私の側には今、何もない
まだここには、誰もいない。
でもね、遠く離れたどこかには、何かがあるの。
この音を、聴いている誰かが、いるの。
同じ世界に、今この瞬間を、共有しているものがあるの。
それが、実感できる。
ここは、この先何かができる。
いつか、誰かがやってくる。
だからね、私は哀しい。
そのうち、この音のある世界にいられなくなることが。
近くで音がしていても、私はそれに、気づかない。
この音を誰かが聴いて、どう思うのか。
私はそれを、想像できなくなる。
それが私には、哀しい。
だから今の内に、楽しんでおかなきゃ。
この、音に満ちあふれた世界を。