将来の夢
「ママー!しょーぼーしゃー!かっこいいー!」
「うん、そうねー。かっこいいねー。」
「ぼく、おっきくなったらしょーぼーしゃにのる!」
「そっかぁ。いっくんはじゃぁ消防士さんになりたいの?」
「うんっ!ぼくしょーぼーしさんになる!」
「うん、きっとなれるよ。じゃあいっぱい食べて大きくなろうね。」
「なるっ!」
いつもの帰り道。
たまたま通りかかった消防車を見て瞳を輝かせる小さい男の子と、手を繋ぎ、微笑ましそうに返事をしている母親とすれ違う。
「おっきくなったらー…か。」
「え、何?キモい。」
「いや、恭ちゃん酷くない?!」
「何なの”おっきくなったら”とか。やっぱお前幼稚園に帰れ。」
「それどんだけ?!」
いつも通りスマホを片手に歩く恭と若干涙目の龍。
「恭ちゃんってそういえば小さい頃何になりたかった~?」
「あ、やっべ死ぬ。」
「何と無視!話聞いてよ!」
「ん?あー何だったかな…ブランコ好きだったぞ?」
「そして話を覚えてもない!小さい頃何になりたかったかって話だよ!」
「んー…龍は?」
思い出すのが面倒になったのか、適当に話を振る恭。
「俺?俺は仮面ヒーロー!」
「あぁ…そういえばお前よく翔さんのお下がりのベルト巻いてたな。」
「覚えてたんだ?」
「うっすらと。あ、そうだそうだ。俺は姉ちゃんの影響でカットショップの店員になりたかった。」
遠い目をする恭と、その頃の事を思い出したのか苦笑いの龍。
「あの頃は姉ちゃんとその友達に髪の毛弄られることが多かったからな…。」
「恭ちゃん今と違って肩につくかつかないか位あったもんね…。」
「弄られないためにっていう何とも消極的な理由だけどな、なりたかった理由なんて。そういえば龍は仮面ヒーローとロボット好きだったんじゃなかったのか?ロボットは何処へ行った。」
「うんっ!ロボットも好きだったから、俺は将来ロボットの手のひらに乗って登場して、ロボット軍団に指示を出して攻撃する仮面ヒーローになりたかったんだ!こう、ミサイルとかをどかーんって撃ち込む感じ!」
「…それって完全に悪役だろ。」