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龍と恭  作者: 萩悠
日常編
79/83

バレンタインデー(番外編)

遅れたとかそういうレベルではありませんが一応。


皆さんは良いバレンタインデーを過ごされましたか?

本日は全国の男子高校生が一喜一憂するイベント、バレンタインがある日である。

これを機会に売ってしまおうという、所謂いわゆるチョコレート会社の企業戦略ではあるが、そんなことは恋する乙女や期待する男子達には関係のないことである。

そして、ここにも企業戦略に乗せられた男子が一人。


「横でそわそわすんな龍。うっとおしい。」


「え?いや、俺は何も期待してるわけじゃないんだよ?」


「誰が言い訳を聞いた。大体お前大量に貰ってたろ。」


「そうなんだけどそうじゃなくって!」


後ろ向きに座った龍は恭の机に出来上がった袋の山の隙間に顔を埋めた。


何故龍がそんな態度になっているかというと、時間は昼休みの始めに遡る。



普段は菓子類の持込は禁止という校則であるが、何せバレンタインというイベント。

そんな日に女子達が素直に「はいそうですか」と言うわけもなく、バレンタインデーとホワイトデーに限っては広陵学園こうりょうでもお菓子の持込が黙認されている。

お陰でバレンタインデーには撃沈する男子生徒が続出。

広陵学園内には「バレンタインデーは好きな子の好きな子が分かる日である」という名言まで生まれる始末である。

余談ではあるが、持込を禁止しない理由の一つとして、男の先生方も職員室で何個貰えたかという人気投票のような形で競っているため、生徒達にあまり強くは出られないという現状がある。

ちなみに、三浦先生ことみっちゃんが赴任して以来、誰もその個数を凌いだ者は居ないらしい。


さて、そんな高校に通う龍と恭であるが、この日は涙を飲む男子高校生が多い中、その存在は例外であり、


「龍くーん、はいこれ。」


「おっ、サンキューな広瀬ひろせ!」


「いや、その…どういたしましてっ!」


両者の元には学年関係なくひっきりなしに女子生徒が現れていた。


「あの、恭くん…あんまりその、美味しくないかもだけど…」


「あ、ありがと。食べていい?」


「どっどうじょっ!」


西野にしのさん噛んだ?」


「いやっ!そのっ、失礼しますっ!」


龍の元にはサバサバ系の女子やギャル系の女子が、恭の元には料理好きそうな女子や大人しそうな女子が集う。


休み時間も終わりに近づき、段々と人が少なくなって来た今の時間。

そして発言は冒頭へと遡る。


「っていうかそれだけの量を貰っておいて何が不満なんだ。」


「えーっ、何ていうかさ、俺が貰ってんの全部義理チョコじゃん!どう考えても!」


「まぁそうだな。あ、このトリュフおいし。」


「真面目に聞いてよ!幼馴染が悩んでいるというのに!」


「クッキーも美味いな。んで何?何が言いたいの?」


「うーん、いい加減お菓子から離れてくれると嬉しいんだけどね、恭ちゃん。あのさ、俺は本命チョコが欲しいの!一個でもいいから!」


「あっそ。俺も全部義理だろ?」


恭はラッピング開封作業に勤しんでいたが、龍の発言に首を傾げる。


「えぇっ?!絶対皆本命だったよ恭ちゃん!目は節穴なの?!大丈夫?!」


「うわ、今めっちゃイラっとした。」


「何かごめんなさい」


「わかればいい。」


何故か恭はドヤ顔。


「あ、そういやこれ。」


何かを思い出したように、ラッピングで溢れかえる鞄を漁った恭は、可愛らしいピンクの包みを龍に差し出す。


「え?!何?!恭ちゃんから?!」


「馬鹿か何で俺がお前に渡すんだよ気持ち悪い。姉ちゃんだ。」


さきさん?!」


「おう。あ、こっちのピンクが翔さん宛で、こっちの黄色が龍な。」


期待に声を輝かせた龍に向かい、恭は更にもう一つ包みを差し出す。


「あ、やっぱり?」


激しく納得した龍は素直に二つを受け取る。


「あと姉ちゃんからの伝言。『どうせ一つも本命を貰えないだろう龍に渡しといて。あんたのは家帰ったらあげるわ』ってさ。」


「咲さんの中の俺のイメージは何なの?!」

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