表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

11


 オレストさんは凄いよ。

 私も殿下の事、乗り越えられるかな──。


「だからね、後からいじけない為に今出来る事を全力でやる。あの時ああしていればなんて事には絶体しない。失敗しても少なくとも後悔はしないと思うし、それを糧にしてまた頑張ればいい」


 ──今出来る事を全力でやる。


 いつもヘラヘラしているだけかと、思っていたオレストさんは私なんかより余程立派だった。とても前向きで明るい。まるで私の弱さを浮かび上がらせているみたいだ。


 でも、逃げてはダメだ。


 殿下が伊藤さんと結婚するって分かってから、私は何もしてない。どうせ無駄なんだって諦めてた。

 きっとこのままじゃ後から後悔する。


……私もオレストさんみたいに頑張れるかな。

 きっと沢山失敗すると思う。


 でも、“それを糧にしてまた頑張ればいい”だよね。


 私も立ち止まってないで前に進もう。それで失敗しても乗り越えてみせる。


 オレストさんは、こんな大事なことを私に教えてくれた。

 凄いよ、オレストさん。今日のオレストさんは──。


「格好いいな……」

「えっ!? 何で、デレ期!? お願いもっかい言って」

「嫌です」

「ちくしょーっ!! 録音したかった。でも、何でいきなり……」


 オレストさんは頭を抱えて何かブツブツ言ってる。ここだけ見ると残念に見えるな。


「オレスト殿のお陰で私も頑張ろうと思いました。取り敢えず初心にかえって、殿下に気持ちを伝えようと思います」

「えっ!? 嘘っ!! 敵に塩を送ってしまったのか俺は!? くそっ、過去の俺何やってんの。あぁ最悪だ」


 物凄く後悔してるよ、オレストさん……。


 まあ、今日はオレストさんのお陰でこれからやるべき事が見つかった。

 殿下に気持ちを伝える、後悔しないように。


 嫌われてたら、流石に泣いても良いよね……。


「今日は身に染みるお話しを聞かせて頂き、ありがとうございました。それでは」

「って、ちょっと待って! 何かもう今日は、さよならする雰囲気になってるよ」


えっ、その通りなんだけど。帰らないのかな?


「何かあるんですか?」

「いや、何も無いんだけど……そうだ! 今度一緒に出かけない? ダメならあきらめるけど、てか、どうせダメって言うよねぇ……」

「いいですよ」

「やっぱりねぇ…………えっ!? 良いの!? 今良いって言ったよね! やっぱり無理とか言わないでよ」


 最近はオレストさんに面白い話を聞かせてもらってたし、今日はとても大事な事を教えてくれたし。買い物くらい手伝いますよ。何を買いに行くんだろ?


「何を買いに行くんですか?」

「何を買いに行く……? 別に決めてないけど」


 決めてないのに買い物に行くんだ。ウインドウショッピングってやつかな?


 そういえば私ってあんまり買い物に行ってないな。欲しい物は言えばすぐに手に入ったし。どんな感じ何だろう? 少し楽しみだなあ。


「じゃあ明日迎えに来るからね」

「はい、楽しみにしています」

「う、うん。じゃ、また明日ね~」


 そう言うとオレストさんは窓から出ていった。

 やっぱり窓から出て行くんですね……。


 私はオレストさんが帰ってから、これからどんなイベントがあるか考える。


 この前の初キスが終わったから、次は手作りお菓子を作るんだっけ……。

それじゃあ、キッチンに行ったら伊藤さんにばったり会いそうだなあ。別に行かないけど。


 その後は聖女としての仕事で町の外に行くんだっけ。

 そうしたら、殿下に告白するならその時にしよう。多分それ以外だと殿下の傍にはずっと伊藤さんがいるだろうし。


 そうだ! 明日出掛けた時に殿下に何かプレゼントを買って、告白の時に渡そう。我ながらいい考えだ。何を買うかは実際に見ながら決めればいいや。ああ、明日がもっと楽しみになった。


 私はウキウキしながら明日の準備をしていたが、ある問題に気付いた。


「明日、何を着ていこう……」


 貴族の高そうな服なんかで行ったら悪目立ちしそうだ。でも、一般的な人がどんな服装をしているか分からないし……。


 こう言うときは……。


「ミラーっ! こっち来てー!」


 私の侍女のミラを呼ぶ。取り敢えずミラに任せれば大丈夫なはず。

 呼んでから直ぐにミラは来た。


「クロエお嬢様っ! わざわざ大声を出さないでこの鈴を鳴らしてください!」


 怒られてしまった。


「ま、まあ、それはいいじゃない。それより明日は外に買い物をしに行くんだけど、何を着ていけば良いかしら」

「欲しい物があるなら私が買ってきますが?」

「オレスト殿と一緒に行くの」

「あの人とですか! うーん、あの人とですか……」


 ミラは何か少し考えながらブツブツ言っていると、何か決心がついたのか凄く良い笑顔で返事をしてきた。


「……よしっ! 任せて下さい! クロエお嬢様のために私も一肌脱ぎます!」


 ミラはサムズアップしながら言ってきた。

 服を選ぶだけでこんなに熱くならないでもと思うけど、頼もしいからこのままにしておく。


「それじゃあ、選びましょ」

「はい!」


 そう言ったもののミラが全部決めていくから、私が服を選ぶことは無かった……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ