理想の子
本日は休日。
案の定ゲームに勤しむ恭の隣には珍しく、大人しく雑誌を読む龍の姿。
とは言えども、ここは龍の家であるのでどちらかというと恭が隣に居る方が不自然ではあるが。
「ふふっ…。」
「…んー、これ…が良いかな。緑も捨てがたいけどなぁ…」
ページを捲る音とボタンを押す音に時折こぼれる独り言が空間を支配する。
「ふっ…」
「………あの、恭ちゃんさっきから気になってはいたんだけど何ニヤニヤしてんの?」
間近から聞こえてくる不気味な声をスルー仕切れずに思わず龍は尋ねる。
「恭ちゃん言うな!っつーか、んなニヤニヤしてるか?」
「うん、ゲームの画面見ながら超ニヤけてるし、ちょいちょい聞こえる声もかなり気持ち悪いよ。ってか何やってんの?」
「え…龍に気持ち悪いって言われるとは………」
「そこなの?!」
龍の言葉に衝撃を受けているらしい恭がフリーズしたため、とりあえず龍は恭の前で手を振って恭の再起動を図る。
「おーいおーい!」
「あー…で、何?」
「おお…戻ってきた。何のゲームしてるのかなって思って。」
「あぁ、ギャルゲー。」
「あー、ギャルゲーねー。…って、え、ギャルゲー?!恭ちゃんちょっと守備範囲広すぎない?!」
あまりにも平然と返事を返すためにうっかり聞き逃しかけた龍は慌てて恭を揺さぶる。
「うぉい龍!揺らすな!!」
「あ、ごめん…って何か違う!でもまぁ、恭ちゃんだしなぁ…。」
「何だその納得の仕方は。あ、ってか龍、お前どの子が好み?」
「あ、いいんだ。んーどれどれ?」
「あー、ちょい待ち、ギャラリー開く。っとおっけ。」
「うわー、完クリしてんじゃん。」
「普通だ普通。で、どの子がタイプ?」
恭がずいっと突き出してきた画面をとりあえず龍はザッと眺める。
「えーっと…あ、この子とか可愛いな。」
「ん?こっちのロング?それとも茶髪ロング?」
「黒髪ロング。」
「うわー、マジか、うわー…。」
龍が指差す先を見て、恭はあからさまに顔を歪める。
「え、何?!外見でしか判断してないけど何かマズかったの?!」
「お前あれか、年下のツンデレ好きだったのか…」
「だから性格とか知らないんだけど?!」