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8 アレクシス殿下 前編

アレクシス殿下の視点です。前編、後編連続で投稿します。

別視点というのは難しくて上手く出来ませんでした。すいません。

 

 僕はアレクシス・ガルシア、8歳だ。


 僕は護衛を連れて婚約者を決めるため、何人もの年の近い令嬢達の家に向かい面会をしていた。


 何でわざわざ僕が自ら出向いているかというと、父上に言われたからだ。


 父上は自分の婚約者は自分で決めろとおっしゃった。それは僕も賛成だったが、城に呼べば良いものを僕に行かせるのだ。


 父上は素晴らしい為政者だが、悪戯が好きなところがある。今回は多分、僕に向かわせた時の相手の反応を想像して楽しんでいるのだろう。


 それは置いといて、どこの令嬢も無駄に着飾っているアホばかりだ。家格の高いところから向かってるのが悪いのか、高飛車なやつも多い。


 僕は自分の顔がそれなりに整っているのは自覚している。なので、僕が婚約者を決めに来てると知ると、自分が選ばれて当然といった風に絡んでくる。


 本当に鬱陶しい。


 やっと、最後の一人になった。ここの令嬢は公爵家なので王家に次ぐ権力かある家だ。身分でいえば申し分のない。確か、ホーバット公爵だったな。


 実はホーバット公爵家には最初に来たのだけど、どうしても都合が合わないと言って後回しにしていた。


 ここの令嬢も高飛車なアホなんだろうな、いや、権力でいえばこれまでの中で最高だ。もっと酷いのが出てくるんじゃないか?


 そう戦々恐々しながらドアをノックする。だが、いつまで待っても誰も出てこない。


「アレクシス・ガルシアだ! 誰か居ないか!」


 大きな声を出して誰か居ないか確認すると、ドアの向こうが騒がしくなってきた。

そのまま、少し待っていると執事らしき白髪の男性が出てくる。


「お待たせしました。本日はどのようなご用件で?」


 イラッ。


 前に来た時伝えただろ?


 そう言いたいのを堪える。この人に言っても何の意味もない。王家の器は小さいと言われるだけだ。

 

 フー、どうやらこれまでの令嬢達の面会で大分ストレスが溜まってたようだ。


 内心のイラつきを出さないように答える。


「知っての通り僕は婚約者を決めなければならない。なので、ホーバット公爵家の令嬢と面会がしたい」

「誠に申し訳ございません。本日は旦那様が留守にしているのでまた後日いらしてください」

「呼び戻せないか?」

「はい。今はとても忙がしい時期で……」

「分かった。また来る」


 この時、僕にはもう来ないという選択肢は無かった。意地になっていたのだ。絶対に会ってやると意気込みつつ、その日は城に帰った。


 何度も追い返されるとも知らずに……。


*****


「今日こそはどうだ?」

「誠に申し訳ございません。本日も旦那様は留守にしております」

「ほーう、今日は何も無いから家に居ると聞いているぞ」


 目の前の執事は僅かに狼狽えたようだ。


 ふん、こう何度も追い返されれば嫌でも対策をとるさ。

 わざわざ城の人に頼んでホーバット公爵が必ず家に居る日を確かめさせて、具合が悪いと言われた時のために医者も連れてきている。


 まあ、何度もここに来ているせいで周りから、婚約者はホーバット公爵家の令嬢に決めたと言われてるがな……。

 どこの令嬢も似たようなもんだし、別に後悔はしていない……多分。


 やっと、家に入ることができた。


 家の中は他の貴族の家とは違い実用性のある物ばかりだ。どうも、公爵夫人の趣味のようで落ち着く雰囲気だ。

 これは、令嬢の方も期待して良いのかな?


 テーブルを挟んで僕の目の前に座っている男はホーバット公爵だ。先程から親の敵を見るような目で見てくる。すごい迫力だ。


「本日はどのような用件で?」

「僕の婚約者を決めるために、貴方の娘さんと面会がしたい」


 そう言った途端どこからか、何かが割れる音がした。発信源は目の前、ホーバット公爵のマグカップの持ち手が割れた音だ。

ホーバット公爵は難しい顔で何かを考えた後、口を開いた。


「クロエを連れてきてくれ」

「……畏まりました」


 ホーバット公爵は傍に仕えていた執事にそう言うとこちらを鋭い目で見た。


「殿下、私はあくまでもクロエ、私の娘の意思を尊重したいのです。王家には忠誠を誓っておりますが、一人の親として娘の幸せを望んでいるのです」


 この様に家族を大事にする者は嫌いじゃない。権力にまみれた者だと、肉親であろうとも容赦なく道具の様に使うからな。


「分かった。その時は諦める」


 そもそも、まだどの様な人物か分からないしな。


「…………クロエは誰にも渡さない、私と結婚するのだ」


 小さい声で言っているようだが、丸聞こえだぞ。



 ホーバット公爵と話していると、ドアからノックする音が聞こえてきた。


「入れ」


 その瞬間僕の時間は止まった。僕と同い年であろう少女は、晴れ渡る青空のような髪を背中に流し、少し切れ目な目は透き通る様な神秘性があり髪と同じ空色だ。


 ──美しい。


 少女を見た時、僕はその言葉が自然と頭に浮かんできた。今まで見てきた令嬢達がどんなに着飾っても、地味な服を着たこの少女には敵わないだろう。


「クロエ、こちらはアレクシス殿下だ。クロエと話がしたいとの事だよ」


 僕の物にしたい。


「クロエ・ホーバットです。よろしくお願いします」


 気付いたら僕はその言葉を発していた。


「僕と結婚してくれ」


 ロマンもへったくれも無い求婚に彼女は驚いたようだが、次の瞬間には年相応の笑顔で笑っていた。


「はい。よろしくお願いします。殿下」


 恋に落ちた瞬間だった。




 ……鬼のような形相で睨んでる人は見なかったことにしよう。



 クロエと無事婚約したのだが、色々とホーバット公爵に条件をつけられてしまった。

 別に破っても良いやと思っていたのだが、破ったら直ぐにでも婚約を破棄すると言われてしまった。あの親だと本当にしそうなので守ることにした。

 それで付けられた条件とは大まかに言って性交渉はダメ、結婚するまで唇に口付けはダメという事だ。

 前者のは分かるが、婚約者になった者達は大体しているのがほとんどだと聞いているので少し残念だ。

 後者ははっきり言って守れる自信が無い。付き合うとキスをするのは自然の摂理だと思う。

 今はまだ大丈夫だがクロエが成長したら、一番の敵は僕の欲望だろうな……。


 頑張れ未来の僕。


 クロエと婚約してしばらく経つが、可愛くて仕方がない。

 何だあの可愛い生き物は? 僕の顔を見ると『殿下~』と言いながら抱き付いてくるんだ。唇にキスをしそうになるのを鋼の精神で軌道を変えて手の甲に口付けをする。

 どこで執事が見てるか分からないからな……あっ、廊下の角から覗いてる。

 手の甲に口付けをするとクロエは顔を赤く染め、手を頬っぺたに当てて『いやいや~』とくねくねする。城に持って帰りたい。


 この様に小さい内は良かったんだがクロエが成長するにつれて、体つきも女性らしくなっていくわけだ。勿論僕も成長しているわけで、そろそろヤバくなってきた……主に下半身が。


 このままではクロエに手を出すのは時間の問題になってしまうと思い、僕は断腸の思いである対策をとった。それは、結婚するまでクロエと会う回数を減らすということだ。

 この年になると王になるために、父上の仕事を手伝ったりしないといけないため集中出来るという意味では調度よかった。それに、たまに会うというのは毎日会うより嬉しさが何倍にもなった感じだ。

 日々公務をこなして、たまにクロエに会いに行く。そんな風に過ごしていると父上から聖女が召喚されると報告を受けた。


「聖女ですか?」

「うむ、最近魔物の動きが活発でな、もしかしたらと思い『召喚の間』を調べさせたら近い内に聖女が召喚されることが分かった」


 聖女が召喚されたら魔物の発生を抑えられ、今より国民が安心して暮らせるのだが、父上の顔は優れない。何か問題でもあるのだろうか?

 そう不思議そうな顔をしているとそれに気付いた父上は応えてくれた。


「国民には聖女を信仰している者がいて、その数は決して少くない。その聖女を取り込もうとする輩も出るはずだ。もし、聖女が敵対したらこの国は真っ二つになってしまうのだよ」


 面倒くさいな、と言いながら父上はため息を付いている。

 確かに野心家な者達が聖女の存在を逃すとは思えない。それを防ぐならどうしたら良いか?

 何かいい方法はないか考えていると、父上が何か閃いたのかニヤニヤしている。


 ……嫌な予感がする。


「ふむ、この方法でいくか。何より面白そうだ」


 どうか父上が暴走しませんように。


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