憧れの人
今日は土曜日ですが、その辺りは目を瞑るという形で。
「やっぱすげぇ…」
日曜日の昼日中。
恭の部屋にてそんな声がぽつり。
もちろん家主だけではなく、龍も居るのはお約束。
「ん?恭ちゃんどったの?」
「恭ちゃん言うな。いや、こんなに昔に現代の人間が読んでも面白い文章を書ける紫式部ってやっぱすげぇなって話。」
「あー、えーっと確か…昼ドラ物語?」
「源氏物語な、龍。そういやお前は憧れの人っている?」
「んー、俺は土方歳三かな。あの武士としての生き様が好きだ。」
「あれ?てっきり俺は源平あたりの人物がくるかと思ったのに。」
「いや、憧れはするんだけどなんつーか、こー。」
「要するに好きではあるが憧れではないってとこか。」
「あ、そーそー!そんな感じ!自分でもよくわかんないけど。」
「まぁ、土方歳三はバラガキって呼ばれてたらしいしな。お前に似てるか。」
「俺別にそこまで暴れてないけど?!」
「は?」
「ん?」
暫しの沈黙。
「はぁ…。」
そしてため息。
首をかしげる龍を見て、どうやら龍には自覚がないらしいと恭は悟った。
「んで、恭ちゃんは?憧れの人は紫式部なの?さっきの感じだと。」
「いや違う。」
即答する恭に再び龍は首をかしげる。
「え、じゃあ誰なの?」
「光源氏。」
「へ?」
「だから光源氏。」
「……マジか。」