三話 ステータスと神の試練
「ここで働かせてもらうことになりました。どうぞよろしく、ツナギ様」
「よ、よろしくなのじゃ」
「趣味はナイフ収集と料理。特技は投げナイフ。好きなものはナイフです。因みに嫌いなものは凪です」
「どうしてこうなったのじゃ⁉︎」
orzと両手両膝をつくツナギ様。
「凪ちゃん⁉︎ 話し合いはどうなったのじゃ⁉︎ 余計拗れた関係になっておるのじゃ!」
「話し合いの結果、士人をあたしの下僕にしただけよ」
「なんで⁉︎ 謝るべき方がどうして主導権を握っておるのじゃ⁉︎」
「そうね、あたしの人徳のお陰じゃない?」
「ダウト‼︎ 凪ちゃんに人徳なんてないのじゃ‼︎」
ツナギ様はどんどん混乱していく。そして、凪。お前は説明を面倒くさがりすぎだ。
「ああああぁぁぁ‼︎ もう、どっからツッコミを入れればいいのかわからないのじゃ‼︎ 凪ちゃんの説明は要領を得ないし、士人くんは士人くんで黒い笑みを浮かべてるだけだし‼︎」
「えー、やだなぁ。黒い笑みなんて浮かべてませんって。次は誰かさんを確実に殺せるように銀製のナイフに猛毒でも塗ってみようかなぁ、とか思ってませんから」
「怖いのじゃ⁉︎ え、ホントこの数十分でいったい何があったのじゃ⁉︎」
「勝者がどっちなのかはっきりさせただけよ。もちろん士人が敗者ね」
「要は和解出来てないのじゃろ? 肝心の眷属化のデメリットとかも話していないと見た」
「う、それは………」
「デメリットがあるんですか?」
「うむ。まず【教会】の連中に狙われるの。彼奴らは吸血鬼を特に目の敵にしておるし」
【教会】、か……。やはりヴァンパイアハンター的なものだろうか?
「二つ目は吸血衝動じゃの。まぁ、これは眷属の場合そこまで酷いものじゃないから安心せい。血を大量に失ったりしたら話は別じゃがの」
「昨夜の巫女さんが血を吸ってきたのってもしかして……?」
「うむ、その通りじゃ。凪ちゃんは血を流し過ぎたのじゃ」
やはりあれが吸血衝動か。あぁはなりたくないものだ。
「最後に、寿命の概念が無くなる。これは主ーーこの場合は凪ちゃんが死ぬまで眷属は死ななくなる、という言わば呪いじゃな」
「不老不死………?」
「いかにも。しかし想像してみるのじゃ。周りの人たちが老いていく中、自分だけは若々しいまま生き続ける。そんな地獄、他にないのじゃ」
ツナギ様は悲しそうに目を伏せる。
「死ねないことが呪い、というわけですか。また厄介なものを。しかもその言い方だと凪の寿命も相当長いってことですよね?」
「そうじゃ。一般的な吸血鬼の平均寿命は千年。更にステータスを持つ凪ちゃんの一族は寿命が長くなるから………ざっと五千年は生き続けられるのじゃ」
「ご、五千年ですか。それはまた………」
「ちなみに凪ちゃんはまだ17才なのじゃ。士人くんと同い年じゃ」
ということはあと4980年も凪と一緒にいなきゃいけないのか………はぁ。
「何よ? 不満? 言っとくけどあたしだってアンタみたいな変態ナイフ男と何千年も過ごすのは御免よ」
「それはこっちの台詞だ。性悪巫女。必ずお前を殺して死んでやる」
「ストオォォップなのじゃあぁぁ‼︎‼︎ 二人ともそんな喧嘩腰にならないで欲しいのじゃ⁉︎」
ツナギ様が慌てて僕たちの間に入る。
チッ。……まぁいいや。これから殺せる機会なんていくらでも来るだろうし。今は質問の方が先だ。
「そういえばさっき言ってたステータスって何ですか?」
「ステータスは神々の力を合わせて作られた祝福の一つじゃ。これがあるとスキル、魔法、そして称号を手に入れることが出来るのじゃ」
「スキルと魔法ってのはなんとなく理解できますけど称号って?」
「その人の役職や潜在的な気質、あと特定行動によっての偉業とかが称号になるのじゃ。まぁ、一人一個は確実にあるものじゃ」
「称号があるのとないのとで何か違ったりするんですか?」
「スキルとか魔法の強化、あと身体能力の向上も可能じゃの。あって困るものではないのじゃ」
「へぇ」
凄いなステータス。じゃあそれさえあれば僕も巫女さんを殺れるんじゃないか?
「ステータスの取得の条件とかってありますか?」
「簡単じゃよ。妾の出す試練をどうにか出来れば擬似的とは言え『神の試練』を乗り越えることになる。それで手に入れられるのじゃ。士人くんの場合は………そうじゃのう。妾の部屋の片付けで」
「自分の部屋の掃除くらい自分でやりなさいよ、駄女神」
凪が凄く嫌そうな顔をしてツナギ様に言う。
しかしツナギ様は変える気はないようだ。
うーん?掃除が『神の試練』かぁ。どっかで似たような話を聞いた気が……?
「擬似とは言え『神の試練』よ? 自分の部屋の掃除を試練扱いするんじゃないわよ!」
「あの部屋の掃除は『神の試練』に十分、値するのじゃ」
「あ、思い出した。なんかに似てると思ったら『アウゲイアスの家畜小屋掃除』だ」
ギリシャ神話の英雄、ヘラクレスが挑んだ試練の一つに家畜小屋の掃除があった。成る程、そこから自室の掃除を『神の試練』にしたのか。
「な、なんて酷いことを言うのじゃ士人くん⁉︎ レディーの部屋を家畜小屋と同じって⁉︎」
「ぷっくく。あーはっはっ‼︎ か、家畜小屋……家畜小屋って………ッッ!」
「凪ちゃん笑い過ぎじゃ‼︎」
「あっははは‼︎ ツナギ様さっきはごめんなさい。そんな由緒正しい『神の試練』ならあたしは反対しないわ………!」
「どんだけツボってんのじゃ! あとその認められ方は嫌なのじゃあ‼︎」
「じゃあ部屋の掃除始めてきますね〜」
「士人くんストップ。『神の試練』の内容を変えるのじゃ。流石に家畜小屋の掃除と同レベルだと思われるのは妾の神としてのプライドが許せないのじゃ‼︎」
え? 変えるの?




