二話 僕VS巫女さん
まだまだ拙い点も多いでしょうが頑張っていきます。
僕はたまらずグルカナイフを手放す。
しかし甘い。すかさず反対の手でレッグホルスターからスローイングナイフを3本取り出し間髪入れず投げる。
更にポケットからダガーナイフを取り出し、鞘から引き抜くと、再び接近し切りかかった。
「ちょっ⁉︎ 何本持ってんのよ⁉︎」
「たくさん」
巫女さんは巧みに光の鞭を操って飛んできたナイフを残らず叩き落す。
だが、鞭は戻すまでにタイムラグがある。僕はその隙を見逃さず、今度は突き刺すように腕を伸ばした。
そしてナイフが巫女さんの腹に突き刺さり、白い巫女服を赤く染める。
「ぐぅっ! い、ったいじゃない‼︎こんのナイフ男ォ‼︎」
巫女さんは腹に刺さったナイフを引き抜くと僕の胴体に蹴りを入れて距離を置いた。
「参照、円卓の王アーサー・ペンドラゴン! 指定、対人魔法『エクスカリバー』! 発動‼︎」
紅い瞳を一層紅く輝かせ、殺気を放つ巫女さん。その纏う殺気は先程までとは比べ物にならないくらいに重く、鋭く、狂気に満ちていた。
そんな殺気を受け、僕は
「面白い」
笑った。
こんな相手を待っていた。毎日殺しの特訓ばかりで変わり映えしない日常にうんざりしていた僕は刺激を求めて裏社会に通じる友人の主催するサバゲー(非合法)に参加しようとしていた。普通、銃で戦う殺戮遊戯にナイフを持ち込んでまで。
今まで磨いてきた用途別のナイフの使い方に効率よく肉を引き裂き、関節の間から筋を断ち切る手段、特殊な歩法、気配の消し方。
試したい試したい試したい試したい試したい‼︎
この化け物のような巫女さんにどこまで自己流のナイフ戦闘術が通じるのか試したい‼︎
御幣を水色の剣に変えた巫女さんに僕は真っ向から勝負を挑んだ。
そして二十分後。その思い上がりは完膚なきまでに叩きのめされた。
「ぐっ!ああ、ああああぁぁァ‼︎⁉︎」
右脚を水色の剣で地面に縫い付けられた僕は痛みで絶叫した。
あれから二十分、最初の五分で地力の差を思い知らされ、ハイド&キルの戦法に変更。更に十分後、地の利も向こうがまさっている事に気づかされる。
そして今、まさに追い詰められた。
腹にナイフを刺したはずなのに動きは全く鈍っていなかった。血を流した分、少しは有利かと思っていたのだが、どうやら一定時間が経つと自動的に回復していくらしい。
なんだそれは、と思った。
あまりにも理不尽。あまりにも圧倒的。そして、あまりにも残酷な力の差。
巫女さんは地面に縫い付けられ動けない僕を見て、嗜虐的な笑みを浮かべた。さながらそれは蜘蛛の巣にかかった獲物を見る蜘蛛のような目であった。
「さっきまでの威勢はどうしたのかしら? それとも、もうお終い?」
「ち、くしょ、う」
僕は右手に隠し持っていたスペツナズナイフのギミックである刀身射出を使った。だが、眼球を狙ったそれは首を僅かに逸らされたため、浅く頬を切り裂いただけで避けられてしまった。
「ふ〜ん、まだ動くんだ。でもこれでトドメよ。大人しく異界に帰りなさい」
さっきから言っている異界とは何だろうか?僕は痛みに霞む思考で言葉を聞いていた。
切られていない方の袖から札を取り出し、詠唱を始めようとする巫女さん。
「天津・爆型符術参式、火雷め…うっ!」
巫女さんは突然喉を押さえて苦しみだした。
「血、血がた、りな、い。さ、き流し、たから、か」
そして僕の方を見た。
「その血を、あ、たしに、よこし、なさ、い」
地面に倒れてる僕に覆い被さる巫女さん。頬を赤く染め、荒く息を吐いており、かなり危ない絵面である。だが、そんな甘い展開になるはずもなく、彼女は僕の首元に狙いを定め、その鋭い犬歯を突き立てた。
血がだくだくと流れ出し、その流れた血を啜る巫女さん。
ここまで来て気付いた、この巫女さんは………吸血鬼。
人の生き血を啜り、生きる不死の怪物。
首元から激痛が走り、意識が徐々に闇に落ちていく。
僕が薄れゆく意識の中で見たのは、口元を血で真っ赤に染め、凄惨な笑みを浮かべる巫女さんと、木々の間から見えた丸い満月だった。
ナイフ説明
グルカナイフ……大型のナイフ。通称ククリ刀。
スローイングナイフ……投げナイフ。
ダガーナイフ……刺突用ナイフ。
スぺツナズナイフ……刀身を射出することが可能なナイフ。射出速度は時速60Kmほど。




